- 2025/10/23 掲載
【単独】元マイクロソフトの澤円氏が断言、AI時代は「やりたい仕事だけやればいい」(3/3)
AI時代にはマネージャーの役割も大きく変わる
組織もまた、AI時代にはこうした個人の意思を引き出す方向へ変わらなければなりません。私はマネージャーを務めていた時期に、意識していたことが2つあります。1つは「情報を正しく伝達すること」、もうひとつは「メンバーを支援し、共感すること」です。組織の情報は往々にして歪んで伝わります。現場の声が経営層に届かず、経営の意図も現場で誤解される。そのねじれを解消し、双方向の流れを作るのがマネージャーの最も重要な仕事だと考えてきました。
さらに私は、部下とのやり取りで「Why ?(なぜできないのか)」は問いませんでした。その代わり「What ?(いま何が起きているのか)」「How can I help you ?(どう支援できるか)」を尋ねていました。叱責や詰問は人を萎縮させますが、支援の姿勢を示すことで、メンバーは安心して状況を共有できます。共感を前提にしたコミュニケーションこそが、組織を動かす力になるのです。
同時に、マネージャーにはビジョンを示す役割があります。個別最適化が進む時代に、現場の作業だけでは全体像を見失いがちです。だからこそマネージャーは「何のためにこの仕事をするのか」という抽象的な方向性を言語化し、共有しなければなりません。明確なビジョンがあるからこそ、メンバーは意思を持って仕事に取り組めます。
また、働く環境の整備も見逃せません。オフィスにいる時間は長くても、集中力を保てるのはせいぜい数時間です。だからこそ環境設計が重要になります。余計な雑務を減らし、集中できる時間を最大化する。オフィスの目的を「長くいる場所」から「最も高い生産性を発揮できる場所」へと再定義することが大事です。
AIやデジタルツールが進化しても、最後に人を動かすのは「共感」と「ビジョン」です。マネージャーが支援と方向性を提示できれば、メンバーは意思を持って成長し、組織はAI時代にふさわしい進化を遂げることができるのです。
AIにできなくて「人にしかできない仕事」とは
改めて、「AIが人の仕事を奪うのではない」と私は考えます。AIは人の仕事を次のレベルに引き上げる役割を果たすのです。たとえば、資料作成やアイデア発想といった作業は、AIの支援によって短時間で高い品質を実現できるようになりました。こうした環境の中で、人間が担うのは「どんなビジョンを掲げるか」を決めることです。そして、そのビジョンを実現するために他者とどう協働するかを考えることです。AIは膨大な作業を肩代わりしてくれますが、何を目指すのかという意思を持つのは人間にしかできません。
私は、これからの時代には主観とデータドリブンの両立がますます重要になると考えています。データを根拠に意思決定することは不可欠ですが、最後の選択には「自分はどうしたいのか」という主観が伴わなければなりません。その両者をバランスさせることが、AI時代のリーダーやビジネスパーソンに求められる資質だと思います。
AIは敵ではなく、意思を実現するパートナーなのです。自分や組織がどんなビジョンを描くのか──、その意思を明確にした人にこそ新しい仕事は集まります。AIはその未来を支える強力な味方になるのです。
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