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- 2025/01/06 掲載
DMO(観光地域づくり法人)乱立の果てに…地方観光の救世主はなぜ機能しない?
連載:「コロナ後のインバウンドの行方」
東レ経営研究所 チーフアナリスト。東京大学文学部ロシア語・ロシア文学科卒業、山一証券経済研究所入社。1999年から東レ経営研究所。製造業、コンビニ、訪日観光等、幅広い分野をウォッチしている。 日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。金融庁企業会計審議会委員(企画調整部会。2005年1月~2015年1月)、内閣府統計委員会専門委員(2014年~2015年)、経済産業省新たなコンビニのあり方検討会委員(2019年~2020年)等を歴任。 共著に「図解即戦力 工作機械業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書」(技術評論社、2022年6月発刊)」。
特定地域に殺到するインバウンド
訪日外国人(インバウンド)が絶好調である。2024年1~11月のインバウンドは、コロナ前の2019年1~11月比13.7%増の3338万人と、12月を待たずに過去最高の3188万人(2019年)を更新した(図表1)。2024年1~9月のインバウンド消費も5.84兆円と、過去最高だった2023年通年の5.31兆円をすでに超えている。2022年10月のコロナ水際対策の本格緩和以降、急速に増加したインバウンドはオーバーツーリズムなどの問題を引き起こしている。ただ、日本中どこへ行っても満員御礼というわけではなく、東京、大阪、京都などの有名観光地が押すな押すなの大盛況であるのに対して、「インバウンド?見かけたことないですねえ」という地域もある。2024年9月の宿泊統計を見ても、首位の東京都(193万人泊)の外国人延べ宿泊数は、最下位の福井県(3650人泊)の実に527倍である(図表2)。
なぜ、インバウンドは特定の地域に殺到しているのだろうか。背景に(1)地方空港に就航している国際線が少ない、(2)地方では2次交通(空港や鉄道主要駅から観光地までの路線バスや鉄道などの交通手段)が整備されておらず不便である、(3)インバウンドが団体旅行から個人旅行にシフトしており、かつてはツアーバスで巡っていた地方に行きづらくなっている、などがあるが、そもそも地方の観光地の知名度が低く、宿泊施設、多言語対応、キャッシュレス決済、多様なアクティビティなど、受け入れ態勢が整っていないという問題もある。
そこで思い起こされるのが、人口減少・産業衰退で火が消えたようになっている地方をインバウンド誘客で活性化させようと、鳴り物入りでつくられた観光地域づくり法人(Destination Management/Marketing Organization。略称DMO)である。DMOは地方誘客に成果を上げているのだろうか。
結論から先に言うと、DMOの数は増えたが、インバウンド誘致にはあまり貢献していない。なぜうまく機能していないのだろうか。
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