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- 2024/08/19 掲載
リプレース? リノベ?「老朽化でどうしようもない」ERPの刷新法をガートナーが解説
リプレースとリノベーションのどちらを選ぶ?
長らく使い続けてきたERPなどのパッケージ・システムは、技術の老朽化や肥大化・複雑化、ブラックボックス化など、課題をいくつも抱えている。「そのことを“2025年の崖”と指摘した経済産業省の『DXレポート』の発表からすでに5年が経ちました。にもかかわらず、いまだ課題に対応できていない企業も少なからず見受けられます」と指摘するのは、ガートナー バイス プレジデント,アナリストの本好宏次氏である。
問題が先送りのままではシステムが変化対応の足かせとなり、いずれ市場から退場を命じられてしまう。そこで採るべき選択肢となるのが「リプレース」と「リノベーション」だ。
家に例えれば、前者は引っ越し、後者は家に手を加えつつ住み続けることだと本好氏は解説する。当然、必要なコストは前者が圧倒的に高く、「ERPであれば数百億円規模になることもザラです」(本好氏)。とはいえ、基礎が腐っていれば手を加えるだけでは対応しきれず、引っ越すより手はない。
「リノベーションのほうがリスクもコストも格段に低く抑えられます。ビジネス戦略上、現状のままでは対応が困難な場合にのみリプレースを選択すべきです」(本好氏)
リプレースを選択せざるを得ない場合、次の点に注意が必要になるという。
継続的に拡張を続けてきたERPシステム内には、「SoR(System of Records:記録系システム)」「SoE(System of Engagement:エンゲージメント系/差別化系システム」)「SoI(System of Insight:インサイト系/革新系システム」)が混在しているケースが大半だ。
その状態のまま作業を進めては、「必然的に追加開発が無数に発生し、新たな複雑性が生じるだけでなく、移行コストもかさみ、運用の手間も増してしまいます」(本好氏)。
リプレースを行う場合の進め方
回避に向けて本好氏が推奨するのが、企業戦略とシステム戦略を突き合わせての各機能の上記3つへの分類と、ERPの本来機能である記録系以外の機能の切り出しだ。この手法を採ることで、Fit to Standardによる新たなERPの整備が可能となる。「リプレースは大規模作業により、大変な苦労を要する一方、いわば部屋の間取りも一から自由に決められます。であるのなら、経営戦略を基に必要な機能を見極める議論の好機ととらえるべきです。そこでは、技術的負債を生じさせないようエンゲージメント系とインサイト系は基本、外部の連携機能として用意します。この手法であれば、たとえば分析機能を強化すべきと結論が出た場合にも、BIパッケージとの連携により容易に対応できます。ローコードにより機能開発のハードルが大幅に下がっているのもポイントです」(本好氏)
リプレースは膨大なコストを要すため、取り組みに見合う成果への社内の目も厳しくなりがちだ。納得を得るには、リモートアクセス機能や各種作業の自動入力機能など、現場にとって「+α」の機能を新たに用意するといった工夫も必要になるという。
「リプレースに着手する企業は、システムに手を加える頻度が低いとの調査結果もあります。更新頻度が高ければ、面倒なリプレースを先延ばしできた可能性があることもぜひ理解しておくべきでしょう」(本好氏)
前述のようにERPシステムのリプレースは大きなリスクを伴う。国内でも稼働開始直後のトラブルによって食品メーカーが出荷停止を余儀なくされたことは記憶に新しい。リノベーションはその点でもリプレースより優れている。
機能拡張のやり方はリプレースと同様だ。技術的な負債を鑑み、本体には記録系だけを残すことを基本方針に、コンポーザブル・アーキテクチャによりクラウドなどに用意した新機能と連携を図っていく。
「そこでも経営戦略に基づく多様なシステムと統合した将来像を描き、作業スケジュールを決めていきます」(本好氏) 【次ページ】クラウドERPはあくまで選択肢の1つ
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