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- 2024/11/27 掲載
【マンガ付】アシックスの「業績V字回復」を支えた「ERP刷新」、ぶち当たった3つの壁
連載:マンガとアシックスに学ぶDX成功法
卸と小売で異なるERPを「世界で統一」
書籍『マンガでわかるDX』の中で、東京大学大学院の松尾 豊教授が「自社のビジネスモデルや強みを把握しないとDXはできません」と指摘するシーンがあります。アシックスはそれだけでなく、「言語」が大きなカギを握りました。では、順を追って説明します。まず2009年ごろ、アシックスのグローバル売上比重がどんどん高まっていたこともあり、これまでリージョンごとで成り立っていたシステムでは限界を迎え、グローバル統一の基幹システム導入が必要になってきました。
当時の基幹システムは、卸売り/小売りの両方で同時にサービスを提供できる統合ソリューションとして、市場に投入されたばかりでしたが、それまでは卸売事業と小売事業の別システムを運用することは業界全体で踏襲されていました。アシックスも例外ではなく、1つのシステムへの統一は大きなプロジェクトになりました。
グローバル基幹システムを導入するこのプロジェクトは、すべての事業を新しい単一のグローバルプラットフォームに移行して誰もが同じシステムを使用できることを目指していました。それだけ大きな志であったということからプロジェクト名は「Taishi(大志)」と名付けられました。
ERP刷新でぶつかった「3つのギャップ」
しかし、いざグローバル化の実現に向けて動きだすと、さまざまな壁にぶつかり実装を進めたくても、進めることができませんでした。その大きな理由として3つのギャップがあります。1つ目に「言語」のギャップがありました。当時は各国それぞれでビジネスを展開していたため、国やリージョン間の連携がほとんどなく、英語を使ったコミュニケーション自体があまりありませんでした。いざ、海外販社とコミュニケーションを取ろうとしても、意思疎通が思うように進まなかったのです。
次に、業務間で起こる「言葉」の違いです。重さを示す「Weight」という項目も製品開発部では“代表サイズ”のWeightを指している一方、物流倉庫では“サイズごと”のWeightデータが必要であり、若干のズレが議論を複雑にしているケースも多々ありました。
3つ目が、それらの「用語の定義付け」です。たとえば商品の「サイズ」1つを取っても、概念から定義し直す必要があります。単位に何を使うのか(センチなのかインチなのかなど)、足の幅を示すウィズの値はどの規格を使うのか(JIS規格のE,2Eなのか、独自のSlim、Wideなのかなど)、アパレルの場合の長さは何を指すのか(着丈の長さの定義は世界で統一されているかなど)、それらを製品属性ごとにすべての商品に反映させていく必要がありました。 【次ページ】ERP刷新を成功できた「ターニングポイント」
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