- 2026/09/05 06:40 掲載
津田沼PARCO跡地が「広場」に、なぜすぐ再開発しない? 駅前一等地の新戦略とは(2/2)
津田沼だけじゃない、再開発まで「遊ばせない」発想
興味深いのは、JR津田沼駅の反対側でも「待つ間を使う」計画が動いていることだ。南口の旧モリシア津田沼では、野村不動産が再開発を一時中断しているが、習志野市によると、2028年秋ごろからおおむね10年間、旧モリシアの営業を部分的に再開する方針が2026年3月に示された。北口では更地を広場などに使い、南口では閉館した建物を再び使う。手法は違うが、資産を長期間眠らせない点では共通している。東京・中野でも似た発想が見える。中野区は2026年7月、中野サンプラザの土地・建物の暫定活用の一環として、東映アニメーションと連携した壁面広告事業を始めた。南側広場や北側用地もすでに暫定利用されており、北側用地の貸し付けでは歳入を確保し、除却までの維持管理費負担を軽くする考えも示されている。
さらに象徴的なのが東京・五反田のTOCビルだ。テーオーシーは建て替えのため2024年3月末にいったん閉館したものの、建築費高騰とビル賃貸市況を踏まえて計画を見直した。その結果、現在のTOCビルの賃貸・催事事業を同年9月ごろから再開するとし、新たな着工時期は2033年ごろを想定すると発表した。
更地を広場にする津田沼PARCO跡地、建物を部分的に復活させる旧モリシア、壁面や広場を使う中野サンプラザ、一度閉めた既存ビルを再び使う五反田TOC。方法こそ違うものの、「本開発まで何もしない」という選択を避ける点では共通する。再開発の途中に生じる数年単位の空白期間が、1つの経営課題になり始めているのである。
「すぐ建てる」が正解? 再開発を変える建築費
その背景を考える上で無視できないのが、建築費の高止まりだ。建設物価調査会によると、東京の工事原価指数は2015年平均を100として、2026年7月に鉄筋コンクリート造の集合住宅が146.5、鉄骨造の事務所が145.3となった。前月比でもそれぞれ0.6%、1.0%上昇している。FinTech Journalでも、中野サンプラザの再開発計画を例に、急激な建築コストの上昇が不動産開発に与える影響を取り上げている。土地が一等地だからといって、「閉める、壊す、すぐ建てる」という計算が常に成立する時代ではなくなっている。
大型再開発に時間がかかるほど「待っている間」をどう使うかの重要性は増す。ATOCHIでは時間貸し駐車場を設ける一方、広場やイベントによる賑わい創出も狙う。将来計画でも「広場」「回遊性」「賑わい」は主要テーマである。暫定利用と本開発は、完全に切り離された話ではないとも読める。
駅前一等地なら、すぐ最大規模の建物を建てればいい──。建築費が高止まりし、都市計画や事業計画も長期化する中、その常識は揺らいでいる。津田沼で始まるATOCHIが映しているのは、完成後の建物だけではない。完成するまでの数年間さえ「資産」として使い切ろうとする、新しい再開発の「時間戦略」なのである。
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