• 2007/06/29 掲載

ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略(1)(2/2)

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ボーン・グローバル企業のターゲット市場

 しかしながら、ボーン・グローバル企業を「良いコンセプトではあるが、なかなか実現しないアイディアだ」と捉える人もいる。企業の国際化は難しく、ベンチャー企業となればさらに難しいため、なかなか成功しないという背景があるからだ。

 ベンチャー企業は多くの場合、これから興りつつある市場や、マーケットが小さすぎて大企業が進出しにくいニッチ市場をターゲットとする。

 ボーン・グローバル企業においてもこれは同じことだ。国内市場だと規模が小さすぎて商品供給先としては成り立たないがグローバル規模では成り立つ「グローバルニッチ市場」や、グローバル規模で市場が立ち上がりつつある「グローバル新興市場」などがターゲットとして挙げられる。

【マネジメント】ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略
ボーン・グローバルの種を生む「オウル大学」
 それでは、グローバルニッチ市場やグローバル新興市場とはどのようなものかを具体的に見ていこう。ここでは、フィンランドのわずか人口12万人の町、オウル市に本拠地を置くネットホーク社を例に挙げたい。

 ネットホーク社は、携帯電話基地局のテストをするためのツールを開発・販売する会社だ。基地局そのものではなく、その基地局が正常に動いているかを確かめるツールということであり、非常にニッチなマーケットに位置する。また、同社の設立当時(1991年)は、携帯電話市場は今ほど大きくなかった。

 しかし、同社は当時から、GSM規格*3が第2世代の携帯電話のデファクトスタンダードになること、PCの性能が高くなることを考え、当初の商品開発ターゲットをGSM規格とし、PC上でソフトウェアベースでテストができるツールを開発した。

 その後、GSM規格が第2世代携帯電話の事実上の標準となったことと、ソフトウェアベースのテスティングツールという先見性が見事的中し、世界市場に足がかりを築いた。

 現在、同社は世界中の通信機器メーカーや携帯電話会社にその商品を納品しており、2004年度の売上は約3000万ユーロ(約45億円)にも上る。オペレーションは、日本、アメリカ、ドイツ、中国を含む9カ国体制で行っている*4

ボーン・グローバル企業はローカルの強さをレバレッジしている

 ここまで、ボーン・グローバル企業とは何かを解説してきた。しかし、なぜフィンランドから多くのボーン・グローバル企業が生まれるのかを疑問に思った人も多いだろう。

 この秘密は、ボーン・グローバル企業がグローバル市場を攻略する際、フィンランドというローカル要素を大きく活用しているという点にある。ボーン・グローバル企業は、グローバル市場に位置しているが、フィンランドから起業したという“地の利“も存分に活かしているということだ。

 グローバルとローカルと相反するものを癒合して生まれる、フィンランドのボーン・グローバル企業群。次回は、この秘密を完全解明すべく、フィンランドという”地の利”、つまり、フィンランドに存在するボーン・グローバル企業を生む生態系「ザ・フィンランド・システム」をいよいよ解説していきたい。

(*1)教育分野では、PISA2003(学習到達度調査)で、好成績を収めたことはおなじみであろう。また、環境維持指数ランキング(2005年度/イェール大学環境パフォーマンス測定プロジェクト)では、1位をマークしている。2004年度版の世界汚職清潔度ランキング(トランスペアレンシー・インターナショナル)でも1位をマークしている。

(*2)2006年1月取材時、詳しくは拙書、「ザ・フィンランド・システム」をご参照いただきたい。

(*3)GSM規格とは、携帯電話の第2世代(デジタル携帯電話)の事実上標準となった規格。日本では導入されていない為、馴染みが薄いが、世界的に見ると日本・韓国以外ではほぼすべての国で、GSM規格の携帯電話サービスが提供されている。

(*4)2005年12月取材時、詳しくは拙書、「ザ・フィンランド・システム」をご参照いただきたい。


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