• 2025/11/12 掲載

【保存版】パナソニック流「生成AI活用術」、担当者が明かす「月18万時間削減」の秘訣(2/2)

連載:マスクド・アナライズの生成AI最前線

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グループ全体で「なんと約○○万時間」削減

──導入後における生成AIの利用状況についてはいかがでしょう。

橋川氏:PX-AIでは、LLMとしてOpenAIのGPTに加えて、グーグルのGeminiやアンソロピックのClaudeも利用できます。一方、画像やファイルの入力に対応していますが、出力には制限もかけています。その代わり、「PX-AI」に加えてMicrosoft 365のCopilotも提供しており、利用場面や目的で使い分けてもらっています。

 従業員全体のうち2~3割は定期的に利用しており、2~3割が何度か試したものの継続的な利用には至らず、残りは利用に対して消極的という状況です。この利用動向が判明したので、今は情報共有のためのコミュニティを運営するなど、利用頻度の低い層や消極的な層に対して使ってもらう方法や、使い方に悩む人へのフォローに取り組んでいます。

井上氏:なお利用用途としては、文書作成が4割、情報調査が3割、プログラミングが2割、ブレインストーミングのアイデア出しが1割となっています。文書作成のような基本的な使い方が中心で、プロンプトの書き方に悩んだりするような、変わった用途には抵抗があるのかもしれません。

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文書作成系で最も使われ、全体で月18万時間の効果を創出
(出典:パナソニック オペレーショナルエクセレンス)

──PX-AIによってどれだけの効果を得られたのでしょうか。

井上氏:PX-AIにおける業務効率化については、直近では1人当たり1カ月で平均5.3時間(注) の削減となりました。グループ全体で見ると月で約18万時間の削減となり、一定の成果を得られています。効率化に関する集計は毎月行っており、削減時間は伸び続けています。

注) 社内で蓄積された利用データ(利用者からの回答による時間削減効果数値)をもとに算出。

社員向けに「プロンプト集」

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パナソニックはあらゆる利用シーンを想定してプロンプト集を用意している
(出典:パナソニック オペレーショナルエクセレンス)
──利用者へのフォローとしてはどのようなことをされていますか。

橋川氏:我々は現在、プロンプトの入力補助に注力しています。生成AIの種類や利用できる機能を増やすだけでなく、利用しやすいことも重要だからです。生成AI導入直後から一般的なプロンプトの例を提供しており、誰でも閲覧できるポータルサイトにまとめています。

 利用者から「生成AIをどう使えばいいのか?」という質問があり、プロンプトの概念を解説しながら入力方法をまとめたプロンプト集を作ったこともあります。現在ではPX-AIの画面からサンプルのプロンプトを簡単にコピー&ペーストできるようにするなど、誰にでも使いやすくしています。すでに社内でおすすめプロンプトを共有しており、使い勝手をより良くするような展開を進めております。

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プロンプト事例:Excel関数を生成してもらう場合
(出典:パナソニック オペレーショナルエクセレンス)

井上氏:利用者間の情報共有も進んでおり、たとえば資料作成におけるスライドの構成を考えてほしい時に、他の人が参考にできるプロンプトを自発的に共有してくれています。利用者が自発的に情報共有することで他の利用者が参考にして、新たな効率化につながるという良いサイクルができあがっています。

要望多数の「生成AI研修」にどう対応?

──現場からの要望にはどのようなことがありますか?

橋川氏:研修やトレーニングの要望が多いのですが、生成AI推進担当のメンバーは我々を含めて4人なので対応に限界があり、もどかしい状況です。そこですでに用意した資料や動画を見てもらい、各事業会社や部門ごとに自主的にトレーニングしてもらっています。

 ありがたいことに各現場で個別に教材を製作してくれる場合もあり、そのクオリティには我々も「これはすごい」と実感しています。それでも不安のある人はいるので、我々もコラムのような読み物で生成AIを解説したり、初心者向けの動画を制作するなど、触ってもらえる最初の一歩を意識したコンテンツを提供しています。


 一方で、生成AIの利用に不安を感じる声もあります。こうした不安はインターネットやメールが登場したころも、同じだったと思います。そこで繰り返し要望するよりも、自然と使ってくれる流れをつくったり、周りが使っているから自分も使ってみようというアプローチを目指しています。

──工場の現場からは生成AIに対する要望はありますか?

橋川氏:工場からの要望も非常に強く、たとえば設計業務において保有する大量の設計データを活用したいなどの依頼があります。しかし我々が提供できるソリューションでは難しい場合もあり、データ基盤の整備も含めた貢献が我々に求められていると思います。

井上氏:たとえば工場の生産ラインに関連するシステムは長年稼働しているものも多く、古い環境でしか動作しないものもあります。そのため新しい環境に対応したプログラムで書き換える場合に、生成AIを利用する取り組みがあります。一方で工場では高い安全性と品質が要求されます。生成AIがこれからどんな用途で活用できるかは、現場と一緒に考えていかなければいけません。その点は引き続き重要な課題として認識しています。

──ありがとうございました。後編では、成功の秘訣を中心にさらに深堀してお聞きしたいと思います。

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