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  • 2008/03/11

【提言】製造業復活のシナリオは「技術のM&A」

監査法人トーマツ 永田伸之氏

日本企業の生きる道は、付加価値の高い商品をいち早く開発し、市場に投入し続けることだろう。常に先端を走り続けなければ、グローバル競争の中で勝ち残ることはできない。目を向けるべきは、負けないための合従連衡ではなく、勝つために、優秀な技術を持った中小企業やベンチャー企業とアライアンスする、あるいはそうした企業を買収することで、いち早く自社の弱みを強みに変えることではないだろうか。
*なお、本文中における意見や考察は、著者の私見であることをお断りしておく。


日本企業が衰退し、
韓国・中国企業が躍進している証左

 かつて、情報通信機器の分野も日本のお家芸だった。しかし、いつの間にか、その競争力は低下している。図表1は、平成19年版情報通信白書に掲載された、「主要情報通信機器における日本の世界シェアと輸出額の変化」だ。


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図表1:主要情報通信機器における世界市場シェアと輸出額シェアの変化(日本)


 左側が1997年の状況であり、右側が2005年の状況を示している。対象製品は液晶パネル、DVDプレーヤー、ノートパソコン、デスクトップパソコン、デジタルカメラ、半導体、ブラウン管テレビ、HDD、サーバ、ルーター、そして携帯電話端末である。縦軸が世界市場における日本企業のシェアであり、横軸が輸出額シェアを示している。

 縦軸で上にいくほど世界シェアが高く、また右にいくほど生産拠点の立地として優位性が高いと考えられる。一目瞭然だろう。デジタルカメラを除いて、情報通信機器といわれる製品の世界シェアも輸出額シェアも総じて減少傾向にある。つまり、日本の情報通信産業の国際競争力は、企業の競争力も、また立地としての競争力も低下傾向にあるわけだ。

 これに比べて韓国や中国はどうであろうか。図表2が韓国、図表3が中国の状況を表している。


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図表2:主要情報通信機器における世界市場シェアと輸出額シェアの変化(韓国)



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図表3:主要情報通信機器における世界市場シェアと輸出額シェアの変化(中国)


 日本に比べて、両国の国際競争力の向上は顕著といえよう。特に中国は、ブラウン管テレビ、DVDプレーヤー、ノートパソコンにおける世界シェアの向上が明白であり、さらにルーターや液晶パネルなどのハイテク製品においても輸出が増大している。これは、中国という巨大市場が背景にあるだけでなく、世界市場においても中国企業の国際競争力が増していることを意味している。

 また韓国においても半導体、携帯電話端末、DVDプレーヤーの世界シェアが向上している。なお、輸出額シェアがそれほど高くないのは、生産拠点の立地優位性は乏しいものの、すでに現地生産あるいは第三国生産がかなり進展している結果であると推察される。

 これは、日本企業にとって、危機以外の何ものでもない。


短期化する製品ライフサイクル、増大する開発コスト

 製造業には、差別化のための技術力、研究開発力、その結果として得られるコア技術が必要だ。しかし、必要な技術のすべてにおいて自前主義を貫くことは困難な時代だ。

 図表4は、主力製品のライフサイクル年数が、5年前に比べてどのように変化したかを表している。


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図表4:ライフサイクルの短縮率(%)


 鉄鋼を除いてその他すべての製品は、ライフサイクルが短くなっていることが見てとれる。特に家電は顕著で、4割以上もライフサイクルが短くなっているのだ。これは当然、メーカーにとっては恐い話だ。ライフサイクルが短くなれば、開発費の投資回収を行う期間も当然短くなる。パイが小さくなるのと同じだ。競争が激化すれば、余剰利益が減って、淘汰が進むことになる。

 こうした状況に企業はどのように対応しようとしているのかを聞くと、圧倒的に「研究開発の強化」を挙げる率が高い。次いで「生産立ち上げ力の強化」「ITシステムの強化」と続く。これはできるだけ早いタイミングで商品を市場に投入し、少しでも長く先行者利益を享受し、投資回収期間を伸ばそうとするからだ。その一方で、研究開発による商品差別化を推進して、価格競争の消耗戦から逃れ、当該商品のライフサイクルを伸ばすしかない。

 ところが、成熟化した製品や技術分野においては開発コストが増加する傾向にある。  たとえば、ゲームソフトの研究開発を考えてみてほしい。昔に比べてゲームの画面は非常にきめ細かなものになった。そのため、キャラクターの動きもスムーズで、よりリアルな描写も可能だ。そうしたハードで動くソフトを開発するのは並大抵のことではない。幾何学的に開発水準を上げていかないといけないから、プログラムの複雑さとボリュームが圧倒的に膨らんで、開発費はうなぎのぼりに上がっていくことになる。

 しかも、すでに顧客の認知できる一定の品質が実現しているテレビやパソコンの画像、あるいはデジカメの画素数など成熟した商品群では、それ以上の精細度競争にはほとんど意味がない。つまり、ユーザーが認知できるベネフィットはどんどんと限界効用が低減しているにもかかわらず、その品質をさらに高める開発費は反対にどんどんと高くなっているというわけだ。製品ライフサイクルが短縮化し、収益性が落ちているにもかかわらず、イノベーションのコストは大きく上昇しているのだ。

 だとすれば、早期に差別化された商品を市場に投入するためのコストを下げることが急務ということになる。そのためには、自社開発にこだわるのではなく、M&Aを含め必要な技術をいかに素早く外部から調達するかということを考える必要性が増しているといえる。

 M&Aを含めた外部からの技術の調達の最大の目的は、「時間コストを買う」ということに尽きる。商品の上市タイミングを逸すれば、収益機会を逃すことは必定だ。市場が立ち上がったライトタイミングに参入し、消耗戦をできるだけ回避し市場を独占ないし寡占するためには、多くの場合、すべてを自社開発するのでは間に合わないと思ったほうがいい。

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