- 2025/12/05 掲載
伊藤忠は大幅増益で三菱商事は株価急落ーー総合商社5社決算まとめ 「資源の次」は?
資源減速と一過性要因、三菱商事は大幅減益で他社は増益
三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の総合商社大手5社の2026年3月期第2四半期(中間)決算が出そろった。三菱商事の中間期収益は8兆6,378億円と、前年同期比では7.7%の減収となり、親会社の所有者に帰属する四半期利益は3,558億円で42.4%減と大きく落ち込んだ。前年の豪州原料炭事業売却益や千代田化工建設関連の引当金戻入の反動に加え、ローソンの持分法適用化が響いた格好だ。
これに対し、伊藤忠商事は収益7兆2,492億円と微減ながら、親会社株主に帰属する中間純利益は5,003億円で14.1%増と大幅な増益を確保した。有価証券売却益が寄与し、税引前利益も2桁増となっている。
住友商事も増益組に入る。収益は3兆5,400億円と0.5%増、親会社の所有者に帰属する中間利益は3,012億円で18.6%増となった。米国タイヤ販売事業「マイダス」売却益や大口不動産案件の引き渡しが、自動車・都市総合開発など非資源セグメントの利益を押し上げた。一方、資源セグメントは石炭価格下落などで減益となり、事業ポートフォリオの分散が減益幅を吸収した構図だ。
丸紅は、収益4兆2,034億円(8.0%増)、親会社の所有者に帰属する中間利益3,055億円(28.3%増)と5社の中でも高い増益率を示した。上期で通期利益予想(5,100億円)の約6割に相当する59.9%まで進捗しており、非資源分野の伸長が全体をけん引したとみられる。
三井物産は、中間期の上半期収益が6兆7,591億円(7.8%減)、中間利益が4,237億円と前年から2.9%の増益となった。基礎営業キャッシュフローは一時的なLNG配当の期ズレ要因で減少したが、実質的には前期並みと会社側は説明する。
事前予想との乖離は限定 三菱のみ株価は一時大きく下落
この結果について、マーケットの見方としては「想定レンジ内~やや上振れ」との受け止めが多い。ただ三菱商事については、決算発表当日の株価が終値ベースで前日比3.88%安と大きく下落した。42%超の減益は主に一過性要因によるものだが、ローソンの持分法化など構造変化も絡み、投資家の一部には「減益幅が想定より大きい」との見方が広がったとみられる。
一方、伊藤忠商事は純利益が2桁成長ながら通期予想を据え置いたものの、株式分割と増配を同時に打ち出したことで、株主還元強化を評価する向きが多い。足元の株価は年初来高値圏で推移しており、市場は「サプライズ決算」ではないものの安定成長シナリオを織り込む動きといえる。
住友商事も中間利益が3,000億円を超え、通期見通しの進捗は順調だ。資源の減益を非資源でカバーする構図が明確になったことから、「事業ポートフォリオの分散が効いている」との評価が多く、株価も発表後に上昇する場面が目立った。
丸紅は高い進捗率から「上振れ余地」を意識する声もあるが、資源・非資源ともバランスよく利益が積み上がっており、決算自体はコンセンサスレンジ内との見方だ。
三井物産は、上期利益の順調な進捗を受けて通期見通しを引き上げたことで、決算説明会でも前向きな評価が目立った。資源価格の調整やLNG配当の反動といったマイナス要因をこなしつつ、非資源を含む複数セグメントで利益を積み上げている点が、市場予想をやや上回る材料となったとみられる。 【次ページ】5社のうち「三井物産だけが上方修正」のワケ
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