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- 2024/09/30 掲載
SAPなどERP導入で「過度な標準化」はNGなワケ、ガートナーが「4つの落とし穴」を解説
ERP導入における成否の「分かれ道」
複数の業務を一元管理できるERPは、ビジネスにおける業務効率化や迅速化に寄与するなど、導入のメリットが大きい。そんなERPの導入について、「プロジェクトを成功させた方に話を聞くと『なぜ、うまくいったのか分からない。普通にやっていました』とおっしゃいます。私から見ると、すごく苦労されているプロジェクトがはまっている落とし穴をことごとく回避していると思います」と話すのは、ガートナー バイス プレジデント, アナリストの本好 宏次氏だ。
本好氏が調査した日本におけるERPプロジェクトの成功率によると、企業内の担当者の主観では、プロジェクトが成功したと感じている人は2割弱で、失敗と自己評価しているのは1割弱、「どちらかといえば成功」「どちらかといえば失敗」というグレーゾーンが大半を占めているという。
こうした現状を受けて本好氏は「ERPプロジェクトを山登りに例えると、2合目、4合目などいくつかの難所があります」と説明し、企業がつまづきがちなポイントが存在することを指摘する。
ではその難所とは具体的に何を指すのだろうか。
ERPプロジェクトにおける「失敗4パターン」
本好氏によると、ERPプロジェクトにおける失敗には、主に下記の4パターンが見受けられるという。- 期待過剰型
- 時代錯誤型
- 見切り発車型
- ユーザー不在型
それぞれ詳しく見ていこう。
まず最初のパターンは、本好氏が山登りの難所の2合目と位置付ける「期待過剰型」だ。このパターンは以前から今も変わらず、不易流行に続いている。
本好氏によると、期待過剰型には「全部入り」と「過度な標準化」という典型例があるという。
まず「全部入り」ついては、ERPスイート全要件をカバーできるとの誤解から、コスト増やプロジェクトスコープのぶれを招いてしまうことを意味する。
この原因としては、現行環境を再現したいと固執することで、カスタマイズ増加による技術的な負債が蓄積されたり、ERPの機能網羅性への過信があるという。
こうしたケースについて本好氏は、自社にとって「ちょうど良い」と思われるERPの範囲を定義することで失敗を避けつつ、「ペース・レイヤ・アプリケーション戦略」に基づいて、メリハリの利いた要件整理を対策として行うことを推奨する。
「ペース・レイヤ・アプリケーション戦略」はガートナーが従来から提唱してきた、アプリケーションを使用目的と変更の頻度で分類し、分類ごとに異なる管理とガバナンスのプロセスを定義する手法だ。アプリケーションを「革新システム(SoI:Systems of Innovation)」「差別化システム(SoD:Systems of Differentiation)」「記録システム(SoR:Systems of Racord))」の3つの領域に分類する。
要件整理により、記録領域では、業務内容に合わせてシステム開発や機能変更をするのではなく、システムの標準機能に合わせて業務を変えることを指す「Fit to Standard」を、差別化/革新領域では製品のすみ分けやPaaSの拡張を行うことが有効だ。 【次ページ】過剰な標準化で抱く「ある幻想」
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