- 2021/11/08 掲載
アングル:米株式市場、ハイテク銘柄に高値警戒感 分散化も
ハイテク株は今年急騰。S&P総合500種指数に占める割合も高く、同指数の最高値更新に寄与してきた。
ただ、投資家の間にはハイテク株の価格上昇は行き過ぎかもしれないとの不安も広がっている。例えば、グーグルの親会社アルファベットは1年後の利益見通しに基づく株価収益率(PER)が26.6倍で、S&P500種構成銘柄の同21.1倍を上回っている。
アップルのPERは同26.2倍。情報技術(IT)セクター全体は年初来の上昇率が28%近くで、業績見通しに基づくPERは26.4倍だ。
大手ハイテク株は過去10年以上にわたりS&P500の上昇を支えてきた。しかしその比重の高さ故に、一転して下げに向かえば相場全体を押し下げる恐れがある。リフィニティブ・データストリームによると、米株式市場で時価総額が最大のマイクロソフト、アップル、アマゾンは3社でS&P500の時価総額の15%近くを占める。
BofAグローバル・リサーチの先月のファンドマネジャー調査によると、株式市場で最も取引が集中しているのはハイテク株の買い持ちで、オーバーウエイトのポジションは全体で5月以来の低水準となっている。バーンスタインの最近の調査によると、機関投資家の保有状況や価格モメンタムなどの要因を織り込んだ分析で最も取引が集中している個別株はマクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾンの4銘柄だった。
この10年間、ハイテク株への資金配分を制限すると長期的にポートフォリオの運用成績が下がる傾向があり、投資家は保有を大幅に減らし過ぎることには慎重だ。しかし一部の投資家はポートフォリオの幅を広げ、同セクター内で主要銘柄への資金配分を縮小しようとしている。
ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ・ソリューションズのポートフォリオストラテジスト、ガレット・メルソン氏は大手ハイテク株について、利益を確定して資金の一部を他のセクターに移したいと考えている投資家の標的になりやすいと見ている。同氏は、インフレ率の上昇や堅調な景気回復が追い風になると思われる金融株やエネルギー株を買っている。
メルソン氏は「今年と来年の経済成長率が過小評価されているというのがわれわれの見立てだ」と話した。
データトレック・リサーチのアナリストは5日のレポートで「ハイテク株は長年にわたり勝ち組であり続け、今後もこの座を保つと予想している。しかし投資家が今、資金をどこに配分すべきかを考えるなら、経済の基礎的諸条件の改善から大きな恩恵を受けるセクターに向かう可能性が高い」と指摘した。
5日発表の10月米雇用統計は好調で景気の見通しは明るさを増し、ファイザーも開発中の新型コロナ飲み薬が高い効果を示したと発表。旅行関連株に追い風が吹き、S&P1500の航空株指数は7%上昇した。
ジャナス・ヘンダーソンのポートフォリオマネージャー、デニー・フィッシュ氏は、インフレ懸念とハイテクセクターの割高感を受けて、大手の成長で恩恵を受ける中小企業を物色しているという。同氏が推すのはオーストラリアのソフトウエア開発会社アトラシアンやカナダの電子商取引企業ショッピファイ。アトラシアンはマイクロソフト製アプリケーションを補強する管理ツールを手掛けており、ショッピファイはアマゾンの成長から恩恵を受けるという。
フィッシュ氏は「巨大企業をもしのぐ成長ぶりを示し、バリュエーションが妥当で、数年単位でアウトパフォームできるような新興企業をわれわれは探している」と述べた。
多くの投資家は、強力な収益性とダイナミックな成長を遂げてきた歴史を理由に、大手ハイテク株に強気の姿勢を崩していない。
ヌヴィーンのグローバルエクイティ部門のチーフ・インベストメント・オフィサー、サイラ・マリク氏は、インフレの高まりがプラスに作用する可能性があり、かつ市場全体から出遅れているハイテク企業に注目している。例えば年初来の上昇率が8%にとどまっているアマゾンは、電子商取引の成長を受けて今後、出遅れ分を取り戻すと考えている。
マリク氏は「今こそ選別姿勢を強めるべきだ」と述べた。
(David Randal記者)
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