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  • 2009/06/03

【5分で理解する工事進行基準】いよいよスタートした工事進行基準、その現状は?

2009年4月、いよいよ工事進行基準の適用が開始された。システム開発を請け負うSIer、ソフトウェア開発を受託する開発企業等は、その規模の大小にかかわらず、工事進行基準を適用しなければならなくなった。すでにほとんどの企業が対応を完了している、と書きたいところだが、さまざまな調査データは、まったく逆の現実を示している。そこで、改めて工事進行基準の成立背景を振り返り、未対応企業がいま何をすべきかをまとめてみた。

改めて復習~工事進行基準とは?

 いよいよ工事進行基準の適用が開始された。2009年4月1日以後開始するソフトウェア/システム開発の会計処理には、原則として工事進行基準を適用しなくてはならなくなった(※)。ソフトウェア/システム開発を業務としている企業にとっては、大きな転換点を迎えたことになる。

 従来、ソフトウェア/システム開発を行う企業では、会計基準として「工事完成基準」か「工事進行基準」のいずれかを選択できた。簡単に言えば、「工事完成基準」はソフトウェアやシステムを納品したときに売上を計上する会計方法、「工事進行基準」は開発の進捗状況に合わせて、決算期ごとに複数回にわたって売上を計上する会計方法だ。ところが、これまではほとんどの企業が「工事完成基準」を採用してきた。

 理由はいくつかあるが、最も大きな理由はソフトウェア/システム開発という業務が抱えているさまざまな不明瞭さだ。要件定義や契約内容が不明確なままプロジェクトがスタートし、途中で仕様が変更され、スケジュール変更やコスト超過が発生する、といったケースは珍しくなかった。その結果、プロジェクト終了後でないと正確な売上・コストの算出ができず、「工事完成基準」が採用されてきたというわけである。

 しかし、こうした開発の在り方は、けっして望ましいことではない。仕様変更やコスト超過のしわ寄せが下請けや孫請けの開発会社に及び、いわゆる「3K」や「デスマーチ」と呼ばれる過酷な労働環境を生み出してきたのも、こうした不明瞭さと無縁ではない。

 投資家の視点からも、こうした状況は問題である。たとえば、赤字プロジェクトの場合、途中では赤字がわからず、開発が終了してはじめて巨額な赤字が判明するといったことになる。プロジェクトの収支が最後にならないとわからないのでは、投資判断そのものができない。すでに、アメリカ、ヨーロッパ、中国では工事進行基準が基本となっている。ビジネスと金融が国際化される中、工事進行基準への対応は、世界的な要請でもあるのである。

※: 企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」

プロジェクト管理を含めた全社的な取り組みが必須

 ただし、すべてのケースで工事進行基準が適用されるわけではない。具体的には、以下の3つについて信頼性を持って見積もることができる場合に、工事進行基準を適用しなければならないとされている。

(1)工事収益総額
(2)工事原価総額
(3)決算日における工事進捗度


 逆に言うと、「工事収益総額」「工事原価総額」「工事進捗度」の3つを信頼性を持って見積もることができなければ、従来の工事完成基準でもよいのである。

 しかし、それでは企業のプロジェクト管理体制そのものを疑われることになりかねない。また、今後は工事進行基準での開発を顧客企業から要求されたり、株主から工事進行基準の適用を求められたりすることも考えられる。このため、ほとんどの企業は、工事進行基準への対応を避けては通れないのである。

 そこで問題となるのが、先の3つの条件をどうやってクリアするかだ。たとえば、ソフトウェア/システム開発では、実際の開発に先立って、開発すべき機能をシステムエンジニアが詳細に調べる「要件定義」を行うのが一般的だ。要件定義を行わなければ、実装すべき機能が明確にならないため、原価を正確に見積もることはできない。このため、要件定義と開発実装で契約を分けるなどの処置も必要になるだろう。

 さらに問題なのが、進捗度の見積もりである。ソフトウェア開発では、システムを動かしてはじめて不具合に気づくことが少なくない。その結果、仕様の変更が発生し、それがスケジュールやコストに跳ね返ることは、ごく当たり前に発生する。こうした"手戻り"をあらかじめ予測して進捗管理することは、非常に困難である。また、外部の協力会社を利用している場合、その進捗管理も必要になる。規模が大きくなればなるほど、かかわるスタッフが増えれば増えるほど、プロジェクトの進捗管理が困難になることは、容易に想像できるだろう。

 以上のように、工事進行基準に対応するには、会計部門だけでなく、営業担当者、プロジェクト管理者、システムエンジニア、さらに外部の協力会社も含めた全社的な体制作りが必須になるのである。

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