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- 2015/06/25 掲載
デンソー、グループIT基盤のオープン化で直面した4つの課題
作るモノが変わる、売れる市場も変わる
「デンソーではほとんどの自動車部品を作っているが、自動車業界では今、大きな2つの変化が起こっている。その1つが世界経済において、売れる市場が先進国から新興国に移っていることだ。これにより高級車と低価格車というニーズの二極化が顕著になってきている」
そしてもう1つ、地球環境に配慮するという観点から、今までガソリンやディーゼルのような内燃機関で動いていた車が、電気モータで動く時代になってきている。
「現在デンソーグループが製造している部品の3分の1がエンジン関連のものだ。ということは今後、電気モータのさらなる普及に合わせて、我々の事業計画も変えていかなければならないということで、非常に厳しい状況にある」
こうした業界の大きな2つの変化に伴って、デンソーグループ内部のマネジメン構造についても、2つの変化が求められるという。1つが流通構造の変化、もう1つが経営構造の変化だ。
「これまでは日本で設計してモノを作り、海外に送って現地で組み立てるといういわゆるピラミッド構造のモノと情報の流れだった。しかし今は、ネットワーク型に変わってきている。顧客の近くで設計し、その車が売れる消費地の近くで部品を生産する。最適地設計、最適地生産だ。これで世界中の拠点が相互に色んなものを供給し合えるようになる」
この流通構造の変化に併せて、経営構造も単独重視ではなく、連結重視へとシフトしていく必要がある。世界中の188社の経営情報をスムーズに吸い上げ、連結でマネジメントできなければならない。部分最適ではなく、全体最適が問われる時代になってきている。
「作るモノが変わる、売れる市場が変わる、流通も1対NからN対Nへ、経営も単独から連結重視へ。自動車業界はまさに今、大競争時代だ。この中で我々部品メーカーが生き残っていくためには、最新ITを駆使して、ビジネスのスピードと質を画期的に高めていかなければならない」
当初のオープン化プロジェクトが抱えた4つの問題
自動車業界における世界規模の大変化を背景に、デンソーITソリューションズでは2000年から、既存のITインフラをホストから次世代の新しいIT基盤へと刷新し、その上で業務アプリケーションを再構築しようという取り組みに着手した。今井氏は2000年問題への対応が終わった2001年に米国に出向し、2004年に戻ってきたというが、その間に本社ではオープン化のプロジェクトが始まっていたという。
「戻ってきた時に少し愕然とした。IT環境をよくしようと思って開始したプロジェクトだったが、逆に問題ばかりを抱えてしまっていたからだ。具体的にはサイロ化問題、芋づる更新、ベンダーロックイン、互換性問題の大きく4つだ」
まずサイロ化問題は、ある分野に得意なベンダに開発を依頼すると、そのベンダの“流儀”でシステムが作られることになる。つまり分野分野で最適なベンダを選んでいくと、システムがバラバラになってしまうという問題だ。
また芋づる更新については、オープンシステムは上位互換性が乏しく、陳腐化も速い。ハードウェアは数年に1回更新しなければならず、それに併せてOSのバージョンアップ、さらにはミドルウェア、アプリケーションと芋づる式に更新が発生し、初期導入時と同等レベルのコストがかかってしまうことになる。
さらにオープン化を掲げていても、ふたを開けてみれば結果的にベンダの戦略や流儀にロックインされてしまい、その仕組みから抜け出すことができなくなっていた。そのため標準化とは名ばかりで、ベンダ間や標準技術などとの互換性も確保できていなかった。
「結果、相対的にデンソーグループのITは外部リソースに依存し過ぎてしまっていた。これを何とか元に戻そうというのが、私が米国から帰って来てからの取り組み」
【次ページ】4つの課題に取り組むための3つの方針
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