- 2009/03/25 掲載
【矢林朗氏インタビュー】新しい働き方が模索される時代を生き抜くために(2/2)
日本版フリーエージェント社会は到来するか?
――いまどきの就職活動の現場についてさらに聞きたいのですが、一昨年までは超売り手市場と言われたのが、昨年の金融危機以降、就職市場は崩壊と言われるように、急変しました。そこで就活生たちのメンタリティって大きく変わったのでしょうか?矢林氏■もちろん変わったという見方もできるんですけど、僕はあまり変わっていないと考えています。パイが減っても、就活生がやらなくてはいけないことは変わらない。やる奴はやるし、やらない奴は好景気でもやらない。
むしろ、見落としてはいけない問題は、昨年度であろうが、今年度であろうが、就職率とは関係なく、就職ガイダンスに足を運ぶ学生たちの数が、年々減っているという事実でしょう。就職活動から早々に戦線離脱する学生の数は増えています。
それと、かつてよりも就職せずにフリーターになる学生は減ったと言われますが、僕はそうは思っていません。絶対数が減っているのは、少子化やフリーター世代の上の方が35歳を過ぎて、フリーターにカウントされなくなっているだけでしょう。就職して3年以内に辞める若者とともに、就職しない若者は明らかに増えています。
――なぜ、就職活動を放棄する若者が増えているんでしょうか?
矢林氏■僕は、こうした現状を必ずしもネガティブには捉えていません。僕が本に書いたような新しい働き方をする、つまりNPOで働いたり、就職課に頼らない仕事に従事したりする若者が増えている部分もあるんだと思います。
さらに言うなら、企業へ就職することを放棄する若者が増えているというのは、社会や労働市場が過渡期を迎えているということなんだと考えています。どの業種でも会社がダメになるときって、優秀な人ほどそれを真っ先に感じて他所へ移るんですよね。それと同じように、若者が3年で会社を辞めるっていうのは、いまどきの若者が苦労をしなくなっているということよりもむしろ、僕は若者たちが企業社会そのものの限界に感づき始めていることの証拠だと思ってます。
――過渡期というのは、今とは違う社会に変わっていくということですが、それはどんな社会になるんでしょうか?
矢林氏■アメリカの労働人口の4人に1人が、「フリーエージェント」という働き方を選んでいるということを指摘した『フリーエージェント社会の到来』という本がありますけど、日本の労働市場も将来的にはこういった形に移行せざるを得ないと思います。
専門的な分野の仕事に就く人たちが、1年や2年という短い期間の短期労働者として働く社会です。専門的な分野の仕事の中身は、猛スピードで変化していくため、そこについていくためには、短いスパンでノウハウを習得する必要があるんです。だから勉強しないとすぐに仕事がなくなります。プログラマの世界を例に取るとわかりやすい。3,4年周期でプログラミングの言語のトレンドが変化し、それについていけるかどうかで仕事や収入が変わっていきます。
こうしたフリーエージェント社会についていけない労働者は、やりがいや安定収入が得られない単純労働者として生きなくてはならなくなります。しかも、これまで以上に外国人労働者たちが流入することになるので、まず賃金は上がっていくことはないでしょう。そのかわり、短いスパンで仕事が変わっていく社会なので、個人の努力次第で途中参戦も可能です。
――最後に、これから就活を始める学生たち、そして、いま会社を辞めようかと悩んでいる若い人たちにアドバイスはありますか?
矢林氏■僕自身、学生時代に一所懸命、就職ガイダンスに参加して、自己分析、業界研究、OB訪問といった就活マニュアルに沿った就職活動を経て就職した口なんで、そこから抜け出るということは、とても勇気がいることでした。できることなら、恵まれた場所で安定した生き方をしたいというのは誰でも思うことです。
でも、本の中にも書きましたが、そのレールは近い将来無効化されるのは間違いないでしょう。僕の場合は、そこからいち早く飛び出すことができて本当に良かったと思っています。飛び出してはじめて得ることができた気づきがたくさんあったからです。
僕が何かアドバイスできるなら、今乗っているレールから降りてみようよということです。少しでも早い気づきを得られた人間の方が、新しく到来する社会では有利に働くからです。人間はほんのちょっとの変化で、大きく変われます。そのことを本を通して伝えられればいいなと思ってます。
●矢林朗(やばやし・あきら)
コンサルタント。
外資系商社を経て、現在は研修などを中心とした職業コンサルタントとして活動中。
ブログ:気づきを得るための100冊
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