- 2026/05/29 掲載
決算絶好調セールスフォースがなぜ暴落?MSの包囲網とAIエージェント課金の深刻事態
セールスフォースですら「SaaSの死」に直面
好決算に冷水、市場は「実質1桁成長」を見透かしていた
セールスフォースが発表した最新の2027年度第1四半期決算は、売上高が111億3,000万ドル(前年同期比13%増)、Non-GAAP EPSが3.88ドルという、市場コンセンサスを上回る着地となった。ベニオフCEOは「過去最高の売上高、契約、キャッシュフローを達成した」とコメントした。しかし、この好成績に対して株式市場は冷ややかな反応を示しており、ハイテク株がAIブームに沸く中で、同社の株価は年初来で約30%超の大幅な下落となっている。市場が同社を「蚊帳の外」に置いている理由は、決算数値の裏側に潜む実質的な成長力の鈍化にある。
売上高の13%増という数字には、80億ドルで買収したインフォマティカの貢献分(約3億9,900万ドル)が含まれている。この非オーガニックな収益を除外すると、本業の成長率は実質的に1桁台に落ち込んでいる。
加えて、EPSの劇的な上昇は、250億ドル規模の加速型株式買戻し(ASR)による株式数の減少が大きく寄与している。
同社は多額のシニア債を発行してこの自社株買いの資金を調達したが、その利払い負担などにより、営業キャッシュフローの成長は鈍化している。投資家は、高度な財務エンジニアリングによって作られた利益の底上げ効果を見透かしており、インフォマティカの統合シナジーが真の成長軌道をもたらすのかどうかを慎重に見極めようとしている。
AIエージェントがSaaSを「食い殺す」足音
投資家がセールスフォースの将来に抱く最大の恐怖は、生成AIの進化に伴う「人間用ソフトウェアの終焉」である。過去のSaaSビジネスは、企業が雇用する従業員一人ひとりにライセンスを付与するシートベース課金によって利益を拡大してきた。しかし、AIエージェントが営業アシスタントやカスタマーサポートの業務を自律的にこなすようになれば、企業は人間を雇用する必要性が低下し、それに伴ってSaaSのシート数も激減する。いわゆる「SaaSの死」の問題だ。
このシート・キャニバリゼーションの波はすでに現実のものとなっている。Klarna(クラーナ)をはじめとする先進企業は、レガシーなSaaS契約を打ち切り、AIによる業務自動化へと大きく舵を切った。AIエージェントには、人間が操作するためのダッシュボードや使いやすいインターフェースは不要であり、APIを通じて直接データを操作するだけで事足りる。
こうした状況下で、セールスフォースが推進する「Agentic Work Unit(AWU)」という課金指標には強い批判が集まっている。AWUはAIが実行したタスク(プロンプト処理やAPI呼び出しなど)の回数に基づいて課金する仕組みだが、AIがハルシネーション(幻覚)を起こしてむだな推論ループに陥った場合でも、企業は多額の利用料を請求されるリスクがある。
最高財務責任者(CFO)にとって、成果が保証されない「機械のむだな努力」に白紙の小切手を切ることは許容できず、Agentforceの導入をためらわせる大きな要因となっている。 【次ページ】比較データで読み解くAIエージェントの価格競争
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