- 2006/08/17 掲載
【Web2.0特集】Web2.0サービスのつくりかた
Web2.0
Web2.0サービスは「ラボ」から生まれる
昨今、ネット系企業の「ラボ」が注目を集めている。その先駆者として最も有名なのが、グーグルのGoogle Labsであろう。従来の大企業の研究所、たとえばゼロックスのPARC(パロアルト研究所)やIBMの基礎研究所などは、基礎研究を担う専任組織であった。これに対して、Google Labsは基礎研究だけにとどまらず、新技術を活用した具体的な「サービス」を次々に開発している。専任の組織を持たない開発体制も特徴的だ。日本のネット企業でこれに近い形のラボとしては、gooラボがある。専任組織の株式会社ではあるが、サイボウズラボも「基礎研究よりもサービス化重視」という点は同様である。
ECナビでも、検索(serch)と情報共有(share)というキーワードを軸に新しいサービスをつくり出すことを目的として、2005年11月にECナビラボを設立した。すでに、ニュースに特化したソーシャルブックマークの「ECナビ人気ニュース」β版、本のソーシャルショッピングサービス「ECナビリスト」α版、新刊情報などをメールで知らせるアラートサービス「ECナビアラート」β版という3つのWeb2.0サービスを、このECナビラボからリリースしている。なお、設立時は3名の専任組織だったが、現在は兼任体制としている。
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代表取締役CEO 宇佐美進典氏 この記事の内容は ストリーミングでも視聴できます。 |
ベンチャースピリット喚起とスピード開発のために
ECナビラボを設立した背景としては、チープ革命やネット企業の競争激化といった外的要因に加え、組織の硬直化という大きな課題が内部にあった。スタッフが増えると、どうしても職能別の組織になってくる。すると、何か新しいことを始めようとしても組織の壁の中で必ず調整が必要となり、サービス提供までのスピードが鈍化してしまう。
こうした危機感から、社内に「もう1つのベンチャー」といえるような環境を作って開発力を強化すべきと考え、ECナビラボの設立に至った。ECナビラボでは、エンジニア主導による技術先行型でのサービス開発を基本としているため、開発のスピードも早い。たとえば「ECナビ人気ニュース」の場合、2005年10月10日に開発着手し、α版リリースは11月7日。わずか1ヶ月弱でのサービスリリースを実現している。
合宿をはじめとしたラボのユニークな開発スタイル
新しいサービスの開発にあたって、ECナビラボでは年6~7回「ラボ合宿」を実施している。これは、ラボメンバーを主体とした7~8名のチームで2泊3日程度の合宿を行い、基本要件をつめて実際にプログラミングまで行う開発スタイル。α版サービスのリリースを目的とした大規模な案件を対象とし、何を開発するかは行きの車中で決定する。
また、ラボ主導による「もしも会議」(「もしもこんなサービスがあったら」というアイデア発散型の会議)でサービス化案件を決め、開発メンバーを社内公募するパターンもある。開発メンバーに認定された者は、グーグルでおなじみの「20%ルール」で通常業務時間の20%をそのサービス開発に充てる。他にも、ラボのメンバーに限らず参加できる「もしも会議ライト」で開発テーマを議論して通常業務時間外に開発を進める「自主参加ルール」や、経営陣への「直談判」など、さまざまなスタイルで開発を行っている。
エンジニア主導型の開発を支える環境づくりが重要
ラボによるエンジニア主導のスピーディなサービス開発を成功させるためのポイントを、いくつか紹介しておこう。まず、少人数の開発者で集中的に進めること。ECナビラボの合宿の場合、2組のペアプロ開発でエンジニアは4名が基本だ。他はデザイナーなど2~3名に抑え、エンジニア以外は1泊のみで先に帰ることも多い。また、仕様書の作成にはこだわらず、ホワイトボードやポストイットを駆使してプロトタイピングで開発を進めていく。スピーディな開発のためには、既存のサービスとはできるだけ疎連携にすることもポイントだ。
そして、すべての前提となるのが、常にエンジニアのモチベーションを維持・向上することである。エンジニア自身がつくりたいと思うサービスを企画段階から主導してつくれる環境が、Web2.0のサービスを開発していく上では非常に重要となる。 もちろんこれは、エンジニアがただ好きなようにサービスをつくればよいという意味ではない。会社の戦略と整合性をとるためにテーマ選定の段階で経営陣と十分なすり合わせを行うこと、ユーザーが何を求めているのかをエンジニアが理解し、ユーザー視点でのサービスづくりを実践することも不可欠である。
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