• 2005/10/07 掲載

【中堅中小IT化】消費者の信頼を勝ち取るトレーサビリティシステム構築のすすめ(2/2)

~RFIDと連携して信頼感を獲得する~

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トレーサビリティの新潮流

●トレーサビリティシステムに取り組むことの重要性・必要性
 トレーサビリティというのは、生産から加工さらには流通経路を経由して消費者の手元に届くまでが明らかになることですから、方向性としては製品や商品の履歴や由来を明らかにするといういわゆる「上り方向」のトレーサビリティと、製品や商品の行き先を知ることを可能にするという「下り方向」のトレーサビリティが存在します。
「上り方向」のトレーサビリティは消費者が求め、「下り方向」は企業側が求めています。企業側には、この2つの方向を有効に活用して行こうという考えが広まっています。
また、安全の世界では「疑わしきは許容せず」の考え方が主流ですから、企業の説明責任の観点から積極的にトレーサビリティを有効に活用して行こうという考えも広まっています。


トレーサビリティシステム概要図

●トレーサビリティシステムが中堅中小企業の経営に与えるインパクト
トレーサビリティシステム導入によるメリットとしては、次のことが考えれます。
 安心感と信頼感(消費者は安全性のより高いものを求めています)
 企業イメージ・アップ(トレーサビリティシステム導入により、信頼性等、イメージアップにつながります)
 品質意識の向上(習慣的な行動から発生するミスを防げます)
 社内管理・製品管理のレベル・アップ(必然的に製品管理のレベル・アップが図れます)
 これらが企業の経営に大きく影響し始めました。
●RFIDの現状、及び、将来
 これまでは固体識別番号を管理する媒体としてバーコードが使われてきましたが、情報量も大きくて、無線の特徴を生かしたICタグが媒体として着目されております。
 つまりダンボールの中に入っている衣類製品に付けられたICタグを、ダンボールの外側から読めるようになったと言うことです。この機能が管理コストの低減につながるものとして注目されています。使用する周波数とアンテナの大きさによってICタグと交信できる範囲は5cmから5~6mのものまであります。
 ICタグは極小のICチップにアンテナを取り付け、センサーなどと無線で情報をやり取りする装置です。
スーパーの商品に付ければ、出入り口に設置した読み取り機を通じて全商品の合計金額を計算することが可能で、レジが不要にもなります。消費社会が大きく変化する可能性が大きい代物です。

 スピードの点で完成化はされていませんが、身近なところでは回転すし屋さんで「お勘定」と言うと店の従業員が、お皿を5枚ずつ持って上からハンドヘルドの機械でなにやら読み込んでいます。あれはお皿の裏につけたすしの価格を5枚同時に読み込んでいるのです。
 一方でICチップと情報を読み書きして活用する機能もあります。
大都市圏のJRの改札口では、定期券を改札の機械に通すのではなく改札口の機械に軽く触れて改札を済ませています。これもICタグの活用をしている事例です。
 いつ、どの駅から乗り込んだのか。どの駅で降りたのかを確認する為にSUICAの定期券は機能しています。

 またICタグを携帯電話に付けた「おさいふケータイ」も出現しました。預り金残高を記憶しておき、支払いに使用すると残高を書き換えていきます。
 また商品トレーサビリティにはICタグの互換性が必要とされています。現在さまざまな周波数での実証実験がされています。何しろICタグとの交信は無線ですから、基本的には金属・水は不得手です。どうやってペットボトルに貼り付けたICタグを読むのか。満員電車の中の携帯電話で問題になっている、ペースメーカーへの悪影響はどうか。蛍光灯やエレベーターの作動時に発生する雑音の影響はどうか。プライバシーに関する問題は無いのか等と、解決していかなければならない問題もいくつか残っています。


まとめ

 従来、トレーサビリティは後ろ向きで、暗いイメージがありました。しかしトレーサビリティの社会的な必要性は増大しています。トレーサビリティの技術も進歩しており、コストも低廉化傾向にあります。
トレーサビリティの体制を構築することにより、消費者の信用を得るなどのメリットも出ており、マーケティングなどに積極的に利用すべきです。
トレーサビリティから得られるものは、消費者の安心感と生産者の更なる品質管理、流通業者の顧客群の情報収集です。
 ただ、それぞれの価値、コストパフォーマンスを考慮しなければなりません。厳密に・正確にと望んでいてもコストの問題が連動していることを忘れてはなりません。コストが掛かれば、粗利益を削るか、販売価格に転嫁するかしか無いのです。
 消費者が安心感の値打ちをいくらに感じていただけるかです。理想的なのは、その価格よりちょっと安い金額を消費者に負担していただくことです。消費者がその値打ちを感じず、業者としてはトレーサビリティをしなければならないのならコストに含めなければなりません。
 福井県和紙工業協同組合が始めた「和紙トレーサビリティシステム」は、消費者からの安全に関する問合せの対応費よりも、トレーサビリティシステムを構築した方が2年で元が取れると計算できたから、商品の販売価格への転嫁はありませんでした。



福井県和紙工業共同組合のトップページ
http://www.washi.jp/

 お客様から「ホルムアルデヒドは含まれていないのだろうか。」「紙の上に乗せた食べ物に薬品が付かないのだろうか。」等の不安の声が福井県和紙工業協同組合に寄せられていましたが、「和紙トレーサビリティシステム」で、いつ・誰が・どの原材料を使ってこの越前和紙を抄き上げたのかをすべてオープンにしました。
 消費者の方から「和紙トレーサビリティ番号」を指定していただいて、その和紙に使用したMSDS(化学物質等安全データシート)を調べることも可能になりました。
 組合では万が一、組合員に供給した原材料・薬品に問題があれば、このシステムでどの組合員が生産した越前和紙に影響があるかが捕捉しすぐに対応することが出来ます。
 トレーサビリティシステムには、最初のISOの定義で触れましたが、第3者機関の証明・保証という問題がありました。

しかし「和紙トレーサビリティシステム」では、コストの問題により「第3者の証明」を外しました。会計監査機関が監査した決算書でもあとから使い込みや利益操作が発覚しています。いくらコストを掛けたら絶対に間違いが無い証明が出来るのでしょうか。
 福井県和紙工業協同組合では「組合は組合員を全面的に信用します。正直にトレース管理報告書を書いてください。1社でも嘘を書いたらこのシステムは崩壊します。同時にこの越前和紙の産地も信用を失い消滅するでしょう。」と組合員に説明し、第3者の証明の無い、世界で最初の「和紙トレーサビリティ管理システム」にチャレンジしております。
 スタートしてみると、勘と経験に頼った生産が、報告書を書く事により多少、品質管理の感覚が生まれてきたような感じもします。

  
報告書の記入は、組合員に高齢者が多いことを考慮し、組合員の工場では「手書き」を原則としました。あえてパソコン入力を原則とはしませんでした。手書きの「和紙トレース番号管理受付証(報告書)」は組合でスキャンしWEBに上げました。消費者の皆さんが手元の越前和紙商品に添付された「和紙トレーサビリティ番号」を入力されるとPDFで見ていただけるようにしました。
 「越前和紙」のホームページ(http://washi.jp)の「和紙トレーサビリティ」のページでサンプルをご覧いただき、感想・ご批判のお声をお聞かせください。そのお声が越前和紙に反映し、1000年先まで生き続ける越前和紙となります。

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