• 2006/05/25 掲載

【コロムビアCEO廣瀬氏インタビュー】音楽ソフト産業のイノベーションと復活への戦略(3/3)

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第1ステップは携帯配信
問われるのはチャネルマネジメント



――ネットビジネスの戦略としてはどんなことを考えていますか。

廣瀬●色々な形で進んでいくと思いますし、ネットをどう使うか、未知数の部分もあります。ただ、米国でアップルコンピュータが成功させた音楽配信サービス「iTunesミュージックストア」と同じようなことが、日本で起きるかどうかは疑問です。理由は、日本での携帯電話の機能と普及の度合い。今、デジタルの市場で収益が確定的に見込めるのは携帯の世界ですから、音楽業界のネットビジネス化の第1ステップは、やはり携帯でしょう。
 幸い、着メロから着うたへと、配信業者さんがマーケットを作ってくれました。彼らはソースをもっていませんが、我々にはソースがあります。製造から配信まで一貫サービスが提供できますので、競争してもメリットが見出せます。

 また、コロムビアに私のような人間が来たのですから、これから従来の音楽業界にはいなかったような技術者もそろえていきます。その上で音楽の流通過程から一歩踏み出して、消費者に直接、音楽を届けることがもっと大切になります。CDはペーパーメディアor出版でいえば単行本で、携帯に配信するのは新聞・雑誌というような位置付けを考えています。


――携帯配信を本格化するにあたっての技術的な環境についてはどう考えていますか。

廣瀬●それはあっという間に変わるでしょう。5・1chになりますし、802・1Xを使った携帯が出てくれば、ダウンロードの速度はメガ水準になります。当然、携帯のメモリー、ストレージの大きさも変わります。ハードディスクが入ることも考えられますし、日本ではiPodが携帯アダプタになるかもしれません。問題は電波と電池でしょうが、燃料電池に水素カートリッジをはめると、かなり電池容量は大きくなるはずです。


――インターネットを通じた配信についてはいかがですか。

廣瀬●すでに当社はエキサイトさんに音源を提供していますし、ビジネスとしての条件さえ合えば、どなたにでも提供するというのが基本姿勢です。音源を使いたいというサービス事業者が他にもあり、我々のビジネスとして採算が合って、かつアーティストの権利を保護する管理がなされるのであれば、どんどん音源を提供します。一緒に仕事をしているアーティストの音楽をできるだけ多くの方にお届けするのが、この会社の使命ですから、流通を手伝ってくれる相手は多い方がいいのです。

 アーティストも変わっていくでしょう。なぜなら、新人はすでに携帯配信からデビューしています。木村カエラという新人歌手がいるのですが、彼女の場合、広告宣伝はプロモーション含めて200~300万円。しかしCDが1万枚以上売れなかったら利益が出ませんから、初っ端から着うた配信をしたのです。そうしたら、8月の当社携帯サイトでのダウンロードランキングで一青窈に次ぐ第2位ですよ。


――それはなぜですか。

廣瀬●わかりません。が、一般的なコメントですが、携帯電話のヘビーユーザーは常に新しいものを求めています。自分で見つけた新しいものを手に入れたいという欲求があります。彼女はもともと雑誌モデルをしている人で、若い女性には認知されており、本人がレギュラー出演しているテレビ番組でも告知をしていたことも影響したようです。


――携帯やネットを通じた音楽配信が今後、重要性を増し、それらを利用する層が比較的若い年代だと仮定すると、レコード会社としてのアーティストのそろえ方は変わってきますか。

廣瀬●それは変わりません。たとえば演歌をお聴きになる方が、携帯では購買なさらないとすれば、今後も引き続きCDを買ってくださるはずです。ですからCDは残りますし、当社はまだカセットテープも売っています。要するに、お客様の層に合わせて売り方を考えればいいのです。  ただ、これからは、我々にとってはお客様に合わせるためのチャネルマネジメントが必要になります。価格体系も変えなくてはいけない。ビジネスプロセスをどう運営していくか、レコード会社各社で上手下手の差が出るでしょう。


「仲介業者」としての付加価値。
業界全体でではなくネット戦略はやったもの勝ち



――音楽がダウンロードされ、流通するようになると、著作権に対する考え方も変わってくると思います。例えば、売り方によって著作権料の比率が違うといったように。

廣瀬●考え方は変えなくてはいけないでしょうね。少なくとも現状はパッケージメディアを想定した議論ですし、一律に決めているのは、あくまでもビジネス上の約束事としてです。著作権をめぐっては、権利と対価が同等に議論されていますが、そもそもは作品を作った人の権利を尊重するのが著作権であり、尊重の仕方イコールお金ではない、と私は思います。オリジネイターの権利をどのように認めるかという根源的なところは変わらないでしょうが、すべて一律にお金を取らないといけないというのはおかしいのです。

 音楽の世界にもっとも刺激を与えられるのは、我々、流通業者ではなくてアーティストとリスナーです。利便性ゆえに流通が存在しているのであって、作り手と受け手の意識が変われば流通は変わらざるをえません。
 これからのレコード会社は、アーティストの権利をコントロールするのではなく、アーティストとリスナーの結び付きをサポートするところに、「仲介業者」としての付加価値を見い出すことになります。ネットで音楽を配信するのが普通になれば、アーティストとリスナーの取引を調整し、リスナーには料金を請求し、アーティストには分配金を払うのです。


――デジタルが技術的側面を解決するとしても、さらに複雑化する販売チャネルの調整やサポートとなると、既存のレコード業界のままでは難しそうですが。

廣瀬●別に複雑な話ではなくて、要するにルータがやるんですよ。流通する音楽にすべてユニークなトランザクションコードを付けてやればいい。今のCDは1枚でも100万枚でも商品番号は同じです。単品管理という発想もありませんが、ネットの世界ではユニークナンバーが当たり前でしょう。
 それとネットの世界のよい所は、みんなで一緒にやる必要がないことです。業界全体を考える必要はないし、サプライ側とディマンド側を結び付ける形をみんなでそろえる必要もないのです。もともと音楽は法規制がなく、自由に作れるものです。音を鳴らすためには、作り手と受け手のフォーマットだけは標準化しなくてはなりませんが、それ以外はアーティストとリスナーにとって便利か、不便かしかありません。ですから、いつの間にかコロムビアが先に行動を起こしてしまえば良いのです。

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