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  • 2023/07/24 掲載

Google Cloudの上半期3大ニュースまとめ、生成AIとクラウドサービスのゆくえ

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早くも2023年の上半期が終了した。GAFAM(グーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフト)を中心とした米巨大IT企業のレイオフが年初に話題になり、IT株の低迷が深刻化していたが、半期が終わってみればすでに一部切り返しており、アルファベット(グーグルの親会社)の株価は年初来で3割以上も上昇している。今や話題の中心はジェネレーティブAI(生成AI)となり、世界でAI論争が巻き起こっている。ここでは、特にGoogle Cloudに焦点を当て、クラウドをめぐるAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureとのプラットフォーム競争のゆくえを占う。

執筆:友永 慎哉

執筆:友永 慎哉

製造業向け基幹系システムの開発を経験後、企業ITの編集、ライター業に従事。ファイナンス、サプライチェーンなど、企業経営の知識を軸にした執筆に強みを持つ。インダストリー4.0など新たな技術による製造業の世界的な変革や、Systems of Records(SoR)からSystems of Engagement(SoE)への移行、情報システムのクラウドシフトなどに注目する。GAFAなど巨大IT企業が金融、流通小売り、サービスといった既存の枠組みを塗り替えるなど、テクノロジーが主導する産業の変化について情報を収集・発信している。

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Google Cloudについて注目すべきポイントとは?
(Photo:Sundry Photography/Shutterstock.com)

トピック1:生成AIと広告市場での競争激化、Duet AI登場

 OpenAIが放った生成AIサービス「ChatGPT」は、2023年上半期に最も話題を集めたテクノロジーであり、議論はITにとどまらなくなっている。世界でAI脅威論を巻き起こし、日本でも連日にわたり、生成AIの議論、関連サービスの開始などが話題になっている。ChatGPTのエンジンであるGPT(Generative Pre-Trained Transformer)は、もともとグーグルの研究チームが発明したニューラルネットワークの一種である「トランスフォーマー(Transformers)」がベースになっている。単語やフレーズが、テキストの並びの中のどこに現れるかを追跡できる技術である。

 それだけに、グーグルとしてはChatGPTとの競争が始まったことに、心中穏やかでなかったようだ。5月にはAI研究の外部公表を制限することにしたと報じられている。同時期に、グーグルは年次イベント「Google I/O 2023」を開催。生成AIを搭載したさまざまな製品を発表した。

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Google I/O 2023の基調講演で「BARD」のデモを披露
(出典:グーグル公式チャンネル「Google I/O '23 in under 10 minutes」)

 グーグルおよびアルファベットのCEOであるサンダー・ピチャイ氏はGoogle I/O 2023の基調講演で、グーグル版のChatGPTと言えるチャットAIサービス「BARD」のデモなどを披露。さらに中核技術である最新の大規模言語(LLM)モデルとして「PaLM 2」を発表した。BARDに搭載しているPaLM 2について、グーグルは多言語、推論、コーディング機能が向上した最先端の言語モデルだと説明している。

 Google Cloud向けに、開発支援機能「Duet AI」を発表した。非エンジニアによるチャットベースでのアプリ作成からアプリケーション開発のコード作成まで、あらゆるスキルレベルのユーザー向けにAI開発をサポートする。Google CloudのCEOでオラクル出身のトーマス・クリアン氏は「責任ある生成AIに全力で取り組む」と話している。

トピック2:初の黒字化、シェア増

 赤字続きだったGoogle Cloudのビジネスが、2023年の第1四半期に初めて黒字化した。Google Cloudの売上高は対前年比で28%増の74億5,000万ドル(約1兆円)、営業利益は1億9,100万ドル(約2,700億円)となった。クラウド事業は、インフラサービスである「Google Cloud Platform」(GCP)を中核に、コミュニケーションツールの「Google Workspace」などがある。すでに、アルファベットの総売上高の10%以上の水準にまで増加しているという。

 ピチャイ氏は第1四半期決算報告で「過去3年間で年間契約件数は6倍になり、世界の大企業1000社の6割弱がGoogle Cloudの顧客になった」と話している。

 前年同期の売上高は58億2,000万ドルで、営業赤字が7億600万ドルとなっていた。だがこれも、グーグルがクラウドサービスを拡張するために、世界中にデータセンターを建設しているからであるとし、赤字に対して好意的な指摘も出ている。

 パブリッククラウド最大手であるAWSやAzureと比較しても、Google Cloudの収益拡大ペースは速くなっている。同じ第1四半期の売上高を見ると、AWSが16%増、マイクロソフトでAzureやサーバ製品を担うIntelligent Cloud部門が20%増にとどまっており、28%増のGoogle Cloudは成長スピードで優位に立っている。

 Synergy Research Groupの調査を見ると、2023年第1四半期におけるクラウドインフラ市場のシェアでは、AWSが32%、Azureが23%、Google Cloudが10%となっている。AWSとAzureの2強といわれていた市場だが、Google Cloudが加わり、まずは3強になる公算が強くなってきている。

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クラウドインフラストラクチャサービス市場の規模推移とシェア動向
(出典:Synergy Research Group)
【次ページ】トピック3:大規模なレイオフ、働き方も大きく変化

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