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  • 2010/07/01 掲載

グリーンITとは何か、ITのグリーン化とITによるグリーン化

SCMやBEMS、スマートグリッド、スマートシティなどへ

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これからの地球環境に向けたIT技術、IT基盤に関する取り組み、「グリーンIT」の動向はますます活発なものとなり、あらゆるオフィス、データセンターに向けた多種多様なアプローチが展開されている。ITシステム、そして、ITがもたらす次世代省エネルギー対策/CO2排出量削減対策はこれからの重要なテーマである。今回はこのグリーンITの考え方について解説していこう。

池田冬彦

池田冬彦

AeroVision
富士総合研究所(現みずほ情報総研)のSEを経て、出版業界に転身。1993年からフリーランスライターとして独立しAeroVisionを設立。以来、IT系雑誌、単行本、Web系ニュースサイトの取材・執筆やテクニカル記事、IT技術解説記事の執筆、および、情報提供などを業務とする。主な著書に『これならできるVPNの本』(技術評論社、2007年7月)、『新米&シロウト管理者のためのネットワークQ&A』(ラトルズ、2006年5月)など多数。

省エネルギーによる地球環境問題への取り組み

 ITインフラの成長は目覚ましく、データの流通量も一昔前とは比べものにならないほど大きなものとなっている。オフィスにおけるPCやサーバ、IT関連機器の増加、そして、データセンターにおけるサーバの増加など、ITにかかる消費電力は上昇を続ける一方である。

 2008年の経済産業省の「グリーンITイニシアティブ」の資料によれば、PC、サーバ、ネットワーク機器、そしてテレビを合わせた消費電力量は、2025年には2006年の470億kWhから2400億kWhとなることが推計されている。このままITインフラが成長を続ければ、CO2削減はおろか、世界的な電力危機に見舞われる恐れさえある(図1)。

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図1 消費電力量の推計

 そもそも、地球環境問題の認知度が大きく向上したのは、1997年の「第3回 気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)」で議決した決議書「京都議定書」が大きな契機となっている。この京都議定書では、日本は1990年比で、2012年までに温室効果ガスを6%削減する目標が定められた。

 京都議定書に批准していない米国では、省エネルギーにかかる独自の取り組みが行われてきた。米国の環境保護局(EPA)が推進する「Energy Star」はその一つであり、家電製品から産業機械、PCにおける省電力化のプログラムである。1992年に発足したEnergy Starの認知度は高く、メーカーの自発的なEnergy Starの認証取得が進み、省エネルギー基準のデファクトスタンダードの1つとして位置付けられる。

 しかし、単に省エネルギー製品の認証規格だけでは、消費電力量の増加を食い止めることは難しいとされる。世界中のあらゆるオフィス、および、データセンターの消費電力量の具体的な削減に関する、より具体的な方策をさまざまな形で地球規模で実行する必要がある。グリーンITは、このような環境への負荷を軽減するための概念、およびIT製品やIT基盤を指す、比較的広範囲な概念だ。

 もちろん、その中には、PCやサーバ、IT関連機器の廃棄、リサイクルに関するアプローチやリユースなども含まれているが、今日のグリーンITでは、主に省エネルギーに関する取り組みが大きくフォーカスされているのが現状である。

省エネルギーに向けた動向

 オフィスにおけるITシステムの省エネルギー対策としてまず考えられることが、省電力設計のコンピュータ(クライアント、サーバ)への置き換えだ。具体的には、省電力型CPUを搭載したPCへのリプレースや、マシンを設置する環境の空調、冷却効率の向上、高い効率を持つ周辺機器、ハードウェアの導入、さらには、サーバ仮想化によるサーバ台数の削減など、さまざまなアプローチが考えられる。

 たとえば、インテルでは従来の「Pentium D 945プロセッサ」を搭載したデスクトップPCを液晶モニターで運用した場合の年間消費電力を922kWhと推計した場合、今日のPC向けメインストリームプロセッサである「Core 2 Duo T9400」を搭載するノートPCに置き換えただけで、年間消費電力が431kWhも削減できると推計している(図2)。

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図2 既存PCを省電力PCに置き換えた場合に削減可能なエネルギー消費量の推計値

 サーバの仮想化については、サーバの設置台数を削減するとともに、CPUの利用率に応じた処理も合理化される。たとえば、独立したサーバのCPU利用率や負荷はまちまちであり、大きな負荷がかかっていない割りには消費電力が大きい、という問題が発生する。個々のサーバを仮想化して統合すれば、全体のサーバの利用率が向上し、抜本的な消費電力の削減が可能になる。

 また、米国では2009年5月に、環境保護庁(EPA)とエネルギー省(DOE)は、Energy Starの対象製品にサーバ向けのプログラムを追加した。EPAによれば、Energy Starに準拠したサーバは標準的なサーバに比べ、エネルギー効率が30%優れるとのことだ。

 一方、GoogleとIntelが中心となって2007年に設立された「Climate Savers Computing Initiative(CSCI)」という業界団体では、パソコンやサーバなどのIT機器のエネルギー効率向上と,電力消費量の削減を推進し、全世界のIT機器のCO2排出量を2010年までに年間5400万トンまで削減することを目指している。この目標を達成するため、同団体ではEnergy Starのガイドラインに沿った具体的なベンチマークを設定している。

 さらに、日本では2007年に経済産業省が「グリーンITイニシアティブ」というプロジェクトが始動し、ITの技術革新や新技術の導入などを通して環境問題への貢献を目指す「グリーンIT推進協議会」をスタートさせた。2008年には「CSCI」と、後述する業界団体「The Green Grid」との連携を表明し、さまざまな活動を続けており、同協議会によれば、グリーンITの効果は日本、世界ともに40%程度と試算している(図3)。

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図3 グリーンITによるIT自体の省エネ効果の推計

【次ページ】データセンターの省エネルギー対策

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