- 2026/10/27 06:10 掲載
「人間5人+AI社員62体」が働く衝撃の組織…その全貌と“構築の裏側”を大公開(2/4)
【設計】なぜ62体でも混乱しない?AI社員を管理する方法
62体を管理できている最大の理由は、全員が同じ書式の「社員票」を持っていることです。項目は6つ。「AI社員の「社員票」を書かせる」のテンプレそのものです。| 項目 | 何を書くか | 「オーくん」の例 |
| 役割(job) | 名詞で終える一言 | なんでも相談窓口 |
| 肩書(title) | 「◯◯社員」 | 相談社員 |
| 呼び名(nick) | 2~5文字 | オーくん |
| 仕事の説明(desc) | 何を見て、何を作り、誰に渡すか | 社内チャットに常駐し、質問に答え、資料を探し、頼まれた作業を実行します。過去の社内ログ160万件以上を横断検索できる、聞けばだいたい知っている窓口です |
| 実例(ex) | 実際の投稿・成果物の見本 | 「経費精算のルールどこだっけ?」にも数十秒で答えが返ってくる |
| 勤務条件(chips) | いつ動くか | 24時間常駐、Slack勤務 |
■「呼び名」を付けると指示が短くなる
研修先でこの話をすると、「呼び名なんて遊びでしょう」と言われることがあります。筆者も最初はそう思っていました。ところが実際に付けてみると、人間側の行動が変わります。
呼び名がある今の指示: 「見張り係、48時間超え出して」
これが、かなり効きます。指示が短くなるだけでなく、「あの社員に頼む仕事かどうか」を人間が瞬時に判断できるようになる。社員票の「呼び名」は、人間側の負担を下げる項目なのです。
■「実例」を書くと出来上がりがぶれない
もう1つ効くのが「実例」です。「議事録を要約する社員」と書くより、実際の投稿の見本を1つ社員票に貼っておく方が、出力の形が固定されます。AIへの指示で「例を1つ見せる」のが有効なのは皆さんご存じだと思いますが、社員票に書いておけば毎回それが自動で効くわけです。
【作り方】サーバ不要でも作れる、AI社員を動かす方法
「62体をどうやって作ったんですか」と聞かれますが、作り方は3種類しかありません。勤務形態で分けると整理しやすいです。| 勤務形態 | 動き方 | 例 | 作り方(今から始めるなら) |
| 常駐チャット型 | 社内チャットに常駐し、呼ばれたら動く | 相談社員、受付係 | Slackの「@Claude」(Claudeアプリを入れてチャンネルに招待するだけ) |
| 定期巡回型 | 決まった時刻・間隔で自分から動く | 朝礼係(毎朝07:30)、夜締め係(毎晩23:00)、会議準備係(5分ごと)、総務社員(60秒ごと) | Claude Codeの「ルーチン」(クラウドで定時実行)。分単位の巡回はDesktopアプリの「定期タスク」 |
| 依頼実行型 | 手順書を持って、頼まれた作業を最後までやる | 記事執筆社員、実装係、スライド係 | Claude Codeのサブエージェント(社員票)+CLAUDE.md(手順書)+フック(関所) |
筆者の会社は62体をサーバ上の自前の定時実行で動かしています。ただ、これから1体目を作る読者に同じ構成は勧めません。2026年9月時点では、上の表の右列にある機能を使えば、サーバを持たずに同じ形が作れます。順に説明します。
■定期巡回型の作り方:Claude Codeの「ルーチン」で朝礼係を作る
「ルーチン」は、Claude Codeに用意された定時実行の仕組みです。プロンプト・対象リポジトリ・接続先(コネクタ)をひとまとめに保存しておくと、アンソロピック側のクラウドで決まった時刻に自動で実行されます。自分のパソコンを閉じていても動くのが、AI社員の「勤務」に向いている理由です。Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使えます(執筆時点で研究プレビュー段階のため、仕様は変わる可能性があります)。
作り方は5手順です。
- Claude Codeを開き、`/schedule` と打つ(ブラウザなら claude.ai/code/routines の「New routine」)
- やりたいことを一言で伝える。例: `/schedule 毎朝7時30分に、朝礼ダイジェストを作って社内チャットの朝礼チャンネルへ投稿`
- Claudeがスケジュール・対象リポジトリ・プロンプトを順に聞いてくるので、プロンプトには「朝礼ダイジェストを書かせる」のテンプレをそのまま貼る
- 接続先(コネクタ)を必要なものだけに絞る。初期状態では接続済みのサービスが全部付くので、朝礼係ならSlackとカレンダーだけ残す
- に「Run now」で1回動かし、結果を人間が全件読む(これが後述の「試運転」です)
ルーチンに入れるプロンプトは、人間が横にいない前提で「自己完結」させる必要があります。「朝礼ダイジェストを書かせる」のテンプレに、次の2行を足してください。
【成功の定義】朝礼チャンネルに1本の投稿が作成され、5項目すべてが埋まっていること。
【失敗時】材料が取れない項目があれば「未取得」と書いて投稿し、投稿できなかった場合は何もせず終了する(再試行や別チャンネルへの投稿はしない)。
知っておくべき制約が3つあります。間隔は最短1時間なので、会議準備係(5分ごと)や総務社員(60秒ごと)のような細かい巡回はルーチンでは作れません。その場合はClaude Desktopアプリの「定期タスク」(自分のパソコン上で動く。1分間隔から設定可。ただしパソコンが起きている必要がある)を使います。次に、1日に実行できる回数には上限があります。62体分をすべてルーチンにするのではなく、朝礼・夜締め・週次点検のような「回数が少なくて価値が高い巡回」から始めてください。最後に、ルーチンは承認なしで自律的に動きます。だからこそ、手順書の「やらないこと」と「止まる条件」を先に書くのです。
