• 2010/03/11 掲載

ノーツマイグレーション~移行の苦労を軽減し、メリットを最大化する方法とは?

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「13年前のノーツユーザーも、現在のノーツユーザーのペインポイントはほとんど同じ。何も変わっていない」と指摘するのは、ノーツ移行に関して13年以上の経験を持つマイクロソフトの澤 円氏である。まだSharePoint Serverの影も形もなかった頃と比較すると、テクノロジーとツールの進歩によって「ずいぶん楽になった」と澤氏は話す。来る3月26日に開催される「ノーツ環境からの脱却 次世代型の情報共有基盤構築セミナー」で講演する同氏に話を聞いた。

問題は情報共有基盤の投資効果、改善効果が見えにくいこと

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マイクロソフト
エンタープライズビジネス担当
シニアマネージャ
澤 円(さわ・まどか)氏
 多くの企業が抱える経営課題の1つに「インフォメーションワーカー、いわゆるホワイトカラーの生産性向上」が挙げられる。これは実現できそうで、なかなか解決できなかった課題だ。インフォメーションワーカーの生産性向上を目指すうえで、コミュニケーションやコラボレーション、あるいはナレッジの共有を支える情報共有基盤が果たす役割は重要性なのだが、現実的にはいくつもの課題がある。この点について、澤氏は次のように説明する。

「いわゆるグループウェアなどのインフォメーションワーカー向けのシステムは、トランザクションを処理するような業務システムと比較して、ROIを算出しにくいところがあります。グループウェア、メッセージング、コラボレーションといった領域は、何をもって効果が出ていると判断するのかが見えづらい。見えないから、投資をする上での妥当性を見出すことも難しいという側面があります。そのため、投資に際して経営者が漠然とした不安を感じたり、投資判断に迷ったりするのです。また、IT部門が運用負荷を軽減するために刷新しよう思っても、稟議書に何を書くべきかで悩んでしまう。ましてエンドユーザーに情報共有のあるべき姿を描いてもらうというのも、ハードルが高過ぎる要求と言えるでしょう。では、どうすればいいか。この問いに対して明確な答を出しにくいのが、まさに情報共有基盤が持っている側面と言えます。」

 また澤氏は、情報共有基盤としての電子メールの重要性について指摘する。「さまざまなアンケート調査の結果を見ると、情報共有基盤の中で最も利用されているのは電子メールです。意思決定する際に最も見ているのもメールであり、多くの人がメールを読んでアクションを起こしています。メールを読んで共有ファイルにアクセスしたり、別の人に判断を仰いだりと、チェーン化して次のアクションへとつながっていくのです。つまりメールは、改善することによって一番効果を上げる可能性のあるインターフェイスでもあるわけです。一番長い期間使われ続けてきたメールは、一番改善の余地が大きい可能性があるけれども、その改善効果を明確化、数値化しにくいという二面性があるために、悩まれる方が多いのだと考えられます」。

「情報共有基盤は、経営者の考えを伝える手法としても重要な位置にあります。具体的にはメルマガを発行したり、企業ポータルに訓示を掲載したりしますが、きちんと見ているかどうかをトレースするのが難しい。経営者の考えを理解して行動に活かせているか、判断の基軸になっているかが見えません。本来の経営課題という意味では、トップの意思決定を生きた形で伝えるべきツールであるにもかかわらず、実は伝えられていなかったり、行動に反映されていなかったりする。情報共有基盤が身近であり過ぎるために、どこに問題があって、どう改善に取り組むべきか見えにくいのです」

サポートが得られるだけのアップグレードで良いのか

 情報共有基盤の定番ツールとして、一時期、たいへん多くの企業に導入されたロータスノーツだが、最近は「運用負荷に耐えられない」とか、「サポート切れが迫っているがアップグレードに躊躇してしまう」といったユーザー企業が多いようだ。いまノーツを使っている企業は、どのような問題に直面しているのか。

「私は、R3の頃からノーツのユーザーでした。コンセプトが良く、非常にわかりやすかった。オールインワンであり、データベースと呼んでいるものは、実はNSFというファイル体になっていて扱いやすい。認証もファイル体になっており、IDファイルを持ち歩けばセキュリティ・クレデンシャルはすべてその中に入っている。こうした基本的な概念が現在も変わっていないのは、ロータスノーツの強みと言えるかもしれません。ベーシックなノウハウが変わっていないため、昔と同じように運用していくこともできます。」

  澤氏は「ただ、当時はテラバイト級のファイルサーバーはありませんでしたし、誰もがパソコンでドキュメントを作成するということもありませんでした。メールにしても、今日のように情報流通の主役になるまで、昇華していたわけではありませんでした。時代は変わって、ユーザーの情報リテラシーは大きく向上しました。それに対して、ノーツのシステム側が追いついていない可能性は大いにあると思います」と指摘する。

「もちろんバージョンアップしたり、サーバーを増強したりすることで対応されてきたわけですが、ベーシックな部分を変えていないがゆえに、そこが足枷になっているユーザーは増えてきているのではないか、と思うところはあります。これは製品の問題というよりも、運用において求められる要件が高まっていくスピードと、実際に運用管理者が対応するスピードがアンマッチの状態にあると言えるでしょう。」

