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  • 2007/08/13

【連載】NGNとは何か(5):加速するコンバージェンス

月間連載

次世代ネットワークへの注目が高まり、通信キャリアのみならず放送事業者までも巻き込んだコンバージェンス(融合)が加速化している。1998年にソフトバンクテレコムが提唱した「オールIP化」の方向性は、現在のブロードバンドネットワークの根幹に広く浸透している。今後、このオールIP化や通信と放送の融合に続くさまざまな融合が加速し、ユーザーに届けられるサービス提供において無くてはならないものとなる。今回は現在進行中の新しい技術のコンバージェンスについて解説する。

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電話系サービスから進む通信システムの融合


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図1 IMSによる通信システムの融合
 通信キャリアが提供するサービスは、そのサービスごとに必要な機能を持つ装置をメタリック回線や光ファイバといった通信ケーブルで接続することによって実現されている。

 たとえば、固定電話サービスでは通信事業者向けの局用交換機を全国に設置することで、各家庭の通話を可能にし、携帯電話サービスは携帯電話用の局用交換機と数万箇所におよぶ無線基地局を設置することで実現している。これらの装置はそれぞれのサービスを提供するための特殊な通信・交換機能やインターフェイスを持っており、そのサービスを提供するための必要十分な能力を提供している。

 しかし、これらのサービス同士がお互いに連携をしながら新しいサービスを提供するためには、今までバラバラの機能を持っていたこれらの交換機や通信機器の存在が障害となってくる。

 従来の交換機や通信機器で実現しているサービスを融合/統合させるためには、それぞれの交換機や通信機器のインターフェイスの違いを変換し、相互接続させるためのゲートウェイと呼ばれる装置をその中間に設置する必要がある。融合するサービスが単純であればこのゲートウェイを設置する方法は有効であるが、サービスが複雑化、高度化すると、ゲートウェイ的な方法は、コストや拡張性において大きな問題が発生する。

 昨今、通信サービスの融合が加速化し、高度なサービス提供を実現させることを前提としてIMS(IP Multimedia Subsystem)と呼ばれるシステムが、国際標準化機関の推進の下、次世代通信機器の標準仕様として拡大しつつある(図1)。

 IMSはもともと、第3世代携帯電話サービス(3G)の標準化機関である3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)と呼ばれる団体が標準化を進めていたが、次世代ネットワーク(NGN)の標準を進めているITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)がこのIMSをNGNの基本的なアーキテクチャの中に取り込む方針を示したことで、次世代ネットワークサービスを実現する中核システムの基準がIMSベースで構築されることとなった。

 しかしながら、IMS自体の普及はまだスタートしたばかりであり、IMSで実現されるサービスもまずは携帯電話やIP電話を中心とした電話系サービスが中心になると思われる。ブロードバンドサービスとの連携については、技術的なハードルよりも、現在稼動しているシステムとの整合性や保守運用面の統合方法といった点が大きな課題となってくる。これから5年後までには携帯電話システムにおけるIMS化が徐々に浸透し、その流れに固定電話のIP化が合流する形になると考えられる。

IMSシステムを通したサービス提供を実現する「SDP」


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図2 SDPによるサービスプラットフォームの融合
 IMSシステムは、主に通話サービスを実現するシステム統合で大きな貢献を果たしていくと考えられるが、実際にそのIMSシステムを通してさまざまなサービス提供を実現するのは「SDP(Service Delivery platform)」である。SDPの考え方は元来ITシステム系のサービスを共通プラットフォームとして提供していくことにあるが、現在では通信サービスを提供する共通プラットフォームとしての利用検討が進められている。

 たとえば、さまざまな通信サービスをアプリケーションインタフェース(API)として第3者のアプリケーション開発者(サードパーティ)に提供するため、従来通信事業者のみが許されたユーザー間の呼制御や位置情報/課金情報へのアクセス、さらにはネットワークのQoS制御との連携といったことが比較的手軽に行えるようになる。そのため、よりユーザー志向のサービスが生まれ、通信サービス市場の活性化や、サービスの高度化が期待できる(図2)。

 しかし、SDPの登場でバラ色の次世代サービス開発環境が整備されるのかというと、実際は多くの課題が残っている。まず第1に通信キャリアが開示できるAPIには限界があるということである。通信キャリアの提供するサービスは常に「顧客情報」という絶対に開示できない情報との連動が存在する。そのため、APIを開示するためには顧客情報を保護するセキュリティや、そのAPI利用に伴う課金をどのように行うかが問題になる。第2に既存の通信サービスがSDPに対応できていないことである。SDPで実現するアプリケーションには固定電話サービスなどの古いシステムで構築された通信サービスを利用するケースがある。その場合、古いシステムをSDPに適合させるためのインターフェイス変換が必要となり、その変換に必要なゲートウェイ装置の開発に大きな手間とコストが発生する。

 SDPを構築すれば「第3者にオープンな開発環境を低コストで提供し、アプリケーションの開発期間も大幅に短縮される」という理想的な環境は、IMSが通信キャリアのインフラ内に広く普及していることが前提であり、その実現にはまだ時間がかかると思われる。

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