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- 2021/07/09 掲載
コンポーザブルとは何か? ガートナーが説く「変化に強い」インフラ構築技術のキモ
コンポーザブルなアーキテクチャーとは?
ITによる国境を越えた経済活動と、グローバル規模での新たなビジネスモデルの創出・展開が加速する中にあって、企業経営における変化対応力の重要性がかつてないほど高まっている。その中で課題になっているのがシステムの“安定性”と“柔軟性”の両立だ。業務基盤である企業システムは高い安定性が必須とされ、従来、当面は中身に手を付けないことを前提に、堅牢さを追求する開発が広く実施されてきた。結果、多くのシステムが変化に柔軟に追随できない状況にある。
その打開策として今、注目を集めているのが「コンポーザブル」だ。
コンポーザブル(Composable)とは、直訳すると「複数の要素や部品などを結合して、構成や組み立てが可能な」の意になる。従来からのモノシリックなシステムをコンポーネントに分割して組み換え(コンポジション)を容易にするとともに、コンポーネントごとの変更を通じて他システムへの影響を排除することで、安全かつ迅速、しかも効率的なシステムの見直しを可能とするアーキテクチャーのこと。
ガートナー Distinguished VP AnalystのYefim Natis氏は、「企業システムはビジネス部門とIT部門の双方の影響下にあり、技術だけでなく、両者のパワーバランスの問題からも大規模アプリケーションの安定かつ柔軟な運用が困難な状況にありました。対してコンポーザブル・アーキテクチャーは、両者の協力の下、アプリケーション開発や改修を加速させるアプローチでもあります」と説明する。
コンポーザブルのメリット、競合を8割上回る速度で実装
Natis氏によると、実は程度の差こそあれ、すでにあらゆる企業でコンポーザブルなアプリケーション開発への動きが進んでいるという。出発点は言うまでもなく、従来からのオンプレによる開発だ。その後、現場のシステム整備の迅速化の要望を踏まえたクラウド活用、さらに、迅速な機能実装に向けたIT部門主導での外部機能のAPI連携が本格化した。
コンポーザブル・アーキテクチャーは、俊敏性の向上と、IT部門とビジネス部門の溝を埋める、その先のアプローチに位置付けられるという。ガートナーによると、同アーキテクチャーを採用した企業は開発生産性が格段に高まり、2028年までに競合他社を80%上回るスピードで新機能を実装すると見込まれている。
コンポーザブル推進の4つの課題と解決策
もっとも、「その推進にあたっては、次の4つに対する全社的な理解が必要になります」とNatis氏。その1つ目は、コンポーネントの組み換え担当者(部門)だ。Natis氏は、「ITとビジネスのどちらが担うかといった議論は、ここではナンセンスです」と断言する。
「現在の変化はITとビジネスの融合の結果で、どちらかの知識やノウハウだけでは変化に到底対応しきれません。必然的に互いが協力する必要があり、従来のように予算を取り合っている場合ではないのです」(Natis氏)
そこで新たなプレイヤーとなるのが、「シャドーITの原因でもあった」(Natis氏)現場の「テクノロジー・プロデューサー」だ。彼らがITと現場の仲介役となり、新たに「フュージョンチーム」を結成することで、コンポーネントを扱う主力部隊となるのである。
2019年のガートナーの調査でも、すでに企業の84%、政府機関の59%がフュージョンチームを立ち上げているという。
【次ページ】組み換えの容易さでシステムの民主化が加速
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