「また、日本においてフォームは特徴的なところがありますね。日本人が求める『帳票』は芸術的です。ノーツのフォームにも日本人はそれを求めるところがあったと思います。もう少しカジュアルに情報共有するのがノーツを開発した人のコンセプトだったのですが、いつしか主役が帳票に置き換わってしまいました。あるいはバックエンドのシステムからデータを持ってきて、最新データを帳票にするといった基幹業務的な使い方もなされるようになりました。つまり、もともとノーツが得意とする領域ではないところに、ユーザーの方々が傾倒していったという側面もあったと思います。ものすごく美しい帳票であったり、ものすごいステップ数のロータススクリプトがたくさんつくられたりしました。その結果、バージョンアップするたびにフォームの再設計やスクリプトの動作確認をしなければなりません。その負荷の大きさを嘆くユーザーを散見するようになりました。」

 ノーツをバージョンアップすることについて、ユーザー企業がいまひとつ納得感が得られないのも、そうした理由からなのだろう。澤氏は「サポートが切れるという理由だけでアップグレードするのでしょうか。たいへんな作業が待っています。アップグレードすることでサポートを得られますが、その他に何か得られたでしょうか。以前と同じことができる、継承できるだけです。お金をかけ、たいへんな思いをしてアップグレードしても結局、経営層が感じている情報共有のペインポイントは解決しない。これでは稟議は通りません。前向きな投資とは言えないからです」と説明する。

クラウドあるいはハイブリッドという選択肢もある

 エンドユーザーに目を向けると、変わらないことを望む側面もある。使い慣れたユーザーインターフェイスを変えてほしくない。エンドユーザーの声が大きい企業は、それを理由にノーツをアップグレードする企業も少なくないようだ。既存のノーツユーザーには、今どんな選択肢があるのだろう。

「そのままアップグレードすれば、初期ライセンス料だけを見ると、他のライセンスを買うよりもコストは小さく見えます。グループウェアは、何かを生み出すためのツールではなく、とりあえずあった方がいいツールと位置づけられますので、なるべく安いコストを維持したいと考えれば、アップグレードが1つの選択肢となります。」

 あるいは、クラウドコンピューティングという選択肢もあると澤氏は語る。「グローバル化や大連合といった、企業間で連携していくような情報共有基盤が必要であれば、クラウドコンピューティングといった選択肢が出てきます。クラウドは、コンシューマーとしての企業ユーザーにマッチするのです。エンドユーザーは仕事を離れればコンシューマーであり、Webサイトで買い物をしたり、レストランを検索したりします。エンドユーザーがそうした操作に慣れてきたら、企業のシステムにも同様のことを求めます。どこでも情報共有することを求めるのであれば、クラウドコンピューティングに軸足が移ります。コストカット、持たざる経営を目指す企業にとっても、1つの選択肢となるでしょう」。

「大事なデータは手元に置いておきたいとか、いきなりクラウドに移すのは少し無理があると考える企業には、ハイブリッド型という選択肢もあります。もちろん、どこに力点を置くか、自社に何を置き、誰がそれを面倒みるのかが問題になってきます。そうなるとツールや機能に目を向けるのではなく、情報のあり方に目を向けることになります。」

セミナーでは、移行の進め方、発生しやすい問題点と解決法を紹介

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「多くのお客さまの移行プロジェクトに関わらせていただき、毎年何十社というお客さまと話す機会の中で出てきた声を、セミナーでは集約してお話したいと考えています」
 ノーツユーザー企業にはいくつかの選択肢があるが、マイクロソフトはどのような解決策を提案しているのだろうか。

 澤氏は次のように説明する。「マイクロソフトでは、ノーツを使用しているお客さまの声を集めて、ペインポイントになっているところを分類しており、そのペインポイントごとにto Be像(その人にとって、どうなると嬉しいのか)を定義していきます。to Be像を明らかにしたうえで、たとえば、妥当性と必要性という外部の視点、あるいは効率性や納得感といった内部の視点から、バージョンアップすることによって解決できるかどうか、移行するとどうなるのかを、お客さまとともに見ていくことから始めます」。

「マイクロソフトのソリューションとしては、1つはユーザーインターフェイスが優れていることによる生産性、2つめがIDの一元管理などのセキュリティ・コンプライアンスを含めた運用管理性、3つめはシステムの拡張やビジネスの変化に俊敏に対応できる将来性、この3点を挙げることができます。グループウェア的な機能を持っているサーバー製品としては、Exchange ServerSharePoint Serverの2製品に集約されますが、両製品ともにオンプレミスで使うことも、クラウドで運用することも可能です。ユーザーはどちらの環境を使っているかを意識させることなく、両方をシームレスに組み合わせて使うこともできます。これはマイクロソフトが提唱する『S+S』(ソフトウェア+サービス)という概念に基づいた選択肢であり、オンプレミスとクラウドの双方の利点を活かして、お客さまに最適なIT環境を提供するというものです。また、オンラインで利用できる開発プラットフォーム『Windows Azure』もクラウドで提供できるようになりました。」

 3月26日に開催される「ノーツ環境からの脱却 次世代型の情報共有基盤構築セミナー」では澤氏の講演が予定されている。どのような内容の話になるのだろうか。「私は、いろんなお客さまの移行プロジェクトに関わらせていただきました。いまも毎年、何十社というお客さまと話す機会があります。その中で出てきたお客さまの声や、移行した理由などについて、さまざまな声を集約した形でお話したいと考えています。また、実際に移行を進めていく上でのプロセス、どうやって移行プロジェクトを進めていくべきか、そしてその中で発生しやすい問題点と解決方法などについて、お話したいと考えておりますので、ぜひ会場に来ていただいて参考にしていただきたいと思います」。

 移行には苦労がつきものだ。転ばぬ先の杖。どうやれば苦労を軽減でき、どうプロセスを踏めばメリットを最大化できるか。そのヒントをつかむ良い機会となるだろう。

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