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  • 2021/04/05 掲載

「SDN」とは何かわかりやすく解説、OpenFlowでネットワークはどう変わったのか

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ビジネスのIT化が進んだことで扱われるデータ量が増え、ビジネスにおけるネットワークへの依存度が増す中で、その管理にかかるコストは増加し続けています。膨大な通信を支えるサーバーの管理、円滑な通信ネットワーク環境の確立、増減する人員や施設への対応、新しいシステムの導入などが行われる度に管理者には多大な負荷がかかります。そうした状況を解決する技術の1つとして注目されているのがSDN(Software Defined Network)です。SDNの基礎知識を、できるだけかみ砕いて解説していきます。

執筆:フリーライター 三津村直貴

執筆:フリーライター 三津村直貴

合同会社Noteip代表。ライター。米国の大学でコンピューターサイエンスを専攻し、卒業後は国内の一部上場企業でIT関連製品の企画・マーケティングなどに従事。退職後はライターとして書籍や記事の執筆、WEBコンテンツの制作に関わっている。人工知能の他に科学・IT・軍事・医療関連のトピックを扱っており、研究機関・大学における研究支援活動も行っている。著書『近未来のコア・テクノロジー(翔泳社)』『図解これだけは知っておきたいAIビジネス入門(成美堂)』、執筆協力『マンガでわかる人工知能(池田書店)』など。

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SDNとは何か、“道路”のたとえを用いて、わかりやすく解説します
(Photo/Getty Images)


SDNとは何か

 SDNはSoftware Defined Networkの略で「ソフトウェアによって定義されるネットワーク」という意味です。これは「(本来の)物理的なネットワークとは異なる構造のネットワークを、ソフトウェアによって仮想的に作り出し、構成を自由に変更できる」ということです。

 難しそうに聞こえるかもしれませんが、ソフトウェアによる「仮想環境の構築」そのものは私達が普段から使っているソフトウェアでもよく行われていることです。MacOSの上でWindowsを動かしてみたり、WindowsOSでAndroidを動かしてみたり、仮想現実を作るVRも同じです。ソフトウェアを使えば仮想的な世界を自由に作り出せます。それをネットワークに適用することも難しいことではありません。

 実際、広義のSDNは「仮想的に作られるネットワーク全般」を指す言葉なので、テレワークの浸透でよく耳にするようになった「VPN(仮想プライベートネットワーク)」などもSDNの一種といえます。

 SDNを実現する手法の1つとして考案されたのが、単に仮想のネットワーク空間を作るのではなく、ネットワークの道筋の1本1本を自由に最適化できる「OpenFlow」という通信規格に準じたSDNです。

 例えるなら、ただのテレビゲームがVR技術に進歩したようなものです。単なる仮想空間を作るだけだった技術がネットワークの根幹と結びつけられるようになり、さまざまなビジネスに応用できるようになったのです。では、OpenFlowによって生まれたこの新しいSDNはどのようなものなのでしょうか。

 SDNの広義は「ソフトウェアによって定義されるネットワーク」であることを押さえた上で、OpenFlowに則ったSDNの特徴を見ていきましょう。

OpenFlowを使ったSDNでネットワークはどう変わるのか

 通常、ネットワークというのは端末から目的のサーバーやデータセンターにたどり着くまでに、非常に多くのネットワーク機器を通過していきます。それは主にルーターやスイッチングハブと呼ばれるネットワークを結節点のような部分を含みます。これは道路でいえば交差点や料金所のようなものです。

 こうしたネットワーク機器では、それぞれの通信がどこから来てどこへ行くのか、行ける場所・行けない場所を調べて誘導し、通信の身元確認などセキュリティに関わる作業も行っています。当然ながら、それぞれのネットワーク機器においてさばける通信量には限界がありますし、通信が集中する部分としない部分では負荷が大きく異なります。

 さらに、セキュリティに関する基準やネットワークの構成が変われば、それに準じた設定の変更がそれぞれの機器に必要になります。従来はこうした設定変更などは個々の機器に対してそれぞれ行っており、ネットワーク設定の変更や情報量が増えた場合の負荷軽減についてはその都度設定しなければなりませんでした。これは管理者にとっては大きな負担ですし、負荷が集中する部分のネットワーク機器の性能は、ネットワーク全体の安定性を損なわせるボトルネックにもなっていました。

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従来のネットワーク。道路で例えると、交通整理の担当者がいるイメージ

 それに対して、OpenFlowなどを使ったSDNの場合、こうしたネットワーク機器における「案内所」としての役割、つまりコントローラやスイッチングに関する機能を機器から分離し、OpenFlowに委ねてしまいます。要するに、ネットワーク機器におけるソフトウェアの部分を取り出し、ソフトウェアだけで1つのネットワークを作ることで管理しやすくしているのです。

 それぞれの通信が何者か、どこへどうやって行くのかといった誘導はすべて中央で管理されており、煩雑な案内やルール作りに関する処理を中央で行うことが可能になります。それぞれのネットワーク機器のタスクは単純化され負担が減り、中央のコントローラが状況に応じて柔軟に設定を変更することで負荷の分散も可能になりました。

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OpenFlowを利用したネットワーク。道路で例えると、管制室で管理しているイメージ

 OpenFlowの規格は公開されており、誰でも自由にその規格に準じたツールやネットワークを作ることが可能です。汎用性が高く、さまざまなメーカーが参入し、OpenFlow対応の機器やシステム、サービスが提供されるようになりました。

規格に依存しないオーバーレイ方式の登場

 また近年ではOpenFlowを利用しない「オーバーレイ方式」なども増えています。オーバーレイ方式はOpenFlowのように全てのネットワーク機器のコントローラを分離して中央管理するのではなく、ネットワークの要所で抜け道となる仮想のトンネルを作ることでSDNを実現しています。

 先ほどの例で言えば、案内所はそのままに、ほかの案内所を素通りできる“抜け道”を作ることで、物理的なネットワークに縛られない仮想ネットワークを構築していると考えると分かりやすいでしょう。抜け道の作り方にはかぎりがあるので、OpenFlowに比べるとネットワークの柔軟性には劣りますが、ネットワーク機器がOpenFlowに対応していなくても使える点が強みです。

 そしてこの特徴が導入コストに多大な影響を与えます。OpenFlow方式は規格がオープン化されているのでシステムそのもののコストは低く抑えられるものの、ネットワーク機器を買い換えなければならない場合は導入コストが高くなるのが欠点でした。対して、オーバーレイ方式は既存のネットワーク機器をそのまま使えるため、ハードウェアの導入費用の面ではかなり低コストで導入できます。

 ただ、オーバーレイ方式のSDNは提供する企業によってそれぞれ異なる規格・仕組みが使われており、システムのライセンス料が高額になることもあります。長期的に利用することを考えるとOpenFlow方式の方が低コストで済むケースもあるため、どちらの方式も一長一短だと言えるでしょう。

【次ページ】SDN導入のメリット・デメリット、NECら代表的な製品

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