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  • 2023/07/03 掲載

進撃のアマゾン“破壊のDNA”復活か? 噂の「超格安 携帯」「生鮮500店買収案」の真相

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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収益環境の悪化から、1万8000人の大規模レイオフを断行するなど、思い切った経費の削減と不採算事業の縮小を続けてきたアマゾン。ところが、ここに来て「業界ディスラプター」としてのDNA復活を思わせる計画が浮上している。それが(1)大手スーパー同士の合併で手放される500店ほどの実店舗を買収し、悲願の生鮮食品事業の一挙拡大を図る可能性と、(2)米プライム会員向けの無料ないしは格安の携帯電話サービスだ。これらの計画はアマゾンの戦略にフィットするのだろうか。
執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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アマゾンが構想する生鮮事業の拡大戦略と携帯事業の新計画とは
(Photo:GarethWilley/Shutterstock.com、Yasu31/Shutterstock.com)

生鮮事業で「ECから実店舗」重視に大転換のワケ

 アマゾンが4月27日に発表した第1四半期(1~3月期)決算は、売上高と利益が市場予想を上回ったが、クラウド事業収入の伸びが急減速した。アンディ・ジャシーCEOはアナリスト向けカンファレンスで、「あらゆる部門でコスト削減を進めている」と明らかにする一方で、ブライアン・オルサブスキーCFOは「新たな収入源を模索している」と言明した。こうした中、アマゾンは生鮮食品事業の一挙拡大を狙おうとしている。

 これまで、高級生鮮チェーンのホールフーズを2017年に買収して以降、ホールフーズ、Amazonフレッシュ、Amazonゴー、ロボット宅配など、生鮮分野において試行錯誤を重ねてきた。

 しかし2023年2月、Amazonフレッシュの手数料が無料となる最低注文金額を35ドル(約4,900円)以上から一挙に4倍以上の150ドル(約2万1,000円)に改定した。生鮮宅配を利用する会員が減少しており、今までの手数料ではサービス提供が難しくなったことが要因と見られる。そうした「改悪」が影響したのか、オンラインの食品購入体験で、アマゾンよりもスーパーマーケット実店舗チェーンの方が顧客満足度は高いとのアンケート結果が公表された。

 この状況を受けてジャシーCEOは4月に公開した年次の株主への書簡で、「生鮮食品実店舗の分野で存在感を持つには、拡張するに値する大規模な生鮮フォーマットを見出す必要がある」と明言。「生鮮の買い物の大部分が実店舗で行われる事実に鑑み、弊社はより規模の大きい実店舗の設置面積(a broader physical store footprint)を必要としている」と述べた。

 計画どおりに進まないアマゾンの生鮮戦略は、これまでのEC中心の発想から大きく転換する必要があることの証左であろう。事実、生鮮以外でも25ドル(約3,500円)以上の注文をホールフーズなどの実店舗で受け取るプライム会員を対象に、10ドル(約1,400円)割り引くなど、ジャシーCEOは実店舗重視を打ち出している。

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アマゾンはなぜECから実店舗重視に戦略を転換したのか
(出典元:Octus_Photography / Shutterstock.com)

 ところが、アマゾンの実店舗売上は175億ドル(2021年、約2.4兆円)で停滞しており、同年の米国におけるスーパーマーケットおよび生鮮市場の売上である8,186億ドル(約114.3兆円)の2%程度にしかならない。競合ウォルマートは全米人口の90%以上が約3500の実店舗から10マイル(16キロ)圏内に居住しており、利便性が高いため、店舗とECの両方を提供するオムニチャネルでアマゾンの進撃を阻んでいる面がある。

500店買収か? 生鮮店舗だけでない使い道とは

 苦境が続くアマゾンのニーズに応えられる可能性があるとされるのが、米生鮮最大手クローガーと大手スーパーのアルバートソンズの合併話に絡んだ実店舗の大型買収案だ。言うまでもなくクローガーは米国内の生鮮最大手であるため、合併に関する当局の認可を得るために一部店舗を切り離すことが必要となる。

 クローガーとアルバートソンズは全米で最大約500店舗を手放すと見られているが、それらの店舗をアマゾンが買収して、実店舗としてだけでなく、配送拠点やミニ診療所の併設などにも利用する可能性が浮上している。

 米調査企業バーンスタインのアナリストであるディーン・ローゼンブラム氏が4月に発表した分析によると、この買収が実現した場合にはジャシーCEOが株主への書簡で語った「弊社はより規模の大きい実店舗の設置面積を必要としている」という目的を達成できる。

 このような買収話は現時点では机上のシミュレーションに過ぎず、クローガーが売却したい店舗とアマゾンが買収したい店舗が一致しない可能性も高い。また、生鮮業界に詳しいリチャード・スモリー氏は、「アマゾンは現時点でさえ生鮮実店舗をうまく運営できていないのに、クローガーとアルバートソンズから500店も買収したところで利益が出せるわけがない」と斬り捨てる

 振り返れば、アマゾンの「EC企業」「テクノロジー企業」の発想が、生鮮における消費者からの支持を勝ち取れない要因となり、実店舗企業との競争を困難にしているフシはある。決済調査企業PYMNTSの調査では、米消費者の61%がプライム会員である一方、ライバルのWalmart+(ウォルマート有料会員)が26%まで追い上げており、35%はどちらの会員でもなかった。この35%にどうアプローチするかは、アマゾンにとって大きな課題だ。

 こうした生鮮戦略だけでなく、現在浮上している計画が、プライム会員向けに格安または無料で提供する携帯電話サービスだ。 【次ページ】無料? 格安? おトクすぎる「アマゾンの携帯電話」計画

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