- 2025/09/15 掲載
「情報戦・世論操作は恐ろしい…」台湾有事描いたドラマ統括Pが語る“戦争のリアル”(2/3)
「超逆風」でどう作品製作を実現させた?
──これほどの逆風の中、どうやって製作を実現させたのですか?特に資金集めは大変だったと思いますが。鄭心媚氏:はい、最初は困難を極めました。しかし、ジャーナリストとしての経験から「赤の浸透(Red Infiltration)」、つまり中国による台湾社会への静かなる侵食をテーマにすることは絶対に必要だと感じていました。そこでまず、実業家の曹興誠(ツァオシンチョン)氏に企画を説明し、支援を取り付けました。その資金でパイロット版(前導片)を制作し、それを持って台湾政府の文化コンテンツ支援制度に申請したのです。
──政府から支援を受けたことについて、一部で「プロパガンダではないか」との批判が台湾で出ているようですね。
鄭心媚氏:台湾の映像業界では、政府の支援を受けるのはごく一般的なプロセスです。政府からの支援がなければ、台湾で大規模な作品を作るのは難しい。重要なのは、私たちがあくまで独立したクリエイターとして、政府の介入を受けることなく、自分たちのメッセージを込めて作品を作ったという点です。むしろ、これほど敏感なテーマであるにもかかわらず、台湾政府が内容に干渉せず、私たちの創作の自由を尊重してくれたことに感謝しています。
髙橋一生を起用したワケ
──台湾での視聴率も好調で、大きな反響を得ているようですね。ドラマでは軍事侵攻のリアルな描写も話題ですが、鄭さんが最も伝えたかったことは何でしょうか。鄭心媚氏:軍事的な衝突そのものよりも、その背後で進んでいる「見えざる戦争」です。つまり、中国による情報戦、世論操作、そして社会の分断です。記者時代、親しい友人から「一部の台湾メディアの編集局は、中国の国務院台湾事務弁公室(国台弁)の指示で動いている」という衝撃的な話を聞きました。報道内容が中国政府の意向で決められているという現実です。台湾社会が、情報の面でいかに深く浸透され、コントロールされているか。その恐ろしさを描きたかったのです。

そして、これらの脅威が台湾だけでなく、日本を含む国際社会にも関連するものなのです。国際的に大きな反響を得たことは驚きでした。昨年はコペンハーゲン民主主義サミットで上映され、今後アメリカの議会でも報告する機会をいただいています。このテーマが、台湾だけの問題ではないことの表れだと感じています。
──日本人俳優の高橋一生さんが出演されています。
鄭心媚氏:最初から国際的にこの問題を伝えたいという思いがあったので、日本の俳優さんに参加していただきたいと考えていました。高橋さんと初めてお会いした時、彼が「俳優はただ演じるだけでなく、社会的な責任を負っている」「世界に平和の重要性を問いかける」とおっしゃったのが非常に印象的でした。また、政治や社会問題に対する彼の深い洞察力にも驚かされました。

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