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  • 2010/01/28 掲載

潜在需要の掘り起こし方:新規案件を獲得する運用管理ケーススタディ(3)(2/2)

トーマツイノベーション 安達 裕哉氏、磯上 直人氏

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どのような仮説を設定すべきか

 さて「Want問題を案件化する」場合、一番難しい部分はどこでしょうか。結論から申し上げると、実は最初の「情報収集」の段階にあります。顧客にぶつける仮説は少なくともある条件を満たしている必要があります。それは「何らかの悩みや問題を解決するもの」であるということです。この具体例を4つご紹介します。

1.費用を削減するもの 現行のシステム運用・保守にかかっている費用を、費目、システム、業務内容、部門などのいくつかの要素ごとに把握し、大きなもの(『High Cost』)から順にコスト削減策を検討していきます。
2.他社の成功事例 システム構築・改修の結果、コストが削減できた、売上が向上したという他社の成功事例を探し、ターゲット顧客にも適用できないかどうかを検討します。
3.他社の先進的な取り組み 「SOA」や「クラウド・コンピューティング」「仮想化」などの先進的な取り組み事例を探します。
4.経営者の要望(目標、ミッションなど) 経営者が中長期経営計画や自社の課題などをメディアで公表している場合は、その実現策・解決策を検討します。

 2.と3.の他社情報の情報収集源としては、「日経コンピュータ」などの業界専門雑誌、「運輸新聞」などの業界専門新聞、「ソフトバンク ビジネス+IT」などのIT関連のWebサイト、ガートナージャパンなどの調査機関のリサーチ結果などがあります。

 そのほか、ITに携わっている方は普段あまり意識しないかもしれませんが、個別企業のホームページ、有価証券報告書、企業パンフレットなども、顧客の「経営に関する方針、計画、課題、そして直近の取り組みなどを把握する上で有用な情報源です。証券アナリストが公表しているレポートや会社四季報なども企業の課題を把握する上で参考になるでしょう。

Must感の醸成のためには

 多くの組織では、提案内容のすべてを実施できる余裕はありません。したがって、何らかの選定方法・基準により、経営の観点から優先順位付けが行われるのが一般的です。

 その際に必要なことが、最後のステップである「効果の定量化」です。『費用便益分析』、『キャッシュフロー分析』など、効果を定量化するためには様々な手法があります。いずれの場合でも、実行に要する初期投資を最終的に回収できることが最低限の条件となります。

 「効果の定量化」のステップでは、ソフトウェア開発やマーケティングなどに要する費用と、売上予測から、利益額や投資の回収期間を算出します。

 人が動く三大エネルギーをご存知ですか。それは、このままではいけないという「危機感」、それをやると気持ちがよいという「快感」、それをやることに意義を感じる「価値観」です。(『最強リーダーのパーフェクト・コーチング―部下のこころに火をつける9つの法則』PHP研究所)

 「効果の定量化」は危機感と快感に、さらにその案件に取り組むことが会社の業績や社会に対する貢献につながるという「価値観」に訴えるのに効果的です。

お小遣いの事例ではどうなる?

 恒例のお小遣いの事例で振り返りましょう。「Must Can’t問題」を洗い出したものの、お姉ちゃんに案件を横取りされてしまった皆さんは、Want問題を掘り起こすことにしました。そこで、お母さんに関して下記の2つの情報を入手しました。

表1 お母さんの1週間(所要時間の大きいトップ5)
NOタスク1週間の所要時間
(時間)
1睡眠56
2仕事40
3おじいさんのお世話22
4料理14
5洗濯9


表2 お母さんの小言集
NO小言
1「あぁ、忙しいったらありゃしない!」
2「さっき、隣の田中さんに会ったら、『あら、太りました?』ですって。失礼しちゃうわ!」
3(テレビでベリーダンスを見て)「いいわね、お母さんもやってみようかしら。」
4「うちにも食器洗い機が欲しいわねぇ。」
5「通勤電車のあの混みよう!何とかして欲しいわ。」

 これらの情報をもとに、皆さんでしたらどのような提案をしますか。





 効果的な提案を行うには、まず『High Cost』(ここでは所要時間)に着目してみましょう。表1を見れば、お母さんの1週間の所要時間のうち、睡眠と仕事以外の残り時間の3割近くを、「おじいさんのお世話」に使っていることが分かります。そのため、皆さんは「おじいさんのお世話」のお手伝いを提案するのが良さそうです。さらにそれを受け入れてもらうために、普段から言っている小言をもとにどのような論理展開をすればよいか考えてみましょう。以下は一例です。

「お母さん、おじいさんのお世話は僕がやろうか」(提案
「そうすると、平日は3時間も自由な時間が取れるよ。」(直接的かつ定量的な効果
「これで前々から興味があったベリーダンスの教室にも通えそうだね。」(間接的な効果
「お母さん、最近成人病の兆候がでていることだし、何か運動した方がいいよ。」(危機感の醸成
「しかも、運動すると頭がすっきりして、仕事の効率も上がるよ。」(快感の醸成

 こうした言葉のうち、お母さんがどこに魅力を感じるかはわかりませんが、断片的な情報(小言)から、かなり網羅的にお母さんの心をとらえる仮説を構築できており、普段から言っている小言が真実であれば、どこかのタイミングでうなづいてくれる可能性が高いと言えるでしょう。これは顧客との対応にも言えることです。何気なく顧客が話す世間話をもとに仮説をたて、それをもとに提案を続ける(つまり検証作業を続ける)ことができれば、Must感(危機感や快感)を醸成していくことができるでしょう。

次回の予告

 さて前回と今回で「課題の設定」は終わりました。課題に対する有効な解決策を策定するためには「課題の解決プロセス」を踏む必要があります。これは、顧客に施策を提案をする段階で説得力を持たせるために欠かせません。次回は課題解決のプロセスについてみていきます。

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