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  • 2012/02/10 掲載

伊東寛氏インタビュー(後編):一般人が自ら戦争に参加する時代、企業として取るべき対策とは

今求められる企業のセキュリティ対策

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前編では、現在のサイバー戦争において、日本の企業が置かれている危機的状況について、ラック 執行役員 サイバーセキュリティ研究所所長で、陸上自衛隊システム防護隊 初代隊長の伊東寛氏に語ってもらった。後編では、歴史を振り返って今後の脅威について見通しを語っていただくとともに、それに対して今企業が取り組むべき対策について語ってもらった。

無責任な一般人が参加する情報戦争時代

photo
ラックホールディングス
執行役員
サイバーセキュリティ研究所所長
陸上自衛隊システム防護隊 初代隊長
伊東寛氏
──法を整備しながら監督していかなければならないぐらい、サイバー犯罪のレベルは悪化していることなんですね。

伊東 おっしゃるとおりです。日本はサイバー戦争に参戦させられているのに誰も気がついていなくて、このままいけば戦争に負けます。というか、実際、負けつつあるんです。

 私は、戦争には3種類あると思っています。アルビン・トフラーが「第三の波」の中で力には3つあるといっています。最もプリミティブな力が「暴力」、次の力がお金、つまり「経済」で、3つめの力が何かというと、知恵、つまり「情報」だということなんですね。この考えに共感していて、私なりに咀嚼したのが戦争3形態論です。

 原始、戦争というのは軍事力による戦いを意味していましたが、それが冷戦という名の経済の戦いに移りました。そしてそれは現在、事実上終わったと私は思っています。そして次の戦いが情報の戦争なのです。その戦い方、主たる武器がサイバーで、目には見えないものの、非常に激しい戦闘が行われているということなのです。

──お話を伺っていると、ソニーへの標的型攻撃なども、目に見えている犯人は「ハクティビスト」と呼ばれるハッカー集団と言われていますが、結果として日本を代表する企業の利益やブランドが損なわれたという点では、そういう情報戦争の一環で行われた側面があった可能性も否定できないということでしょうか。

伊東 そう思います。さらに加えるなら、戦争への「参加者」も変化し始めています。昔は、戦争で武器を取るのは職業軍人でした。太平洋戦争では国家総力戦ということで国民全員が参加させられましたが、それは戦いに巻き込まれるという形でした。歴史を振り返ると、実は戦争への参加者はどんどん増えているんですね。

 そして21世紀の今はどうなっているかというと、巻き込まれるのではなくて、一般人が自分の意志で戦争に介入するようになっています。それはサイバーだから可能なんですが、ハッカーグループによるNATOやグルジア政府への攻撃は、どこかの国の軍が依頼したわけではなく、“国の戦いに協力しよう”と一般人が一般人を鼓舞して、無責任な攻撃を勝手にしかけているんです。私はその参加者を「無責任な戦争参加者」と呼んでいます。これはとても危ないことです。

──アラブの春(中東アフリカ諸国の民主化運動)や英国の若者の暴動、米ウォルストリートのデモなどでは、スマートフォンからメールやツイッター、ソーシャルメディアが使われて情報共有にひと役買うなど、PCよりもさらに手軽に参加できるようになっていますね。

伊東 おっしゃるとおりで、ネットの炎上が現実世界での炎上につながる、今はそういう状態にあるということなんです。今でも風評という意味では炎上するケースは多々ありますが、今後、技術が進めば化学工場のシステムに侵入して爆破するような事態になるかもしれません。もっと身近な例でいえば、スマートフォンを使ったウイルスで、盗聴やなりすましといった従来のIT機器になかった被害が、今後さらに拡大していく可能性があります。

【次ページ】企業として取るべき2つの対策

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