■常駐チャット型の作り方:Slackの@Claudeを招待する
相談社員のように「呼ばれたら動く」社員は、SlackにClaudeのアプリを入れるのが最短です。管理者がSlackのアプリ一覧からClaudeを追加し、各自が自分のClaudeアカウントを接続して、使いたいチャンネルに `/invite @Claude` で招待します。
これで、そのチャンネルで `@Claude` と呼びかければ答えが返ってきます。設定の「Code + Chat」モードにすると、質問はチャットとして即答し、作業の依頼はClaude Codeのセッションを立ち上げて実行する、という振り分けを自動でやってくれます。
注意点は、ダイレクトメッセージでは動かず、招待したチャンネルだけで反応すること。逆に言えば、どのチャンネルに招待するかで「誰がAI社員を使えるか」を管理できます。Team・Enterpriseプランでは、組織の共有アカウントとして動く新しい版(Claude Tag)への移行が進んでいますが、やることは同じです。
筆者の会社の相談社員「オーくん」は、社内ログ160万件以上の横断検索など独自の機能を足した自前の社員ですが、最初の1体は`@Claude`で十分です。
■依頼実行型の作り方:社員票はサブエージェント、手順書はCLAUDE.md、関所はフック
依頼実行型は、Claude Codeの3つの機能に社員票・手順書・関所がそのまま対応します。ここが分かると、62体の組織図は「Claude Codeの設定ファイルの束」に見えてきます。
| 記事で使ってきた言葉 | Claude Codeでの実体 | 置き場所 |
| 社員票(1体の定義) | サブエージェント | プロジェクト直下 `.claude/agents/` に1体1ファイル |
| 手順書(全社員共通のルール) | CLAUDE.md | プロジェクト直下 |
| 関所(送信・公開前の検査) | フック | 設定ファイル `settings.json` の hooks |
| 室長(部下を呼んで結果をまとめる) | 親エージェント(サブエージェントを呼ぶ側) | 通常のセッション、またはルーチン |
社員票をサブエージェントとして書くと、こうなります。「AI社員の「社員票」を書かせる」のテンプレの6項目が、そのままファイルの見出しになります。
--- name: chourei-gakari
description: 朝礼係。毎朝、予定・前日の完了報告・監視結果・宿題から朝礼ダイジェストを1本にまとめる社員。朝礼、今日の予定、昨日の成果、と頼まれたら使う
tools: Read, Grep, Bash ---
# 役割: 朝礼ダイジェストの作成
# 肩書: 朝礼社員 / 呼び名: 朝礼係
## 仕事の説明
カレンダー・前日の完了報告・監視結果・期限が近い宿題を集め、1本の投稿にまとめて社内チャットへ届ける。
## 実例
「おはようございます。9/3(水)の朝礼です ・今日の予定: … ・昨日の成果: … ・監視: … ・宿題: … ・今日の最初の一手: …」
## 勤務条件
毎朝07:30/社内チャット勤務
## やらないこと
- 社外へ送信しない
- 材料にない事実を書かない(取れない項目は「未取得」)
## 止まって人間に聞く条件
- 材料が2つ以上取れないとき
## 完了の証拠
- 投稿のURL
親エージェント(室長)は、このファイルを置いておくだけで「朝礼係、今日の分を出して」と呼べるようになります。冒頭の `description` に「いつ使う社員か」を書いておくと、頼まれた仕事に応じてClaudeが自分で適切な社員を選びます。
関所はフックで作ります。フックは「Claudeが特定の操作をする直前・直後に、決めておいた検査を必ず走らせる」仕組みで、検査が失格を返すとその操作は実行されません。AIの判断に任せず機械的に止められるのが要点です。
筆者の会社では「社外へ送信するコマンドは、承認の印がなければ止める」という関所をここに置いています。設定は次のような形です(検査の中身は自社のスクリプトに置き換えてください)。
{
"hooks": {
"PreToolUse": [
{
"matcher": "Bash",
"hooks": [
{ "type": "command", "command": "sh .claude/hooks/sekisho.sh" }
]
}
]
}
}
依頼実行型の社員が実際に出した成果物を2つ挙げます。研修提案書の初稿と、施策の効果判定シートです。どちらも人間は最終確認だけをしています。
■1体増やす4段階
- 社員票を書く(役割・肩書・呼び名・仕事の説明・実例・勤務条件)→ `.claude/agents/` に1ファイル
- 手順書を渡す(やること・やらないこと・止まる条件・完了の証拠)→ CLAUDE.md と社員票の後半
- 試運転(人間が結果を全件見る。最低3日)→ ルーチンの「Run now」、または手動で呼ぶ
- 本番(室長の下に配属。以後は室長の報告だけ見る)→ ルーチンの時刻を有効にする、またはチャンネルに招待する
読者の方には、増やすのは1日1体までを勧めます。筆者の会社は立ち上げ期に一度に何体も足して、問題が起きたときにどれが原因か分からず苦労しました。
手順書を作るときの指示文も載せておきます。
次の社員票を持つAI社員のために、「やらないこと」を10個書き出してください。【次ページ】62体をどう管理? 放置・暴走を防ぐ「3つの仕組み」の全貌
観点は、①社外への送信・公開 ②お金・契約・日付の断定 ③他のAI社員の仕事への割り込み ④個人情報の取り扱い ⑤自分の判断で設定を変えること、の5つです。
各項目は「~しない。代わりに~する」の形で書いてください。
【社員票】(ここに貼る)
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