- 2021/08/25 掲載
京大と住友林業、「国際宇宙ステーション(ISS)での木材の宇宙曝露実験」を開始
京都大学と住友林業は2020年4月「宇宙における樹木育成・木材利用に関する基礎的研究」に共同であたる研究契約を締結し「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project(※1))」をスタートしました。2023年に木造人工衛星 (LignoSat(※2))を打ち上げる計画です。電磁波・磁気波は木材を透過するのでアンテナや姿勢制御装置を衛星内部に設置でき、構造を簡素化できます。また、運用終了後、大気圏突入時に完全に燃え尽きるので微小物質(アルミナ粒子)が発生せず、よりクリーンで環境に優しい人工衛星の開発につながります。
今回の実験は「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」の一環で、宇宙空間で木材がどのように劣化するのか、宇宙曝露前後の木材の微細構造の変化等を定量的に分析し、劣化メカニズムを解析します。本実験を通じて高機能な木材の開発に繋げ、地球での利用拡大に応用します。
※1 LignoStella(リグノステラ)は、Ligno(木)と Stella(星)からなる造語で本プロジェクトにて命名。
※2 LignoSat(リグノサット)は、Ligno(木)と 人工衛星(Satellite)からなる造語で本プロジェクトにて命名。
1.背景
「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」は2023年に木造人工衛星(LignoSat)の打ち上げを目指して開発を進めています。木造人工衛星(LignoSat)を投入するのは高度400km前後の地球低軌道(LEO: Low Earth Orbitで、高真空(10-11気圧)なだけではなく様々な材料が劣化する極限環境です。人工衛星を木造にするためには宇宙環境で木材がどのように劣化していくのか確認する必要があります。
2.実験内容
数種類の木材試験体を国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の船外曝露プラットフォーム上で宇宙空間に曝露します。約半年後に回収し地上で物性試験や顕微鏡での組織構造観察、X線による結晶構造解析をします。宇宙のような極限環境での木材劣化の有無や状況、メカニズムの解明に取組みます。ここで得た知見から宇宙空間での木材の劣化予測や対策を検討します。
3.期待される結果
木材を国際宇宙ステーション(ISS)の軌道上で船外曝露すると、原子状酸素(AO: Atomic Oxygen)の衝突によって表面が僅かに消失します。これまでに木材を使った曝露実験はされていませんが、類似の研究や理論的考察から1年の曝露でも消失する表層は多くて1mm未満と考えられます。また、木材へのガンマ線照射実験などの例から考えて、銀河宇宙線(GCR: Galactic Cosmic Ray)や太陽エネルギー粒子(SEP: Solar Energetic Particle)に1年さらされても急激な強度低下は起きず、人工衛星の構造材料として利用可能だと予想されます。木材劣化のメカニズムを解明することで、極限環境での劣化抑制技術を開発し、木材の用途拡大への応用を目指しています。
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