• 2008/02/27 掲載

ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略(5)(2/2)

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1.グローバル規模でティーンエイジャーに受け入れられている

 ハボ ホテルの2006年度末のユーザー総数は、約7300万人。1か月約750万人が利用するオンラインコミュニティとなっている。

 グローバル規模でティーンエイジャーに受け入れられている点は、そのアクセス量の割合が証明している。南北アメリカからのトラフィックが全体の37%。ヨーロッパ地域が51%、アジア、オセアニア地域からは、12%となっている。また、単にグローバル規模で受け入れられているだけではない。きっちりとティーンエイジャーにセグメント化もされている。ユーザーの内、70%が13 – 16歳、49%が男性で、51%が女性である。

 このようなコミュニティでは、たとえば、グローバル規模で活動する清涼飲料水メーカー(例としては、コカ・コーラ)や、若者向けエンターテイメント会社(例としては、ディズニー)にとっては、非常にユニークな広告媒体ができたともいえる。

 ちなみに、フィンランドの人口はわずか520万人。ヘルシンキ市の人口が約50万人である。つまり、このユーザー規模を獲得するためには、ボーン・グローバル型の成長が必要なことが改めてわかる。

2.ユーザー課金によって成り立っている

【マネジメント】ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略
インタビューに応じてくれた
スラケ社上級副社長 ユハ ヒニネン氏
 このハボ ホテルがさらにユニークな点は、広告モデルではなく、ティーンエイジャーへの課金でビジネスが成り立っていることだ。スラケ社の広告収入の占める割合は、わずか10%以下である(2006年の会計年度)。

 では、実際どのように課金されているのか?ハボ ホテルに入会するとユーザーは、コミュニティ上に部屋をもつことができる(もちろん、インターネット上のことである)。この部屋には、家具などのアイテムを置くことができ、このようなアイテムの購入に対して課金を行っているのだ。

 ティーンエイジャーという、おこづかいで暮らしている層(可処分所得も多くない)に対して、課金モデルが成功していることも驚異的であるが、これも、ハボ ホテルが、ティーンエイジャーに対して大きな価値を提供していることの裏返しである。

 また、スラケ社は、クレジットカードの利用が少ないティーンエイジャーに対しての課金の難しさを克服するために、全世界で170社以上の決済手段運営会社との契約を結ぶなど、課金がスムーズに行われるようにインフラ作りに励んでいることも特筆すべきことだ。

 スラケの売上は、2005年の会計年度28.4ミリオンユーロ(約45億円/1ユーロ、158円として計算)、2006年度は推定40ミリオンユーロ(約64億円)、2007年度は推定50ミリオンユーロ(約80億円)にも達するとのことだ。

スラケ社の成功の謎

 スラケ社のハボ ホテルが成功した理由は以下の3つに分類できる。

 1つ目は、ティーンエイジャーがまさに欲していた自身のクリエイティビティを喚起させるタイプのコミュニティを作ったことだ。これは、単に家具を購入するだけでなく、自分の部屋を家具でどのようにして飾り立てることができるのか?という自由度にある。そうした自分オリジナルな部屋を友達と見せ合うことで、日常生活の中のこだわりをオンライン上までもちこめる。

 また、ハボ ホテルのユニークなグラフィックもそのクリエイティビティの喚起に一役かっていると考えられる。

 2つ目は、安全で遊びやすいコミュニティ作りを重視し、監視などを行っていることもその成功の理由だろう。単にユーザーを集めることに注力するだけでなく、集めたユーザーが気持ちよい時間を過ごせるように、スラケ社はコミュニティ運営にも力を入れている。

 3つ目に、ボーン・グローバル的な展開が挙げられる。フィンランドのユーザーを対象にしたビジネスでは、ここまで多様なサービスを提供できなかったかもしれない。UKやアメリカなどの海外マーケットに積極的に進出し、ユーザー獲得に努めたことが成長のキーポイントとも言える。

 ハボ ホテルは、1999年にスラケ社の創立者が、フィンランド国内向けの音楽プロモーションのために作ったサイトがコンセプトとなっている。1999年にすでに高いインターネット普及率を誇っていたフィンランドのティーンエイジャーは、”ティーンエイジャーとしてのインターネットユーザー”をリードする存在だったかもしれない。つまり、スラケ社にとって、フィンランドの国内マーケットでのラーニングは、グローバル展開する上での基礎となったとも言える。

 昨今の報道によると、スラケ社は、日本でもハボ ホテルの展開を加速していくようだ。日本でも、スラケ社の驚嘆するビジネスモデルが話題になる日も近いかもしれない。

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