- 2026/04/24 掲載
中国「5カ年計画」は“現実軽視”か…「ハイテク巨額投資」がもたらす過剰競争の連鎖(2/2)
デフレなのに投資拡大…政策の“逆行”の行く末は
さらに重要なのは、現在の中国経済のマクロ環境である。習近平政権は重大な政策判断の誤りを犯している可能性がある。経済学の基本に立ち返れば、持続的な成長の前提は需要と供給のバランスにある。需給ギャップが拡大すれば、企業は投資を控え、経済全体は停滞する。この点は日本の「失われた30年」が示すとおりであり、典型的なデフレ経済の特徴である。
中国では、2020~2022年のコロナ禍を契機として不動産バブルが崩壊し、同時に都市封鎖の影響で数多くの中小企業が淘汰された。政策当局はコロナ収束後にV字回復を期待していたが、実際には経済は低迷したまま推移し、いわゆるL字型の成長パターンに陥っている。
加えて、人口動態の変化も需要を抑制する要因となっている。生産年齢人口および総人口の減少により、かつて中国経済を支えた人口ボーナスは、いまや人口オーナス(負担)へと転じつつあり有効需要が弱体化している。
本来であれば、こうした局面では需要の回復を最優先すべきである。しかし中国では逆に、ハイテク分野への投資拡大が政策の中心に据えられている。
とりわけAIや人型ロボット、スマートファクトリーの導入は、生産性向上と引き換えに雇用を圧迫する可能性がある。さらに政府補助金は投資を過度に刺激し、過剰設備と過剰競争を助長するリスクも高い。
一方で、対外環境も厳しさを増している。いわゆるトランプ関税政策の影響により、多国籍企業は中国に依存していたサプライチェーンの再編を進めており、生産拠点の一部は他の新興国へと移転している。その結果、中国国内では雇用機会が減少しつつある。
加えて、毎年1200万人を超える大学・大学院卒業生が労働市場に流入しているが、十分な雇用を吸収できていない。2025年末時点では、配達員などを含む非正規雇用者が約2億8000万人に達しているとされる。これらの労働者の多くは年金制度への加入が不十分であり、急速な高齢化と相まって社会保障不安が拡大している。
こうした要因は消費を抑制し、需要不足をさらに深刻化させる。
AI・ロボットはどうなる…ハイテク主導の成長戦略の“限界”
以上を踏まえると、第15次5カ年計画が掲げるハイテク主導の成長戦略は、現実の経済環境との間に大きな乖離(かいり)を抱えていると言わざるを得ない。2026年の成長目標は4.5~5%とされているが、本来の潜在力を考えれば、より高い成長も可能なはずである。しかし政策の優先順位が需要回復ではなく供給拡大に置かれている限り、デフレ圧力は強まり、成長率は一段と低下する可能性がある。
AIや人型ロボットといった先端技術は確かに開発が進んでいるが、それが現時点で経済全体の需要創出や雇用拡大に寄与しているとは言い難い。むしろ、現状ではその効果は限定的であり、政策全体の持続可能性にはなお大きな疑問が残されている。
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