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  • 2025/10/20 掲載

なぜ営業秘密漏えい爆増…?IPAが語る「狙われる情報」と「不正が生まれる職場」の特徴

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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2025年8月、情報処理推進機構(IPA)は、「『企業における営業秘密管理に関する実態調査2024』調査実施報告書」を公開しました。本報告書では、日本企業の「情報システム関連部門」「リスクマネジメント関連部門」「サイバーセキュリティ関連部門」「経営企画部門」「経営層」「その他セキュリティやリスクマネジメントに関する業務を実施している部門」のいずれかに所属している人を対象として意識調査を実施しています。今回は、本調査から読み取れる、企業における営業秘密の漏えいの実態や、営業秘密の漏えい防止策の実施状況について考察します。
執筆:アルファコンパス 代表CEO 福本 勲

アルファコンパス 代表CEO 福本 勲

アルファコンパス 代表CEO
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)

 1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。同年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げに携わり、その後、インダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「 DiGiTAL CONVENTiON」の立ち上げ・編集長などをつとめ、2024年に退職。
 2020年にアルファコンパスを設立し、2024年に法人化、企業のデジタル化やマーケティング、プロモーション支援などを行っている。
 主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。2024年6月より現職。

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日本企業の「営業秘密の漏えい防止策」の実態とは?
(Photo/Getty Images)

KADOKAWAもユニクロも…最近の情報流出事件

 昨今、サイバー攻撃や情報流出に関する事例が多く発生しています。

 たとえば、2024年8月にはKADOKAWAが同社ホームページで「6月8日に当社グループの複数のサーバーにアクセスできない障害が発生した事実を受け、早急に社内で分析調査を実施したところ、ニコニコを中心としたサービス群を標的として、当社グループデータセンター内の株式会社ドワンゴ専用ファイルサーバーなどがランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃を受けたものと確認 」され個人情報や企業情報が外部漏洩したことを発表しました。

 また、2025年3月にはファーストリテイリング、ユニクロ、ジーユーが同社ホームページで「管理する情報システムが、第三者による不正アクセスを受け、当該情報システムで取扱う当社取引先従業員、および当社従業員の個人情報の一部が漏えいしたおそれがあることが発覚 」したことを発表しています。

 水産業向けの網メーカーである日東製網は、2024年1月にが同社ホームページで「サーバーが第三者による不正アクセスを受け、ランサムウェア感染被害を受け」「サーバーに保存していた各種業務データ、業務用ソフトウエアが暗号化されアクセス不能な状況となって」 いることを発表し、第3四半期決算発表期限を延期しています。

 このように、昨今、マルウェアによる情報流出事例、ランサムウェアによる復号のために身代金を要求する攻撃などが起きているほか、セキュリティ対策が比較的弱いサプライヤーのシステムを足掛かりに、標的となる企業のシステムを攻撃するような事例や、委託先社員や元社員が情報を不正流出させるような事例も発生しています。

 それでは、どうすれば被件件数を減らすことができるのでしょうか。ここからはIPAの調査データを基に、営業秘密の漏えいの問題を深く見ていきます。

どんな情報が漏れてる…? 営業秘密の漏えいの実態

 過去5年以内の営業秘密の漏えい事例の経験の有無についての調査結果を見ると、「明らかに情報漏えい事例と思われる事象が複数回あった」、「明らかに情報漏えい事例と思われる事象が1度あった」、「おそらく情報漏えいではないかと思われる事象があった」の3項目の合計は35.5%となっています。2020年度調査と比較すると、この合計は、5.2%から35.5%と大幅に増加しています。

 一方、「わからない・認識できていない」の割合は16.5%から9.7%と減少しています。

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過去5年以内の営業秘密の漏えい事例の有無(経年比較)

 漏えいした営業秘密は、具体的にどのようなものだったか、また、流出したそれぞれの営業秘密は所属する組織の事業においてどの程度重要な情報であったかについての調査結果を見ると、漏えいした情報の種類について、流出があった「有」および流出の可能性があった「可能性有」の2項目を合計した割合は、「製造に関するノウハウ、成分表等」が最も高く61.5%となっています。

 次いで「顧客情報」が60.1%、「生産プロセス等の工程」が57.2%となっています。

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漏えいした情報の種類

 漏えいした情報の重要度について、「製造に関するノウハウ、成分表等」では、「非常に重要」は48.9%、「重要」は42.0%で、合計すると90.9%であり、当該情報を重要と捉えている割合は他の種類の情報に比べて最も高くなっています。

 その他の情報についても「非常に重要」と「重要」の割合を足すと80%以上となっています。

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漏えいした情報の重要度

 どのようなことから漏えい事例を認識したかについての調査結果を見ると、最も回答割合が高かったのは「第三者から、貴社の情報が漏えいしているのではないかとの指摘を受けた」と「貴社しか知り得ない情報を他社が使用しているのを偶然発見した」の2項目で、共に33.3%となっています。

 次いで、「漏えいを察知できるような自発的な活動により流出したことが発覚した」が31.7%、「貴社製品の類似品が市場に出回った」が26.8%となっています。

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漏えい事例を認識したきっかけ

営業秘密の漏えい先はどこか?

 営業秘密はどこに漏えいしたか(したと思うか)に関する調査結果はどうか。

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