- 2026/04/27 掲載
真面目な企業ほど「AI導入」でつまずく理由、ベイン日本代表が明かす“失敗の構造”(2/3)
AIがもたらした「競争ルールの残酷な変化」とは?
マイケルズ氏が見ているのは、AI活用の成否というより、その前提にある競争ルールの変化だ。かつて多くの経営者は、資本、人材、売上、流通網といった「スケール」こそが競争優位の源泉だと教えられてきた。もちろん今でも規模は重要だ。だが、それだけでは守れない時代に入っている。「かつてほとんどの経営者は、資本金であれ売上であれ人材であれ流通力であれ、とにかくスケールが最も重要な優位性だと叩き込まれてきた。もちろん今もスケールは重要だが、スピードがはるかに重要になってきた。ここが非常に大きなシフトであり、特にアジャイル経営に慣れていない日本企業にとっての大きな課題だ」(マイケルズ氏)
AIは、このシフトを一気に加速させた。以前なら大組織でなければできなかった開発や業務改善が、少人数でも可能になりつつある。つまり、規模を持つ大企業だけが有利という時代ではなくなってきたのだ。
「もう100人のプログラマーにコーディングさせなければ大規模な開発は無理だという時代ではない。5人とAIエージェントがいればできるかもしれない」(マイケルズ氏)
これは単なる効率化の話ではない。競争の参入障壁そのものが崩れつつあるということだ。従来なら市場に入れなかったプレイヤーが、新しい技術を武器に参入できる。規模を持つ企業ほど、これまでの優位が想像以上の速さで削られるリスクにさらされる。
特に大規模な日本企業にとって厳しいのは、スケールを支えてきた“丁寧さ”や“慎重さ”が、AI時代には初動の遅さにつながりやすいことだ。意思決定に時間がかかり、合意形成に手間をかけ、完成度を高めてから動く。その間に、市場では別の企業が先に学習曲線を駆け上がっていく。AI時代は、正しく遅い企業より、粗くても速く学ぶ企業の方が競争上優位に立ちやすい。ここに、日本企業が直視すべき現実がある。
“レポートを出すだけ”は消滅、AI時代のコンサルの価値とは
AIの進化は、製造業や金融業だけでなく、コンサルティング業界にも大きな影響を与えている。情報収集、論点整理、フレームワーク化、レポート作成といった仕事は、AIによって急速に効率化されている。では、コンサルティングの価値はどこに残るのか。マイケルズ氏の答えは明確だ。「ここまでのところを見ている限り、AIのおかげで私たちのビジネスはむしろ加速している。今までよりも成長を生み出している」(マイケルズ氏)
一見すると逆説的だが、理由ははっきりしている。コンサルティングの本質は、レポートを作ることではないからだ。
(2)何に集中し、何をやめるかという痛みを伴う意思決定を支援すること。
(3)組織が実際に変わるところまで伴走すること。
この3つが価値の中心にある限り、AIがレポートを作れるようになっても、コンサルの役割が消えるわけではない。むしろ“レポートを出すだけ”の仕事ほど危うくなる。
「戦略は、組織が変わって初めて生きる。そして組織は人で成り立っているから、人が変わって初めて組織が変わる。ベイン・アンド・カンパニーの根本方針は、“レポートではなく結果を出す”ということだ」(マイケルズ氏)
この発言は、企業のAI活用にもそのまま当てはまる。資料や分析の質が上がることと、企業が変わることは別物だ。AIの導入で本当に難しいのは、情報を作ることではない。何を優先し、誰が変わり、どの業務を再設計し、組織の行動をどう変えるかである。AI時代に価値を持つのは、アウトプットの量ではなく、変革を前に進める力なのだ。 【次ページ】なぜ2万人が2万7000アプリを作成、ベインのAI変革とは
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