• 2007/07/09 掲載

【連載】NGNとは何か(4):NGNに向けたFMC(2/2)

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One PhoneとOne Numberサービスの実現方式の概要

 One Numberサービスの電話番号としては、090や080ではじまる携帯電話番号や070ではじまるPHS電話番号、050ではじまるIP電話番号、060ではじまる新たなFMC用の電話番号を使用することなどが考えられる。One Phoneサービスの実現にあたっては、これらの番号に着信した場合に、端末が移動アクセスと固定アクセスのどちらにいても確実に接続する必要がある。こういった技術課題をクリアするために、One PhoneとOne Numberサービスの実現には「UMA」と「VCC」という代表的な2つの方式がある(図2)。それぞれ詳しく解説していこう。


※クリックで拡大
図2 UMA方式 および VCC方式


1.UMA (Unlicensed Mobile Access)

 宅内のBluetoothや無線LAN APを、固定ブロードバンド回線を介して移動通信網に設置されたUNC (UMA Network Controller)と呼ばれる制御装置に接続し、携帯電話にはこれらAPにアクセス可能なUMA対応のものを用いるような方式である。移動通信網内では、UNCおよびAPからなる固定アクセスがあたかも移動アクセスの1つのように扱われる。

 宅内のBluetoothや無線LAN APのエリア内ではUMA対応携帯電話がこれらAPにアクセスし、音声のみならず従来の呼制御信号もIPカプセル化して、固定ブロードバンド回線経由でUNCに接続して通信が行われる。ただし、本方式はGSM (Global System for Mobile communication:日本国外の第2世代携帯電話で用いられる通信方式)での実現が主流となっており、3Gへの対応は今後の業界動向や標準化動向に依存する。

 GSMに対応したUMA方式によるOne Phone & One Numberサービスには、BT (British Telecom)の「BT Fusion」やFT (France Telecom)の「unik」などの実施例がある。

2.VCC (Voice Call Continuity)

 第3世代携帯電話の国際標準規格3GPP(3rd Generation Partnership Project)のRel-7にて仕様化された方式である。移動アクセスにおける音声通話には回線交換を用い、また無線LANを介した固定アクセス経由での音声通話にはVoIPを用いるとともに、IMS (IP Multimedia Subsystem)を用いて着信網の選択やハンドオーバなどが実現される。

 固定アクセスには、移動アクセスと同様にUSIM (Universal Subscriber Identity Module)による認証を実現しながら、IPレベルでの秘匿性を保証しつつ無線LANの高速性が活かせるように、I-WLAN (Interworking Wireless LAN)と呼ばれる3GPPが策定した仕様が用いられる。

 IMSは音声サービスのみならず、セッション管理を必要とするマルチメディアサービスが容易に実現でき、例えばソフトバンクモバイルにおいても、既にIMSを用いたPresence(在席確認)サービスを“ホットステータス”として、またPoCサービスを“サークルトーク”として提供している。PoCとは、携帯電話でボタンを押す操作によって、同時に複数の相手に話しかけることができるサービスのことだ。

 また、VCCは無線LANに加えて広域無線LANであるWiMAXや第三世代携帯電話の規格を拡張したLTE (Long Term Evolution)など、将来の無線アクセスとのシームレスハンドオーバを実現する技術としても期待されている。LTEは3GPPによる仕様開発が進められている通信規格で、3.5Gと4Gの間となる規格のため3.9Gと呼ばれることもある。最大データ伝送速度は下り100Mbps、上りが50Mbps以上となる予定だ。

 このようなVCC方式の商用サービス提供例はまだないが、既に多くのメーカーにて技術開発や試作が進められていることから、商用化されるのも時間の問題だと考えられる。

NGNに向けたFMC

 ITU(国際電気通信連合)などで検討されているNGNの特徴の1つは、サービス制御を行うサービスストラタム(図3 緑の領域)とパケット交換を行うトランスポートストラタム(図3 青の領域)の2層に分離し、トランスポート・ストラタムに様々なアクセス網が収容できるところにある。


※クリックで拡大
図3 NGNの全体像


 移動アクセス及び固定アクセスの双方をNGNに収容し、それらアクセスにおけるサービスを連携させることは、まさにこれまでに解説してきたFMCサービスの実現に他ならない。

 また、この特徴を活かしトランスポートに依存しない共通なサービスの開発と提供を可能にするための主要技術としてIMSが用いられるが、前述のOne PhoneとOne Numberサービスを実現するVCC方式においても同じくIMSを用いており、その観点からもNGNとの親和性が高い上に、多様化したサービスニーズにも柔軟に対応できるというようなメリットが期待できる。

 来るべきNGNへの備えという点でも、このような将来につながっていく要素技術を意識しながらFMCサービスを実現しておくことが肝要である。

横田 大輔

ソフトバンクモバイル
技術総合研究室
テクノロジー開発センター
ネットワークテクノロジー課長

早稲田大学大学院理工学研究科修了後、1995年に三菱電機入社。同社 情報技術総合研究所にてATM通信システムなどの研究開発に従事。その後、ルーセント・テクノロジーを経て、2003年からボーダフォン(現 ソフトバンクモバイル)にてIMSやSAEなどの移動通信分野における新技術のフィージビリティスタディや3GPP国際仕様開発などに従事。

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