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  • 2007/05/09 掲載

【連載】中小企業の戦略的会計システム構築 第3回:部分最適と全体最適を使い分ける

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中小企業の成長に避けて通れないのが会計システムの構築である。日常的に必須とされる業務を経営戦略に生かすことができれば、その企業は一段と飛躍できる。会社の仕組みが見えてくる会計システムについて、インストラクション 代表取締役社長 神田祐治氏が解説する。

第1回【連載】中小企業の戦略的会計システム構築 第1回:会計の基本知識と日次決算の意義
第2回【連載】中小企業の戦略的会計システム構築 第2回:大企業と中小企業の目的の違い
第3回【連載】中小企業の戦略的会計システム構築 第3回:部分最適と全体最適を使い分ける

二分法

 世の中の人は2つのタイプに分類できるという。グラスにビールが半分なのを見て、「いいぞ、まだ半分も飲めるぞ」と考えるのが楽観主義者、かたや「いや、もう半分しか残っていない」と考えるのが悲観主義者のタイプだ。化学者は半分のビールの成分を考察し、哲学者は消費された半分の空虚を想う。

 このように物事は2つのタイプに分けられると言う人がいる一方、そう簡単に人や物は分けられるものではないと主張する人もいる。

 人や物を二分法で比較しても正しい選択ができるわけではない。しかし、比べてみなければ解決方法が見つけにくいのも現実である。AかBか、それともCやDもあるのかもしれないという状況はなんとも悩ましい。

 情報システムの世界ではこの二分法で良く物事が論じられる。例えば、業務をパッケージに合わせるのかパッケージに業務を合わせるのか、段階的な導入か一括導入かといった具合だ。いずれにしても、一方が不適であるから他方が良いという結論に導かれやすいのが二分法の特徴である。

 最近、情報システムの構築の仕方の議論に「部分最適と全体最適」という言葉がよく使われる。二分法で語られる典型的なシステム論だ。その多くは全体最適の手法を正しいとする立場からの意見である。

部分最適と全体最適


 中小企業の管理職の方から販売管理と会計を連動させるシステムについて意見を聞くことがある。それぞれが単独で機能していた状態(部分最適)からフロントオフィスとバックオフィスが一体となった(全体最適)システムに変える方法についての相談だ。

 情報システムにおいて、各部分機能の最適を図ることを部分最適、情報システムや業務全体の最適を図ることを全体最適という。

 多くの情報システムや業務は部分的な機能と、全体としての機能の2つに分けて考えられる。部分的な機能が他の機能との連動を考えなくて良いケースでは、全体の果たす機能の効率や生産性はあまり重視されない。しかし、全体の利益を最大化しようとすると部分的な機能は全体最適に従属する役割を担うことになる。

 ERPは統合型ソフトと訳されることが多い。会計、債権、債務、販売、仕入、生産、人事、給与などからなる、いままで部分最適をしていた機能をすべて連動させようとするシステムである。言い換えれば、全体最適を目指すシステムがERPだ。

 二重入力の手間を省き、データの不整合をなくすにはERPソフトをどう使うか、ということが相談者たちの聞きたいことである。この場合、二重入力の手間を省くことはそう難しいものではない。なぜなら、合計転記をどのタイミングで、どの明細単位でするのかという運用面で、それはほぼ解決できるからだ。しかし、データの不整合については運用方法だけでは解決できないため、システムの中に不整合を起こさない機能の組み込みを検討しなければならない。

データの整合性

 システムの全体最適化を図る勘所はデータの整合性をいかに保つかにある。データに不整合があるようであれば目的はいつまでも達成できない。

 これを解決するには、まず、マスタデータ(台帳)とトランザクションデータ(伝票)の不整合を人の運用では処理しないようにすることから始めなければならない。例えば、銀行はその名称や所在地がよく変更される。それに伴い、台帳の差し換えや伝票そのものの修正を手入力で簡単に行ってしまうことがある。このようなコントロールされていないシステムではデータそのものは信頼できなくなる。信頼できないデータを会計に連動させることはあまりにも無謀なことだといえよう。

 次に、個人を認証をするログイン管理と同様に、どの部門にどの処理のアクセス権を与えるかという細かな「アクセスコントロール」も重要になる。特に組織変更にともなう人の異動や、ジョブそのものが他部門に移動する時には細心の注意と対処が求められる。

 また、業務の流れを可視化するために「ワークフロー」が作成されていることがある。その際、記載されている承認定義がシステム上で規定どおりに自動実行されなければデータの整合性は保てない。

 さらに、データには「トレーサビリティ」の機能も要求される。すなわち、アクセスログ、エラーログ、オペレーションログなどの記録を保持する機能のことである。データはログがとられ、モニタリングされてやっと信頼できるデータになる。万一、不正な処理と判断されたデータがあれば警告情報としてメールなどで管理者に「通知」されるようにもしておかなければならないのだ。

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