- 2026/04/27 掲載
真面目な企業ほど「AI導入」でつまずく理由、ベイン日本代表が明かす“失敗の構造”(3/3)
なぜ2万人が2万7000アプリを作成、ベインのAI変革とは
では、AIを経営課題として正しく捉えた企業は、実際にどう動いているのか。マイケルズ氏は、AI変革を高いROIにつなげるために不可欠な条件として3つを挙げる。(2)規律ある優先順位づけ:社員が自由にAIを使うだけでは企業価値にはつながらない。
(3)制度としてのケイパビリティ構築:PoCで終わらせず、組織の恒久的な能力として根づかせることが必要だ。
「何千人もの社員がGPTで遊ぶのは楽しい。しかしCEOとして企業価値を上げなければならないなら、自社にとって最も重要な3つ程度のドメインやワークフローに絞り込み、そこでAIを使ってどう変えるかを考えることが必要だ。これはCEOの仕事であって、ITの問題ではない」(マイケルズ氏)
ベイン自身も、この考え方を自社で実践している。先月時点で、約2万人の社員が2万7,000ものカスタムGPTを構築していたという。だが重要なのは、その数ではない。中央集権化されたAI推進チームが、現場から生まれた膨大なアイデアを棚卸しし、企業にとって最も価値の大きい領域にリソースを集中配分している点にある。PoCからMVPへ、さらに全社展開へとつなげる設計があるからこそ、ボトムアップの創造性が企業価値に変わる。
つまり、AI変革の本質は「自由にやらせること」でも「中央が全部決めること」でもない。現場の創造性と、経営の集中投資。この両輪がかみ合ったとき、AIは初めて組織を変える力になるのである。
なぜ日本企業は初動が遅い? 強みが弱みに反転する「完璧主義の罠」
マイケルズ氏は、堅牢なオペレーション、高い品質基準、丁寧なコンセンサス形成、慎重なリスク管理、方向性が定まった後の規律ある実行力など、日本企業の強みを高く評価している。だが、その強みがAI時代にはそのまま弱みに反転しうると指摘する。「日本企業にとってのメインの課題はスピードだ。そして完璧主義だ」(マイケルズ氏)
この指摘は痛烈だが、本質を突いている。多くの伝統的な日本企業はPoCを1つ作るにも、構造化し、正確で完全な形にし、複数部門のインプットを揃え、足並みを合わせようとする。それ自体は美徳であり、誠実さでもある。だが、その間に競合は何十個、何百個と試している。問題は能力ではない。日本の現場は優秀だ。問題は、速く試し、速く学び、速く絞り込む前提でオペレーティングモデルが作られていないことにある。
しかも厄介なのは、この遅さが「真面目さ」や「丁寧さ」という善意の形をして現れることだ。だから内部では問題と認識されにくい。しかし市場は待ってくれない。AI時代には、初動の遅さそのものが競争劣位になる。
もちろん、解決策は無秩序に走ることではない。マイケルズ氏が求めているのは、フラットでアジャイルな文化と、トップダウンの戦略的フォーカスの両立だ。全部を現場任せにするのでも、中央集権で何もかも止めるのでもない。まず速く試し、価値がある領域に絞り込み、その後で品質と規律を乗せる。日本企業に必要なのは、強みを捨てることではなく、強みを発揮する順番を変えることである。
前編で見てきたのは、AI時代に日本企業がつまずく構造だ。だが、話はここで終わらない。後編では、日本企業がそれでも勝てる領域はどこにあるのか、そして経営者は明日から何を変えるべきなのかを見ていく。
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