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- 2015/06/18 掲載
競争激化する通信事業者、収益を創出するために必要なキャリアSDNとは
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クラウド時代、通信事業者にはビジネススピードを上げられるか
OTTの登場により、通信事業者を取り巻く環境は激変した。こうしたOTTが生み出すトラフィックに対応するとともに成長機会を追求し、自らのビジネスモデルの変革を考える必要がある。
さらに、通信事業者は克服せねばならない別の課題もある。ネットワーク利用率のさらなる向上だ。当然ながら、ネットワークは重要なITインフラだ。帯域が混雑してくるとサービス品質に影響を与えることになるため、通信事業者はバッファを見込んで運用しなければいけない。そこで需要量を見積もって資産を備えるのだが、案に反して利用が計画を下回ると、収益を最大化できないのだ。
このような多くの課題を抱える通信事業者が市場競争力を高めるにはどうすればいいのか。アルカテル・ルーセント IPルーティング&トランスポート部長 鹿志村 康生氏は、通信事業者がここ1、2年で感じている課題について次のように語る。
「通信事業者が求めているのは『柔軟で迅速なキャリアネットワークの運用』です。そこで、Software Defined Networking(以下、SDN)の活用でネットワークを動的に変化させ、攻めの経営に転じていくことが重要です。通信事業者のネットワーク利用率は現在、世界的な平均値で30%とされています。通信業界は年々競争が激化しており、ネットワーク資産利用の最大化はどの事業者にとっても重要なテーマとなりつつあります」
通信事業者のビジネスを変えるマルチレイヤー&ベンダー管理プラットフォーム
これまで静的な運用をせざるを得なかったキャリアネットワークだが、いまや動的で柔軟性のある運用が可能だという。アルカテル・ルーセントでは、複数の通信事業者と議論を重ね、そのニーズに応えるための新製品を発表した。それが「Network Services Platform(以下、NSP)だ。NSPは通信事業者のネットワーク運用を支援するOperation Support System(OSS)/ITアプリケーションとネットワークの間に位置し、複数のネットワークレイヤー、複数のネットワークベンダー製品を対象に管理を行い、ネットワークサービス提供の自動化と、ネットワーク使用率の最適化を実現する。
鹿志村氏はNSPについて「これまで、光伝送層向け、IP層向けと、単一のネットワーク層向けに管理をインテリジェント化する製品は存在しましたが、マルチレイヤー、マルチベンダーのネットワーク機器を透過的に管理する製品は世界初です」であると説明した。
NSPはどのようなアーキテクチャなのか。中心にリソースマネージャーというものがあり、OSS/ITアプリケーションからネットワークサービスの要求を受けると、まずここで、ネットワークのリアルタイムな利用状況およびKPIを分析する。
この分析の結果をもとに、パス計算プログラムに対して計算を要求する。計算プロセスは、IP層を対象としたパス計算、光伝送層を対象にしたパス計算、それらの結果を統合して最適値を導き出す階層化パス計算の3つのパートがある。
このパス計算プログラムには、同社のベル研究所が開発した独自のアルゴリズムが適用されている。標準的なパス計算ではカバーできていない複数のパラメータを導入し、どのパラメータをどの過程で用いるかに大きな工夫があるという。
最終的に導き出されたパスは、サービスプロビジョニング/コネクションマネージャーによってネットワークに適用される。ここでポイントとなるのは、マルチベンダー アダプテーション レイヤーだ。これは一種の翻訳エンジンとして機能し、Netconfを要求するものにはNetconfで、SNMPを要求するものに対してはSNMPでと、ネットワーク機器に応じたプロトコルで対応する。
ネットワークサービス提供の自動化とネットワーク利用率の最適化を実現
NSPの特長は、前述のとおりネットワークサービス提供の自動化とネットワーク使用率の最適化である。一例として、ある顧客が新たにVPNサービスの提供を望んだとして、NSPでどのように実現するか、サービスの自動化について見てみよう。NSPでは、サービスを要求するためのポータルが用意される。それがアーキテクチャ上のOSS/ITアプリケーションである。ここで要求者は、サービスの種類としてVPN、サービスの始点および終点のポート番号を入力する。そして条件を入力する。たとえば帯域幅は30Mbps、レイテンシーは10Msec以内など。そのほかにも、ある日時に一時的に帯域幅を増やす、レイテンシーがしきい値を超えそうになったら別のネットワークパスへ迂回させるなど、特定条件があればそれも入力する。
するべきことは以上だ。画面上の「サービスのローンチ」というボタンを押せば、ただちにプロビジョニングが開始され、実際にサービスを展開することが可能になる。NSPの行った設定に手を入れたければ、手作業で変更することもできるという。
画面2はサービスプロビジョニングが完了した状態のネットワークを示すNSPの3Dビューである。
下から光伝送層、IP層といった具合に階層的にネットワークの相関関係が示されており、その状況をビジュアルに把握することができる。
米国の調査機関ACGによると、企業や通信事業者は、これまでネットワークサービス定義の多くを手作業で行っていたが、NSPを活用して自動化することで、その時間を58%、そのコストを56%削減できるという。
「これはあくまでも平均値。サービス要求を受けてから、数日から数時間かかっていたプロビジョニングプロセスが、数秒単位に激減できるケースもあります」(鹿志村氏)
一方、ネットワーク使用率の最適化という観点では、NSPによってネットワーク全体の利用状況をリアルに掴めることで、いわばネットワークの“空き帯域”が一目瞭然になる。新たにサービス要求が来たときに、その空き帯域を動的に割り当てることができれば、持てるネットワーク資産を最大限に生かせるというわけだ。もし、不測の事態でその帯域が逼迫し始めたとしても、またそのときは別のパスを探せばいい。フットワーク軽く動的に変化対応可能になることが、事業の進め方そのものを変えるようだ。
データセンターを含めエンタープライズ全体で動的ネットワークを構築可能に
アルカテル・ルーセントグループには、すでにNuage VSPというデータセンター向けSDN製品があり、NSPはこれとの連携機能も有している。この二者の連携によって、データセンター間、またデータセンターとエンタープライズ間の透過的なサービスプロビジョニング自動化も実現可能になるようだ。これによりたとえば、顧客からシステムの遠隔地バックアップを実現したいという要望を受けた際も、通信事業者はその内容に応じた回線を迅速に提供できるようになるという。NSPの正式な出荷は2015年10月だが、一部機能は先行して通信事業者に提供される予定という。このマルチレイヤー、マルチベンダー一括管理プラットフォームの登場で、「通信回線の増設や拡張には時間がかかる」という既成概念が打ち破られるのは喜ばしいことだ。ただ通信事業者は良くも悪くも個別管理の運用体制に慣れてきた。それを抜本的に変えるには、大きな組織改革、意識改革が必要になる。果たしてどれだけ速く広がるか。これからの展開が注目される。
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