- 2025/11/07 掲載
「AI PCは不要」と言う人が知らない“真実”、インテルと日本HPが解説するNPUの可能性
ガートナーが予測、「AI PCが標準」になる日
「AI PC」という言葉を耳にする機会が増えている。その一方で、実態については「従来の高性能PCと何が違うのか」「わざわざ新しく買い替える必要があるのか」といった声も少なくない。実際、生成AIを使うだけであれば、ChatGPTなどのクラウドサービスにアクセスすれば済むからだ。インテル 技術・営業統括本部の飯塚弘志氏は、この前提について以下のように指摘する。
「クラウドベースのAIサービスは便利ですが、裏側では莫大なGPUリソースと電力コストを要し、その負担は最終的にユーザーに跳ね返ってきます。一方で、ローカルの端末でAIを処理できれば、その分コストを抑えることができるはずです。さらにローカルで処理するため、ネットを使わずパフォーマンスに優れ、会社の機密情報をネットにアップロードすることなく安全に利用できるメリットがあります」(飯塚氏)
つまり、AI処理専用のチップ(NPU:ニューラル・プロセッシング・ユニット)を搭載することで、従来のクラウドに依存したAI利用とは異なる体験を可能にする。遅延の少なさやオフライン環境での利用、セキュリティの強化など、クラウドの課題をローカルで補うわけだ。
さらに、2025年10月のWindows 10のサポート終了に伴い、Windows 11対応PCへの入れ替えが進んでいる状況も、AI PC普及を後押ししている。
なお、AI PCは「高価なハイエンドモデルに限定された一部の製品」ではない。すでに中位機種やエントリーモデルにも広がり始めている。ガートナーの予測によれば、2025年末にはAI PCの出荷が世界全体の31%を占め、2029年にはAI PCが「標準」になるという。
NPUにはどんな意味があるのか
AI PCの核心にあるのは、インテルでは「Core Ultra」プロセッサーなどに搭載したNPUである。CPUやGPUと異なり、AI処理に特化した専用回路を備えることで、消費電力を抑えつつ常時AIを動作させることが可能になる。これにより、モバイルPCでも安定的にAI機能を利用できるようになる点が従来との違いだ。前出の飯塚氏は次のように説明する。
「GPUは並列計算が得意でAI処理に強い一方、電力効率が悪いという弱点がありました。そこで開発されたのがNPUです。ビデオ会議の背景処理や翻訳のように、軽量だが常時必要となるAIタスクを効率的に処理できるのです」(飯塚氏)
また、インテルは単にハードウェアを提供するだけでなく、ソフトウェアの最適化を重視している点も見逃せない。飯塚氏は「インテルは250社以上のソフトウェアベンダーと連携し、500以上のアプリケーションがAI PC向けに最適化されています。今ではNPUファーストで開発が進められており、来年以降はさらに広がるでしょう」とアピールする。
このエコシステムの広がりは、実際の業務効率の向上に直結する。たとえばTeamsやZoomといったオンライン会議アプリはすでにAI処理を取り込み、背景のぼかしやノイズ除去といった機能をローカルで実行可能にしている。
従来はクラウドやGPUに依存していた処理が、NPUでオフロードされることで、バッテリーの持ちや応答速度が格段に改善するという。
「今後4年、5年の利用期間を考えれば、AI機能はあらゆるアプリに標準的に組み込まれていくでしょう」(飯塚氏) 【次ページ】Windows 11の買い替え需要の〇〇%がAI PC
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