• 2007/04/03 掲載

【連載】NGNとは何か(1):各国と日本の取り組み

月間連載

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世界の通信業界は今、大転換期を迎えつつある。既存の電話網がIP(インターネット プロトコル)をベースにしたインフラに置き換わり、そこからすべてのサービスをシームレスにつないでいこうとしているためだ。これら新しいサービスを総称して「NGN(次世代ネットワーク)」という。本稿では、NGNによってもたらされるものとは何なのか、現在どういった形で取り組みが行われているのか、などについて、ソフトバンク テレコムの執筆陣が解き明かしていく。
NGN誕生の背景

 1990年代は、インターネットの爆発的普及が始まり、パケットデータトラフィックの急増が顕著となっていた。その対応策の一環として、各国はブロードバンド化への道を歩み始めた。米国では、NII (National Information Infrastructure)の名のもと、ケーブルTV会社の通信への参入も活発となり、ブロードバンド化の波がいち早く始まった。2000年になると、世界通信標準を作るITU(International Telecommunication Union)において、GII (Global Information Infrastructure)と称した、インターネットと通信の世界の融合を図る試みが始まった。21世紀に入ってすぐは、ソフトバンクによるADSL普及促進が貢献し、エンドユーザーから見た世界最速のブロードバンドを実現したのは日本であった。

 インターネットの普及が進むにつれ、既存通信サービス、特に電話・専用線などのIP技術による統合化も進展し、従来技術とのサービス提供価格やコスト構成面でのギャップが顕在化してきた。この様な状況を踏まえ、ITUによって提唱されたのが「NGN(Next Generation Network)」である。通信キャリアが主導権を握るITUにおいてNGNが提唱された背景には、キャリア内のネットワーク構造をいち早くIP技術をベースとするネットワークへ移行しなければ、既存キャリアが生き残れないという危機感もあったと考えられる。

現在語られているNGN

 NGNの特徴は、ITU-T勧告Y.2001によると、以下のような特徴を持っている。
・パケットベースのネットワーク
・広帯域かつQoS制御可能なトランスポート技術を活用
・サービス提供関連機能とトランスポート関連技術が独立
・利用者からの異なるサービスプロバイダへのアクセスを制限排除
・汎用的なモバイル環境をサポートし、ユビキタスなサービスを提供
 NGNとはつまり、パケット(IP)をベースとするネットワークが基本で、そのネットワークの制御と各種アプリケーションとの橋渡しをする制御機能部との分離にその特徴があるといえる。以下の図1は、ITU-Tにて使われているNGNの全体像の日本語版である。


※クリックで拡大
図1 NGNの全体像


 2006年7月には、NGNリリース1の勧告化が終了し、NGNが目指す初期機能群がそろってきた。リリース1での目標は、現在のインターネットが抱える課題である品質制御・セキュリティについての対策が取れた上で、既存のサービスをIP技術に置き換えることである。そこでまずは、下記機能についての勧告化がなされた。
・電話・ISDNのIP化
・品質制御(QoS)
・セキュリティ
 今後リリース2、3と進展していく予定であり、その中で映像やRFIDを含む各種IDへの対応機能を含むNGNへと進化して行く方向である。

各国の取り組み状況

1.英国
 BT(旧名British Telecom)のNGN構想は、21CN (21st Century Network : 21世紀ネットワーク)と名付けられている。その狙いは、容易な新サービスの生成や購入、その利用の実現にある。コスト削減のためには、生成だけでなく、旧サービス・設備の撤去も迅速に行える必要があり、固定通信と移動(無線)通信のコンバージョン(融合)も必須事項となる。

 その実現のための具体的なネットワーク構成は以下の通り。
・IP/MPLSコア:全サービスを維持し、PSTN(公衆交換電話網)もこのコア上で提供
・ユビキタス:あらゆるデバイスを使ってログオンし、これにより“ユビキタス”を実現


2.韓国
 韓国におけるNGN構想は、主にKT(旧名Korea Telecom)が推進するBcN(Broadband covergence Network)である。その内容は以下の通りである。
・IPベースの統合ネットワークで、サービス統合、多様なアクセス、高品質を実現
・端末層、アクセスネットワーク層、IPコアネットワーク層、アプリケーション層の4階層からなるアーキテクチャの実現
 KTにおいては、「Octaveプロジェクト」があり、その目標は、ブロードバンドでの収入を増加させ、マルチサービスプロバイダを目指すことにある。これは、インフラだけでなく、アプリケーションサービスも提供していくことを意味している。Octaveプロジェクトにて考えられるサービスは、Happy Home、Intimate Home、Hopeful Home、Secure Homeの4種類であり、それぞれユーザーへ新しいライフスタイルを提案している。

3.各国キャリア動向まとめ
 NGN構想は、国際的な場(ITU-T)にて議論されているが、その実現へ向けての具体的な取り組みは、欧州・アジアが中心となっている。米国においては、その動きを見守るのと並行して、次世代IPについての研究開発を進めている。例えば、米国の科学工学分野の基礎研究政府機関「NSF(National Science Foundation)」は、次世代のインターネットのあり方を模索する「Future Internet Designプロジェクト」などを立ち上げ、別の方向性の進展を狙っている。

 また、欧州とアジアにおいては、NGNへの取り組みに若干の違いがある。欧州においては、3GPPに基づくIMS(Internet Multimedia Service)を中心にNGNへの取り組みが進むのに対し、アジアにおいては、ITUの国際標準化をベースとしつつも、各国・キャリアごとにNGN構想の実現を進めている。

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