- 2022/03/17 掲載
アングル:米国株は過去の利上げ局面で上昇、今回も当てはまるか
投資家は今年末までに約180ベーシスポイント(bp)の利上げを織り込む動きになっているが、こうした投資家にとってはほのかな明るい話かもしれない。
ドイツ銀行が1955年以降の13回の利上げサイクルを調べたところ、利上げを開始した最初の年のS&P総合500種の平均リターンは7.7%に達していた。
トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズによる12回の利上げサイクルの全期間を対象にした調査では、S&P総合500種の平均総合リターンは9.4%。12回のうち11回がプラスになった。トゥルイストのキース・ラーナー共同最高投資責任者はリポートに「(政策金利の)フェデラルファンド(FF)レートが上昇している間、株価は全般的に上向いてきた。なぜならば、通常は堅調な経済と企業利益増加が伴うからだ」と記した。
今の市場は物価高騰に直面し、しかもロシアのウクライナ侵攻でコモディティー価格の上昇に拍車が掛かっている。そのため多くの投資家が、今年はかつてないほど厄介な事態になるのではないかと不安を募らせている面も否定できない。
足元の不確実性はFRBにジレンマも突きつけている。政策担当者がインフレを抑え込もうとして金利を引き上げ過ぎれば、景気後退(リセッション)を招きかねないというのが一部の投資家が心配する展開だ。
利上げが短期的に株価を圧迫する傾向があるのは確かだ。エバーコアISIが4回の利上げサイクルを分析した結果、利上げを始めた月にS&P総合500種の平均リターンはマイナス4%に落ち込んだ。しかし、利上げ開始から半年で平均リターンはプラス3%、12カ月でプラス5%に回復もしていたという。
同社のシニア・マネジングディレクター、ジュリアン・エマニュエル氏は「FRBはリセッションを望まない。経済にリセッションの色合いが出てきそうな状況になる前に、(必要な)利上げの大部分を実行する」とみる。エバーコアの「基本シナリオ」に沿うと、現在の株式市場は短期的な底値形成局面のまっただ中にある。つまり、これまでの典型的な利上げサイクルがもたらしたような、半年から12カ月で見た場合の好リターンが実現する公算がより大きくなっているという。
FRBは米経済がコロナ禍を乗り切れるように大規模な緩和で支えてきた。そのFRBがいよいよ引き締め政策に乗り出しただけに、株価が不安定化していく事態に身構える投資家もいる。
実際、S&P総合500種は年初来で10%余り下落した。ハイテク株の比重が大きいナスダック総合に至っては、昨年11月の過去最高値から20%強下がって弱気相場への突入が確認されている。債券利回り上昇によってハイテク株などの成長株の将来キャッシュフロー価値が損なわれたためで、値動きは株式市場全般よりも低調に推移している。
モルガン・スタンレーの株式ストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、FRBが今年利上げを進める中で経済を首尾よく「軟着陸」させたとしても、債券利回りの大幅上昇につながる可能性があり、それが単純に株価の重しになるとの見方を示した。「株式投資家にとっては、既に経済成長が減速しているところにウクライナ侵攻という追加的なショックが加わった点から、これから一体どれだけ利上げがなされ得るのかが問題だ」とした。
PR
PR
PR