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  • 2008/04/23

第4回:「内部統制の良し悪しの評価は、何によって測るのか?」

連載『中堅・中小企業に必要な内部統制とは』 NPO法人内部統制評価機構 専務理事 髙梨智弘氏

本連載の第3回「内部統制はやらなければいけないのか?」で述べたように、内部統制の4つ目的(1,業務の有効性と効率性 2,財務報告の信頼性 3,事業活動に関わる法令の遵守 4,資産の保全)の内、中堅・中小企業が特に焦点を当てなければならないのは、生き残りのための「業務の有効性と効率性」である。したがって、本稿では、業務の有効性・効率性をどのように評価するのかを中心に議論したい。

髙梨智弘

髙梨智弘

T&T PARTNERS会長
ICG国際コンサルタンツグループ会長
(株)日本総合研究所 フェロー
新潟大学大学院技術経営研究科特任教授
公認会計士

 考えるまでもなく、企業本来の仕事である業務の有効性と効率性に係わる活動は、戦略経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報・知(知識・知恵・知心の総合概念)、などを包含し、広範囲におよぶ。したがって、基本的要素のような専門的な表現や機能的なアプローチでは全体をカバーすることが難しいし、性悪説的な負荷の掛かった追加業務と思われ、中小企業がその実行に二の足を踏むだろう。図に示したように、金融商品取引法で定義されている4つの目的と6つの基本的要素を、より企業経営者に分かりやすい言葉で説明する必要があると思われる。それには、企業の日々の活動の中に6つの要素を取り込んだ本来業務ベースの基準があれば、中堅・中小企業においても、その普及のスピードが上がることが考えられる。

 具体例をあげれば、「生きるためには何でもしなければ・・・、まずは売上だ!」と思っていて、あるべき姿を追求する余裕のない中小企業に対しては、社会からの要請だと言って、社員が問題を起こさないように性悪説的に上から厳しくチェックするという視点や、コストを掛けきちんとやれという高圧的態度では、その普及はおぼつかないであろう。なるべくコストを掛けず、人手も取らない方法で行うことが必須である。もちろん、財務報告の信頼性と法令遵守の基本的な項目は、最低限その中に組み込まれていなければならない。

髙梨智弘氏
©NPO法人内部統制評価機構2006-2007


 では、どうすれば良いのか? 社会に受け入れられて企業活動が効果的に行われるように性善説的態度、つまり自分たちのために内部統制が役に立つと言う視点で、社員自らが個々の能力を発揮し、組織能力として結集できる仕組みを経営者が進んで作ることである。そのためには、図に示した中小企業向けの新しい5つの基準を経営者に受け入れられ易い形で(たとえば、儲かる内部統制と言うような視点から)導入することがよい。したがって日々の業務に密着した視点から、中小企業の目線に合わせて、(1)顧客と社会にどう対応するのか、(2)少ない経営資源をどう活用するのか、(3)問題を少なくするために学習する組織をどう構築するのか、(4)効果的、効率的に動けるような経営管理は何か、(5)情報をいつでも共有できる知の経営をどう実施すればよいのか、という業務プロセス思考の考え方を強調する必要がある。

 図の5つの基準は、次のように経営者が日々の業務を行う上で、重要と考えられる項目から成り立っている。

1.顧客や社会との良好な関係維持

2.経営資源の確保・維持

3.経営者、経営幹部、管理職及び社員各個人の能力向上と、組織能力向上を目指す学習の仕組み

4.経営管理の実践、改善

5.知の経営の実現

 経営者の役目は、業務を執行する社員が効率的に動けるような仕組みをつくること。また、社員がきちんと能力を上げて働いているかを確認する仕組みをつくることである。5つの基準は、この観点から特定非営利活動法人内部統制評価機構によって開発された。

ミスや不正を未然に防ぐ内部統制

 中小企業であっても、業務が多岐に渡り、作業工程が複雑化すると細かなところまで管理の目が行き届かなくなる。良い内部統制は、管理の目が行き届く、つまりP-D-C-A(計画、実行、チェック、是正措置)の管理をキチンとしていることである。別な言い方をすると、ミスや不正を未然に防ぐ仕組みがあることが、内部統制のシステムである。

 特定非営利活動法人内部統制評価機構が開発した5つの基準(カテゴリーと呼んでいる)と50の評価項目の詳細説明については、別な機会に譲るが、本稿では、内部統制を測定する例として、幾つかの具体的な項目を参考に挙げる。

<1>質問例:「企業の社会的責任の重要性についての理解は、経営者から社員にまで十分に浸透していますか?」
<2>質問例:「経営者は、クレーム・リコールなどの問題が発生した場合、顧客に対し、その発生原因と会社側の処置について、誠実かつ十分な説明責任を果たしますか?」

→ここでのミスや不正は、経営者や社員が「顧客や社会との良好な関係維持」の重要性を理解していないか、「うちは中小だからやらなくて良いだろう」と、高をくくっていること等から発生する。

<3>質問例:「会社の事業内容や営業活動などについて社会から理解を得るために、積極的な情報発信を行っていますか?」
<4>質問例:「資金調達に当たっては、使途・必要性・金額・調達手段を明確にし、適切なタイミングで必要な決裁を得て実行していますか?」

→ここでのミスや不正は、経営者が「経営資源の確保・維持」のための効果的な施策に疎いことや、資金を投入するコスト・費用対効果の計算ができないこと等から発生する。

<5>質問例:「経営者の経営方針・経営戦略は、社内ルールに基づき、経営幹部・管理職・一般社員に指示説明され、彼らの十分な理解と協力が得られていますか?」

→ここでのミスや不正は、経営者が「経営管理の実践、改善」の実行は、上から指示さえすれば、社員全員が理解してこそうまく行くことや、反発をされては動かないこと等を理解していないことから発生する。

全体最適も測る

 また企業というのは、社会、顧客、取引先、仕入先、金融機関等々の相互関係があって初めて機能することを理解していれば、例えば企業は仕入先から部品を仕入れるだけでなく、仕入先を指導する能力をもつことが重要である。それによって、部品の品質が担保できる。また、不必要に微に入り細にわたる検品などの作業が削減できる。

 経営者は、どのように社員の活動を見える化するのか、たとえば、あらためて内部統制の評価を行うことによって、業務の有効性や効率性を考えることは、経営者が経営の良さと全体最適を測定することの重要性に気づくことになる。

 内部統制を導入する中小企業が少ない現在、今こそ進んで内部統制に取り組み、顧客から「良い企業の良い経営者」と呼ばれるようになって欲しい。

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