- 2021/12/15 掲載
東芝、再生可能エネルギーアグリゲーション向け「電力市場取引戦略AI」を開発
当社は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)アグリゲーション向けに電力市場取引における事業者の戦略的取引を支援する「電力市場取引戦略AI」を開発しました。本AIは、太陽光や風力などの再エネ電源を束ねて電力市場で取り引きする再エネアグリゲーターに対して、電力の需要量と供給量の差分であるインバランス(*1)の発生を回避し、併せて市場取引による収益確保を目指した戦略的取引の意思決定を支援します。本AIは、変動の大きい再エネの安定的な供給を可能とすることで再エネの主力電源化を促進し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
なお、本AIは、東芝ネクストクラフトベルケ株式会社および東芝エネルギーシステムズ株式会社が参加する経済産業省の再エネアグリゲーション実証事業(*2)において、12月1日から開始した実証実験で活用されています(*3)。
■開発の背景
世界規模でカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みが加速する中、国内では固定価格買取制度であるFIT(Feed-in-Tariff)制度から、固定価格ではなく、卸市場などにおいて市場価格で売電したとき、その価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せするFIP(Feed-in-Premium)制度が2022年度に導入される予定です(*4)。FIP制度の活用にあたり、電力市場取引では、再エネ発電事業者が発電量の変動によるインバランスリスクと市場での価格変動などのマーケットリスクを管理して収益を確保するニーズが高まってきます。
収益の確保には、複数の小規模再エネ発電事業者による再エネ電源を束ね、電力市場における最適な売電計画を実行する再エネアグリゲーターの役割が不可欠です。エネルギーリソースアグリゲーション事業の市場規模は現在の約44億円から、2030年には約730億円まで拡大すると予想されています(*5)。アグリゲーターにとって、天候に左右される再エネ発電量と電力需給バランスに左右される市場価格の双方を考慮した上で、インバランスを回避し収益を確保する複雑な市場取引を直感や経験に基づき行うことは困難です。再エネ発電量の高精度な予測技術とインバランスを回避し収益を確保するための最適な戦略的取引を実現するAI技術が必要とされています。
*1 再エネ発電量が計画値から外れてインバランスが大きくなると、供給する電力の品質低下や停電などの要因となる可能性がある。また、インバランスによる調整コストとしてインバランス料金を支払う必要がある。
*2 正式名称は、「令和3年度 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金(再生可能エネルギー発電等のアグリゲーション技術実証事業のうち再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業)」。
*3 再生可能エネルギーアグリゲーション実証実験開始のお知らせ(https://www.toshiba-energy.com/info/info2021_1201.htm)
*4 FIT制度は再エネ導入初期における普及拡大とコストダウンを目的に2012年に導入された。再エネ事業者が発電した電力について、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることが約束されている。これにより、いつ発電しても収益が変わらず、電力の市場価格が高い需要のピーク時に供給量を増やすといったインセンティブが働かないといった課題があった。2022年度に新たに導入されるFIP制度は、FIT制度により再エネ導入の初期目標を達成したことを踏まえ、再エネを競争電源に位置づけ、再エネの主力電源化に向けたステップとなる。電力需要のピーク時に一定のプレミアムが上乗せされ、収入が市場価格に連動するため、発電事業者に対して蓄電池の活用などで供給量を増やすインセンティブを促す目的とされる。(「FIT制度の抜本見直しと再生可能エネルギー政策の再構築」,資源エネルギー庁,2019.4.22を基に記載)
*5 マーケットレポート「2019 エネルギーリソースアグリゲーションビジネスの現状と将来展望」,矢野経済研究所
プレスリリースのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR