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- 2026/06/23 掲載
電気代と電車賃の裏にある「利用者が損する」構造、英国に学ぶ“究極の解決策”
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長。現在、イトモス研究所所長。著書に『週刊誌がなくなる日』など。
電気代はなぜ高い? 請求書に潜む「見えない税」の正体
毎月届く電気の請求書を、じっと眺めたことがあるだろうか。請求書の内訳を見ても、なぜこの金額になるのかは書かれていない。鉄道の運賃も同じだ。改札を通るたびに引き落とされる金額が、どういう理屈で決まっているのか、説明できる人はほとんどいない。
しかし、その価格決定のメカニズムを知れば、誰もが「怒り」を覚えるはずである。私たちが払い続けてきた料金の中には、サービスの直接的な対価だけでは説明しにくい制度上の費用回収が含まれていることが分かる。
その代表的な仕組みの1つが「総括原価方式」と呼ばれる価格規制である。仕組みは単純だ。事業者がかかると申告した費用に、設備への報酬を上乗せし、その合計と料金収入が一致するように価格を決める。
もちろん、事業者が申請した費用がそのまま認められるわけではなく、規制当局による査定は入る。だが、いったん「適正な原価」と判断された費用と、設備投資に応じた一定の利潤は、料金を通じて回収される。このため、制度の設計次第では、コスト削減よりも費用の積み上げや設備投資を優先する誘因が生じうる。一見良さそうな仕組みに見えるが、この方式には構造的な弱点がある。
節約するほど「損をする」? 知られざるカラクリ
そう、この仕組みでは、コストを削る意欲が湧きにくいだろうし、会社の競争環境が考慮されているとは言い難い。一般的に、会社は、コストを削れば削るほど利益が増える。ところが総括原価の世界では、効率化の成果がそのまま事業者の利益として残るとは限らない。
また、制度設計によっては、設備を大きくすればするほど、合法的に得られる報酬が膨らみやすい。経営努力でコストを圧縮しても、その成果は次回以降の料金改定で利用者に還元される方向に働きやすく、事業者が長期的に利益として保持しにくい。となれば、経営者が選ぶ道は無駄を削るのではなく、高価な設備を積み上げ、レートベースを膨らませる方法となり得る。
これは単なる筆者の妄想ではない。経済学では半世紀以上前から「アバーチ・ジョンソン効果」として知られた定理である。
理論上、認められる報酬率が実際の資本コストを上回る場合、規制下の企業には、必要以上に資本設備を厚く持とうとする誘因が生じる。日本の電気事業を対象にした実証研究でも、1980年度から1999年度までの9電力会社のデータを用いて、総括原価方式の下でアバーチ・ジョンソン効果が生じていた可能性が検証されており、一定の時期には規制料金の仕組みが資本設備を厚く持つ方向に働いていた可能性がある。
【次ページ】自由化も残る「料金制度」の正体
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