- 2025/05/22 掲載
【10分完全攻略】AI規制をわかりやすく解説:日本・EU・主要6ヵ国の“注意点”とは(3/5)
【中国】AI規制の現状:アルゴリズムの種類別の要件も
中国はAIに関する包括的な規制法を制定する予定ですが、現状ではAI産業発展を促進する政策と同時に、既存法令や個別のアルゴリズム規制、AI倫理規制、標準制定などを組み合わせる形でAI規制を行っています。政策として2017年7月に国務院(中央政府)が公表した「新一代人工知能発展規画」によれば、2025年中にAIに関する基本的な法律、倫理枠組みの形成とAIに対する安全評価と管理能力を構築することを目標としています。中国のAI規制の全体像は、下図で示す5つのカテゴリーで構成されています。
AI規制について中国は、2022年1月に「インターネット情報サービスアルゴリズム・レコメンデーション管理規定」、2022年12月に「インターネット情報サービス深度合成アルゴリズム管理規定」を、2023年4月には生成AI向けに「生成AIサービス管理暫行弁法」を相次いで制定しました。
これらのAI規制は、中国向けに上記のAIシステム・サービスを提供する場合に適用されます。主な特徴として、ブログ、ミニブログ、チャットルーム、チャットグループ、パブリックアカウント、ショート動画、ライブなど情報サービス機能を備える場合には届け出をしなければいけません。
届け出にあたっては、AIシステム・サービスの開始10日以内に国家インターネット情報弁公室に対して、プロバイダーの情報、アルゴリズムの紹介、アルゴリズムのリスクアセスメント結果などをWEBフォーム経由で提出します。届け出に関するガイドラインも公開されています。手続きが完了すると当局のWEBで公開され、誰でも閲覧できるようになります。
当局が公表した2022年から2024年の間の届け出済みリストによれば、国内の外資企業を含めてすでに3000件を超えるアルゴリズム、200件を超える生成AIの届け出がありました。届け出る内容についてリスクアセスメントを行う必要があり、アルゴリズムが悪用されるリスク、脆弱性評価、望ましくない情報の拡散を助長するリスク、データないし個人情報漏えいリスク、その他関連法令への適合性評価などが該当します。
中国のAI規制には、共通する一般的なコンプライアンス要件の他に、アルゴリズムの種類別に透明性要件など追加の要件が設けられています。透明性については、使用するアルゴリズムやAIが生成したアウトプットであることを、分かりやすく表示することなどが求められます。
2023年8月に「科技倫理審査弁法(試行)」が施行され、AIの研究開発を含む生物学、医学など科学研究開発を行う大学、企業などの組織に対して、倫理委員会の設立、研究開発活動の設計に倫理的観点をあらかじめ組み込む「エシックス・バイ・デザイン(Ethics by Design)」を求めています。
倫理委員会の組織的・経済的独立性を担保する、倫理委員会メンバーは特定分野の専門家以外に社会倫理学、法学、社会学などから性別、民族などを多様に構成するなどの要件が含まれています。
また、AIなどのハイリスクの科学研究活動については専門家の審査が必要であり、審査状況について毎年報告書を届け出ることなども求められています。
中国におけるAI規制に関する既存法としては、上記以外にも中国データ3法(サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法、個人情報保護法)があり、これらの要件にも注意する必要があります。ペナルティーについては、主に中国データ3法によるため、高額になる可能性があります。 【次ページ】英国・カナダ・ブラジル・韓国におけるAI規制動向まとめ
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