- 会員限定
- 2025/07/30 掲載
まさか自分が…政府スマホで漏えいした「AI音声なりすまし」が脅威すぎる
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/
米首席補佐官の携帯はどのようにハッキングされたのか
2025年5月下旬、ホワイトハウスを震撼させるサイバー攻撃事件が発覚した。トランプ大統領の首席補佐官(チーフ・オブ・スタッフ)であるスージー・ワイルズ氏の個人用携帯電話が何者かによってハッキングされ、機密性の高い連絡先情報が大量に流出。攻撃者はこの情報を悪用し、政府高官や有力者になりすまして接触を図るという前代未聞の事態に発展した。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ハッカーはアドレス帳にアクセスした上で、AI技術を駆使してワイルズ氏の音声を巧妙に模倣し、本人と見分けがつかないような電話をかけていたという。
ホワイトハウスの広報担当官アンナ・ケリー氏は、TechCrunchの取材に対し、ワイルズ氏の個人端末に関連するクラウドアカウントが侵害されたのか、それとも政府レベルのスパイウェアを使用したより高度なサイバー攻撃の標的になったのかについての明言を避けた。ホワイトハウスは「全スタッフのサイバーセキュリティを非常に重視しており、この件は引き続き調査中である」との声明を発表するにとどまっている。
ワイルズ氏がハッカーの標的となるのは今回が初めてではない。2024年8月には、イラン関連のハッカーがワイルズ氏の個人メールアカウントへの侵入を試みていたことがワシントン・ポスト紙によって報じられた。
当時の報道では侵入の成否は不明とされていたが、ウォール・ストリート・ジャーナルは、情報筋の話として、ハッカーは実際にメールへの侵入に成功し、当時トランプ氏の副大統領候補だったJD・ヴァンス氏に関する機密文書を入手していたと伝えている。
FBI捜査官らは、2024年6月にトランプ陣営の長年の非公式顧問であるロジャー・ストーン氏に送られたスピアフィッシングメールの背後にイランがいると断定。この手口は成功し、ハッカーはストーン氏のメールアカウントを乗っ取り、スピアフィッシングリンクを含むメッセージを他の人物に送信することができたという。
今回の事件は、トランプ政権発足からわずか数か月で発生した一連のサイバーセキュリティ事件の一例にすぎない。実は、ワイルズ氏への直接的な攻撃と時を同じくして、政府関係者が利用していた通信ツール自体にも深刻な脆弱性が発見された。TeleMessageの事例は、個人への標的型攻撃とは別の角度から、政府機関の通信インフラ全体を脅かす構造的な問題を浮き彫りにするものだ。 【次ページ】政府高官らが使用していた通信ツールの脆弱性
情報漏えい対策のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR