- 2025/09/26 掲載
イーロン・マスクGrokが「大躍進」のワケ、なぜビジネスパーソンが「使いまくる」のか(2/2)
ChatGPTではできない、Grokの「すごすぎる」機能
ビジネス現場でAIを活用する際、それぞれのツールの特性を理解した使い分けが成功の鍵となる。特にGrokは、その独自機能により特定用途で圧倒的な強みを発揮する。最も際立つのは、リアルタイム情報を扱うタスクだ。Grokの最大の武器は、XとWebから最新データを即座に取得できる点にある。xAIの公式発表によれば、Grokは自動で検索クエリを選択し、Web全体から知識を収集。複数の情報源を比較検討しながら、矛盾を解消して高品質な回答を生成できる。株価動向の追跡、競合他社の動向分析、ソーシャルメディアのトレンド把握など、刻一刻と変化する情報を扱う業務では、この機能が決定的な差となる。
Xとの深い統合も見逃せない。Grokは高度なキーワード検索とセマンティック検索ツールを駆使し、X内の投稿を詳細に分析できる。メディアの閲覧機能も備えており、画像や動画を含む投稿の内容まで理解して回答の質を向上させる。マーケティング担当者にとって、リアルタイムの消費者の声を分析できるこの機能は貴重と言えるだろう。
一方、文書作成や要約ならChatGPTやClaudeに軍配が上がる。OpenAIが発表した大規模調査によれば、ChatGPTユーザーの会話の約4分の3が情報検索や文章作成などの日常業務に関するもの。特に執筆や要約といった生産性用途が最も多いという結果が出ている。
多言語対応とグーグルワークスペース連携を求めるならグーグルのGemini一択だ。Gemini 2.5 Proは100万トークンという巨大なコンテキストウィンドウを持ち、音声・画像・動画・コードを含むマルチモーダル処理能力が強化されている。日本語を含む多言語に対応し、グーグルドキュメントやスプレッドシートのサイドパネルからAI要約やメール作成が可能。すでに10万以上の企業が導入しているという。
実務での使い分けの指針は明確だ。市場の「今」を知りたければGrok、安定した文書作成ならChatGPTかClaude、グーグルツールとの連携作業ならGeminiという具合に、目的に応じて最適なツールを選択することが、AI時代の仕事術の基本となりつつある。
年末登場のGrok5で何が変わるのか?
急成長するGrokだが、解決すべき課題も存在する。最も顕著なのは応答速度の問題だ。Grok 4は毎秒約43トークンの生成速度にとどまり、ChatGPT(GPT-5)の150トークン/秒と比較すると3分の1以下のパフォーマンスとなっている。複雑な問題では8分55秒もの処理時間を要するケースも報告されており、即座の判断が求められるビジネスシーンでは改善が急務だ。

精度面でも課題は残る。画像解析タスクでは「幻覚」と呼ばれる誤認識が発生することがあり、実際のテストでは存在しない違いを指摘する事例も確認された。また、指定した情報源に限定して検索するよう指示しても、関係のない追加ソースを参照してしまうケースが報告されている。
これらの課題に対し、マスク氏は壮大な解決策を打ち出した。「AIコンピュートギガファクトリー」構想だ。今後5年間で5000万基のH100相当GPUを使用するという計画で、現在の20万基のH200 GPUから飛躍的な拡張を目指す。一部ではxAIが独自のAIチップ開発に乗り出す可能性が報じられているほか、マスク氏が将来的に「数十億基」規模まで拡大する可能性を示唆するなど、今後さらに大きな展開が予想される。
次期モデル「Grok 5」の開発にも注目が集まる。2025年9月、マスク氏はXへの投稿で「数週間以内にGrok 5の訓練を開始する」と発表。ARC-AGIテストでGrok 4ベースのモデルが高スコアを獲得したことを受け、「Grok 5でAGI(汎用人工知能)に到達する可能性がある」との見解を示した。また、2025年8月の発言でマスク氏は「Grok 4 heavyは2週間前の時点で、今のGPT-5より賢い」と断言。年末までにGrok 5をリリースし、「圧倒的に優れた」性能を実現すると予告している。
AGIへの道のりは依然として不透明だが、Grokの進化は確実に加速している。ChatGPTはその地位を維持できるのか、またClaudeやGeminiがGrokの進化にどう対抗するのかが注目される。
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