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  • 2022/11/02 掲載

「コロナ特需終焉」でPC市場が大減速、世界と違う日本特有の「2つの予測外要因」とは

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米ウォール・ストリート・ジャーナルが10月17日に「売れなくなったPC、コロナ特需に終焉」と報じ、パソコン(PC)市場が減速する兆しが見えていることを伝えた。コロナ特需から一転、企業、政府、消費者によるPC購入が激減しており、25日に発表したマイクロソフトやHPの決算もそれを裏付ける結果となった。一方で、日本では政府による取り組み「リスキリング」や経済構造の転換など特有の事情もある。2023年を見据えた日本のPC市場について展望する。

執筆:友永 慎哉

執筆:友永 慎哉

製造業向け基幹系システムの開発を経験後、企業ITの編集、ライター業に従事。ファイナンス、サプライチェーンなど、企業経営の知識を軸にした執筆に強みを持つ。インダストリー4.0など新たな技術による製造業の世界的な変革や、Systems of Records(SoR)からSystems of Engagement(SoE)への移行、情報システムのクラウドシフトなどに注目する。GAFAなど巨大IT企業が金融、流通小売り、サービスといった既存の枠組みを塗り替えるなど、テクノロジーが主導する産業の変化について情報を収集・発信している。

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世界のPC市場は大幅に減速する可能性が高いが、日本はどうか
(Photo/Getty Images)

マイクロソフトのPC販売不振、IDCによる不振の予測

 米マイクロソフトが10月25日に発表した7-9月期(第1四半期)決算は、売上高の伸びが鈍り、減益となった。クラウド基盤であるAzureを含むクラウド関連の売上高は35%伸びたが、PC販売の急な落ち込みによってWindowsへの需要が縮小、利益を圧縮した。

 また、米HPの5-7月(第3四半期)の決算では売上高が市場予想を下回り、特にコンピューター部門の消費者向け事業は2割減収している。

 IDCが10月10日に発表した2022年第3四半期の全世界のPC出荷台数に関する調査結果の速報値によると、全世界でのPC出荷台数は前年同期比で15%減少した。メーカー別に見ると、台数ベースのシェアは1位から順にレノボ、HP、デルだが、それぞれ16.1%減、27.8%減、21.2%減と出荷台数を大きく減らしている。

 こうしたPC市場減速の影響を受け、半導体メーカーのインテルが数千人を削減する計画があるとブルームバーグなどが報じた。

PC減速の予測が日本で外れるケースとは

 このように、PCメーカーや半導体部品メーカーが、数字の裏付けを持ってPC市場の減速に備える状況になっている。調査会社ガートナーは、足元のパソコン販売低迷はここ20年余りで最悪と述べているとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘。2023年について、IDCは法人需要の減少により、さらにPC市場全体の減速を予想しているという。

 ただし、予測はあくまでも予測であり、外れる可能性があることを念頭に置く必要がある。特に、日本市場に限った場合にはいくつかの特殊事情があるからだ。外れる場合のいくつかの要因を見てみよう。

リスキリングへの投資拡大

 岸田文雄内閣は、経済対策の切り札の1つとして「リスキリング」の推進を掲げている。スキルを再びという意のRe-Skillingなので、リスキリングは、新たな環境に対応するための学び直しだと言える。政府は6月7日に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を閣議決定後、10月4日には新しい資本主義実現会議(第10回)を実施した。

 この中で柱の1つとして強調されたのが、『労働者に転職の機会を与える企業間・産業間の労働移動の円滑化』である。人材を成長分野に移動させるために、リスキリングを進めるとしている。

 特に、現在3年間、4,000億円規模で実施している「人への投資強化策」について、個人のリスキリングに対する投資策として5年間で1兆円の施策パッケージに拡充すること、デジタル人材育成を強化し、現在100万人のところ2026年度までに330万人に拡大するとした点に注目が集まっている。

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リスキリングにPCは欠かせない
(Photo/Getty Images)

 1兆円の使い途の中心となるのが人材開発であり、企業が教育訓練によってデジタルトランスフォーメーション(DX)への筋道を描くことを想定しているのは間違いない。この中で、非IT企業へのリスキリングなどはもちろん、業種を問わず新たなビジネス要件に対応するために、PCが追加的に必要になることが予測できる。

 企業が従業員に実施する訓練経費を助成する制度で、オンライン研修(eラーニング)も支援対象になっていることや、休暇中の労働者の賃金助成について「1企業最大2名」としていた人数制限を撤廃し、1企業当たりの助成上限を年間1,500万円にするといった運用方針も、新たなPC購入の理由になる。

 リスキリング特需が発生し、PC市場を押し上げるというシナリオが1つある。

【次ページ】もう1つのリスキリングは「Risk-Killing」

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