- 2025/07/19 掲載
20年来の顧客を「しがらみ」と認定、家族が戻ってきた40代男性の「英断」(3/3)
この人と「退職後もつながり続けてください」と言われたら…
では、そもそも「しがらみ」とは何でしょうか?『広辞苑』で調べてみると、こんな定義が出てきます。
水流を塞(せ)きとめるために杭(くい)を打ちならべて、これに竹や木を渡したもの。(『広辞苑 第七版』)
この意味が発展して、「本音をせきとめるもの」や「足を引っ張る人間関係」といった、もともとはなかったネガティブな意味がつくようになりました。
「本音磨き」の考え方で「しがらみ」を定義すると、「義理や恩、利害関係によってあなたの本音をせきとめる人間関係」です。
それでは、「この人はしがらみだ」と仕分けるにはどうすればいいでしょうか?
ちょっと練習してみましょう。
上司でも先輩でも後輩でも、取引先でも顧客でもOKです。具体的なひとりの顔と名前を思い浮かべていただけますか?
思い浮かべた相手から「退職後もつながり続けてください」と言われたとしましょう。
このときにあなたはどんな理由で「よろしくお願いいたします」と答えられるでしょうか?
仮に「お世話になった人だから」といった義理や恩、「この人は仕事をくれるから」といった利害関係「だけ」であれば、「しがらみ」であると考えられます。
もしくは「短期的にはつながりでも長期的にはしがらみになる」と思っていてください。
「あの人はしがらみだ!だって~」と無理に理由を考え出そうとしなくても大丈夫です。「よくわからんな」と思ったら、その人に関しては「無関心」のフォルダに入れても大丈夫です。
それは“「しがらみ」なのか「つながり」なのかわからない”というあなたの本音です。義理や嘘でかき消さないようにしましょう。
20年付き合った顧客との関係を断ち切った理由とその結果
ここで「人間関係の仕分けノート」で「長年のしがらみ」を断ち切った人のエピソードをご紹介します。IT業界一筋で働いてきたOさん(男性・40代後半)は、転職してもずっと付き合い続けている顧客がいました。転職するたびに「新卒時代からお世話になってきた人だから」と、ずっと「つながり」として考えていました。けれど、その心の奥には「休日や夜間にもかかわらず電話をかけてくるのはやめてほしい」という本音を隠していました。
度重なる電話によって家族との時間が中断され、最初は応援していた奥様とお子さんが、2カ月の間家を出て行ってしまったこともあります。
Oさんは正直な方です。顧客にもその事件を伝え「連絡は控えてほしいのです」と意を決して伝えました。
しかし、顧客は真剣に取り合ってくれません。それどころか「大丈夫だよ、君がもっと出世して生活を楽にすれば、君を見る家族の目が変わるって。男は稼いで成功して、家族のために生きるものだ」と説教してきたそうです。
この事件をきっかけに、Oさんは「人間関係の仕分けノート」をつくりはじめました。
そして、新卒時代から数えて約20年経ってようやく“あの人はしがらみだ”と腹を決めることができたのです。
そこからのOさんの行動は早かったです。転職するときに引き継ぎを済ませ、後任者にも顧客の性格を伝える。社長にも「こういう理由だから取引を絶ったほうがいいかもしれない」と根回しする。顧客にも「今後の連絡はすべて後任者にお伝えください」と伝える。新しい連絡先もすべて教えなかったそうです。

顧客からの連絡もすぐになくなりました。
「しがらみ」はあなたの「本当は断ち切りたい」と叫んでいる本音をかき消します。それは「でもお世話になったし」などの頭で考えた利害関係や義理の形をしています。
義理や恩、利害関係が頭に浮かんできたら、もう一度「本当はどう感じている?」と自分に問いかけてください。
その問いかけはあなたの本音を磨き、「この人たちと働き続けてもいいのか」というループを断ち切るハサミになります。転職活動の中で出会う会社を「社風が合いそう・合わなそう」と仕分けられる本音のセンサーにもなってくれます。
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