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- 2025/06/10 掲載
アマゾン、ついに敗れる──「生鮮宅配」でウォルマートが“王者交代”を果たせたワケ
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

(後ほど詳しく解説します)
生活インフラに欠かせない生鮮食品宅配
米国の生鮮食品宅配市場は、パンデミック中の巣ごもり需要が終わった現在も伸び続けており、米国人の生活インフラとして定着しつつある。米市場調査企業のeMarketerによれば、2021年には1,344億ドル(約19.6兆円)だった市場規模は、2024年に2,046億ドル(約29.9兆円)に達し、2025年にはさらに2,284億ドル(約33.3兆ドル)まで拡大すると見込まれている(下図の図1)。

なお、eMarketerは「生鮮食品宅配」の定義として、野菜や肉類、乳製品、パン、パスタ、コメ、缶詰、飲料といった食品に加え、パーソナルケア用品や清掃用品、ペット用品といった食品以外の関連商品も含まれており、その点には留意が必要だ。
一方、別の米市場調査企業Brick Meets Clickによる市場定義では、店頭ピックアップ、生鮮食品チェーンの自社配送、外部業者への配送委託を含む形式で集計が行われている。同社の調査によれば、2024年4月の単月売上は85億ドル(約1.2兆円)、2025年4月には98億ドル(約1.4兆円)に達し、100億ドルの大台が目前に迫っている(下図の図2)。

これは、生鮮食品の宅配サービスが米国において日常生活に根付きつつあることを示す重要な指標といえるだろう。
eコマース領域全体では「アマゾンの圧勝」
米国の生鮮食品宅配市場におけるウォルマートとアマゾンの競争を分析する前に、両社のeコマース市場における立ち位置を見てみよう。米市場調査企業Digital Commerce 360のレポートによれば、ウォルマートとアマゾンの両社で、米国の大手eコマース市場の売上の過半を占めている。中でもアマゾンの存在感は際立っており、2024年のAmazon Primeの推定売上は4,475億ドル(約65.3兆円)に上る。
一方、ウォルマートの有料会員サービス「Walmart+」の売上は1,209億ドル(約17.6兆円)と、Amazon Primeの4分の1程度にとどまっており、eコマースにおける“王者”の座は、文句なしにアマゾンが握っている状況だ(下図の図3)。

しかし、ここに来てウォルマートが急速にアマゾンを追い上げている。

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